2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

本当は食糧不足にならない日本 これから100年、持続可能な農業(中)

(株)A-Netファーム十勝

 人々が暮らすうえでも、食糧の確保という「食の安全保障」においても、大きな役割を担う日本の農業。これからも農業を続けていくには、環境に負担をかけず持続可能な取り組みが欠かせない。約100年間の歴史があり、北海道で農産物の栽培と流通を手がける「森田農場」を運営する(株)A-Netファーム十勝専務取締役・森田里絵氏に、これから100年の展望を聞いた。

これから100年~持続可能な農業

 森田農場では、これから100年、農業を続けることを目指して、新たな試みに乗り出した。まず土づくりでは、十勝平野は腐植が多く肥沃な黒土であるが、この肥沃な土を今後も守り続けることが必要だ。そのため、土壌診断で畑に足りない栄養を分析し、その結果を基に栄養を補う栽培を始めた。

小豆
小豆

    さらに、有機肥料で栽培してきた畑の一部(約30a)で、無農薬の小豆を試験栽培している。小豆を植えた後の畑に土壌改良に役立つ草の肥料「緑肥」を3年間植えて、4年後に再び小豆を植える。無農薬栽培を始めた1、2年目は通常の栽培に比べて収穫量が約25%まで減ってしまったが、3年目には、緑肥を2年間作付けした土地に植えることができたため収穫量は大幅に増えた。通常の4倍の価格で小豆を販売できれば、無農薬栽培を続けることができるが、そのためには無農薬の農産物は価格が高くなることを理解してもらう必要がある。日本はデフレで高価格帯の無農薬・有機農産物の購入層が増えにくいため、オーガニック食品の需要が高い欧州に販路を広げているという。

 A-Netファーム十勝専務取締役・森田里絵氏は「日本は無農薬の野菜を買いたいが虫を見るのも苦手という人が多く、オーガニックが広がりにくい状況です。一方、欧州はカトリックで虫など生き物を農薬で殺してはいけないという考え方があるため、虫食いがあっても無農薬の野菜を買いたいという需要があり、オーガニックが普及しやすい土壌があると感じます」と話す。

小豆は種
小豆は種

 農産物の市場価格は農家がコントロールできないことや、生産側と流通側の距離が遠く、栽培方法にこだわって品質を高めても農産物の価格に反映されにくいことが、日本の農業の課題となってきた。一方、農家が価格を設定できる産直に出荷すると、収益化しやすい。そのため森田農場では、農協(JA)への出荷に加えて、産地直売所に出荷し、小豆を煮た「ホクホク小豆」や黒豆茶などの加工品も新たに販売している。「農家が経費を含めて農産物の価格を決められるようになれば、収益化できる農家が増えるため、農業をしやすくなるのでは」(里絵氏)。

 加えて、ネット通販を手がける農家がまだ数少なかった04年に、農産品や加工品のインターネット直販を開始。小豆は『古事記』などの古い書物に登場するほど日本の文化に根差した食べ物であり、小豆の良さを世界に伝えたいという思いから、小豆に特化した直販サイト「小豆らいふ」を立ち上げた。

発酵あずき
発酵あずき

    小豆は、全国の収穫量のうち8割以上が北海道産で、なかでも十勝は産地として有名だ。十勝は1日の寒暖差が大きいため糖分が高くなりやすく、涼しい気候のため、渋みをもつタンニンが少ない小豆ができる。小豆の食べ方やおいしさ、健康によい点などを発信し、顧客とのコミュニケーションを取るよう工夫している。今では「購入者は、リピーターが6~7割」(里絵氏)という。

 なかでも、クラウドファウンディングで支援を得て開発した、砂糖を使わず麹を加えて発酵させた小豆ジャム「発酵あずき」は、どの商品にもプロがいる食品業界で、他社ができないことをやることで成功した。

(つづく)

【石井 ゆかり】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:森田 哲也
所在地:北海道上川郡清水町羽帯南2線106
設 立:2011年3月
資本金:100万円
売上高:(21/3)約9,000万円
TEL:0156-63-2789
URL:https://www.azukilife.com/

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