2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

小売こぼれ話(14)同床異夢(前)

リアル売場の感動とは

スーパーマーケット イメージ ウォルマートが日本市場進出の足がかりとして買収した西友の株式85%を昨年11月に売却、事実上撤退した。撤退を機に新たに楽天が株主に加わり、ザ・モール春日(福岡県春日市)がアクロスモール春日として改装オープンした。

 テナント誘致のデベロッパーは大和ハウスの関連会社、大和ハウスリアルティマネジメント。リアルスーパーを加えた専門店テナントの複合モールだ。ファンド、オンラインリテーラー、デベロッパー。目指すところは三者三様だろうが、客の目に映る店の風景は1つである。そこで問われるのは「楽しいか否か」だ。

 リアルの魅力は「わざわざでも行きたい」売り場である。そんな売り場なら遠くからでもお客はやって来るし、楽しいから自然と財布のひもも緩む。海外旅行で日ごろと違う感覚になるのと同じだ。たとえば、国内で1,500円のハンバーグを食べる…と、考えるといささか躊躇するが、海外では、その価格への抵抗は薄れる。リアルの売り場への感動も同じだ。その深浅で客の思いは大きく変わる。ショッピングセンターの存在感の大小はそこで決まる。

 まず、競合施設の数だが、周辺には大小、新旧を含めて少なくない同型競合がある。そのほかにも大型の専門店や複合店も少なくない。そんな環境では立地の優位性が消える。

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 楽天が望むのはオンラインへの対応だろう。そこに「売り場の感動」は要らない。ダークストア(ネット販売専用の物流拠点)でも商品ストックの倉庫でもよい。ちなみにアクロスモール春日には楽天・西友・サニーネットスーパーのサインの奥に配送のための仕分け所がある。飲料のケースや商品棚で仕切った向こうに見える風景は一言でいえば倉庫だ。ベストを着た従業員が、顧客からの注文品を仕分けしている。そこにはもちろんビジュアルの楽しさなどない。オンラインのお客にそれは必要ないからだ。注文品を仕分けしているピッカーの作業ベストの背中部分に「HELP TO HAPPY」と書かれているのが、そこはかとない寂しさを感じさせる。

 食品の売り場は広い。食品の場合、その売り場面積には大きな意味がある。とくに生鮮部門では客数に沿った適正面積でないと、機会損失や排気損失が発生する。

 サニーの売り場は客数に比べると過剰だ。過剰な面積は最低限度の商品ボリュームを維持できない。冷蔵ケースに生まれる空きスペースは客の感動や比較、選択の楽しみを消し去り、さらに買い気のシュリンク(縮小)へとつながる。

 小売の業績のポイントは立地と価格と売り場だ。このいずれが欠けてもお客の満足は得られない。そのなかで企業が自らの意思で直接コントロールできないのが立地だ。あとの2つは企業戦略としてコントロールできる。

 小売業の場合、原価以外の販売管理費は、ほとんどが固定費だ。人件費にしても必要以上の削減は顧客、商品サービスにそのまま影響する。だから、単純な経費統制は業績の好転には結びつかない。

 サニー春日店の場合、品質と価格はごく普通である。悪くはないが、「わざわざ買いに来る」客を引き付けるほどの魅力はない。大きなショッピングセンターの場合、駐車場から買い物を終えて車に戻るまで結構な時間がかかる。高頻度でさらに家計支出の割合が高い食品で取り立てて安くもなく、商品力も普通の売り場は、「週末やほかの買い物のついでに立ち寄る」程度の店になる。

(つづく)

【神戸 彲】

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(14)-(後)

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