2024年05月27日( 月 )

タイ アフターコロナに向けた投資を期待(後)

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在福岡タイ王国総領事
ソールット・スックターウォン 氏

 福岡県はタイ・バンコクに事務所を構え、長期的で多分野にわたる協力関係を有する。ASEAN経済のハブを自任するタイには早くから日本メーカーが進出しており、近年は市場としての魅力も拡大、先端産業への投資誘致が活発に行われるなど、経済協力の幅が広がっている。昨年10月に、九州・中国地方を管轄する在福岡総領事館の2代目総領事として着任したソールット・スックターウォン氏に、コロナ禍におけるタイの経済・投資環境などについて話を聞いた。

バイオ・循環・グリーンを重視

在福岡タイ王国総領事 ソールット・スックターウォン 氏
在福岡タイ王国総領事
ソールット・スックターウォン 氏

 ──タイの投資政策に関して、近年、先端産業の育成に注力しています。

 ソールット・スックターウォン氏(以下、ソールット) タイは15年に、基幹となる経済計画「タイランド4.0」を策定し、これに基づいて、新しい先端技術の開発導入に注力しています。たとえばスタートアップ、先端技術、技術産業の分野においても日本からの投資に大きく期待しています。

 注力している分野はいろいろありますが、バイオ・循環・グリーンを重視しており、その頭文字をとって「BCG経済モデル」と銘打ち、持続可能な成長戦略として推し進めています。

 これは環境問題解決と経済発展の両立を図る政策であり、日本を含む各国も類似の政策を導入していると思います。国連のSDGsや日本のグリーン成長戦略の方向性と合致したものだと思います。既存の政策と併用しながら、新産業への投資を今後積極的に受け入れていきたいと思っています。

 ただ、急な変化は好ましくなく、既存産業の案件も引き続き受け入れながら、新しい分野の案件の受け入れに力を入れるという同時並行のかたちで進めています。

 タイが海外から受け入れている直接投資について、日本が一昨年と同様に昨年も最大の投資国です。とくに自動車部品、電子機器関連の産業面での投資が引き続き活発でした。昨年、タイは輸出が好調に伸び、2021年は前年比17.1%増の2,711億ドル(約31兆円)となり、タイ国内の日系企業の輸出実績も非常に好調でした。

 加えて、経済特区の東部経済回廊(EEC)のPRも行っていきたいと考えています。周辺各国も含め、タイのASEAN各国との連携を実現させる域内のハブ、ブースターとしてタイに投資をしてもらい、ASEAN全体を盛り上げていきたいと思っています。EECは東部の海に近いエリアに設立しています。空港(ウタパオ空港)の拡張、EECと空港(バンコク・スワンナプーム、ドンムアンの両空港およびウタパオ空港)間の鉄道建設など交通インフラ整備を進めています。

 九州の民間企業は中小企業を含め、非常に先進的で独自技術の研究開発を行い、ポテンシャルをもっていると思います。タイの現地企業と貿易ビジネス、事業提携を行うための仲介をしたいと思っています。

 投資面でも、製造拠点をタイに設立してもらうことを期待しています。私共総領事館はタイ投資委員会(BOI)東京事務所(工業省管轄)、タイ国政府通商代表事務所広島(商務省管轄)とも非常に緊密に連携をとっており、いろいろなサポートができます。コロナで現地に行けないなか、現地の情報の提供は非常に重要であり、EECなどの情報を皆さんと共有できればと思います。

 高度人材育成においても、日本の協力を非常に期待しています。日本の高専の制度がタイで導入されており、タイの有名大学との連携協定が行われています。技術を身につけたタイ人人材が工場など現場に就職し、人材として活躍することを期待しています。

 農業関連もタイが重視している分野の1つです。日本には非常に先進的な農業関連の技術があり、農業、食品加工分野に関して学ぶ点は多く、大いに期待しています。

 日本からタイへの投資は経済連携の面でも、人材育成の面でも非常に重要で、成功しているとみています。日本はタイの最大の直接投資国という事実に裏打ちされ、成功していると感じています。非常に厳しいなかでも日系企業の業績は好調であり、報道によるとタイ人従業員の賞与も非常に多く支給されたということです。ぜひ、この方向性を維持してほしいと思います。

 ──タイの消費市場についてうかがいます。先日、九経連などとヘルスケア産業に関するセミナーを行いました。

 ソールット タイも日本同様に高齢者が増加しています。介護が必要な人々が今後増加するなかで、健康寿命を引き上げていくことが非常に重要になっていくと思います。先日セミナーを行いました。投資という意味で、ターゲットとなる消費者は非常に多く、今後も大きく伸びていくと思います。

服部誠太郎福岡県知事(左)と
服部誠太郎福岡県知事(右)と

    この分野では、タイ人のみならず、欧米諸国の人々(米国・英国・スイス・ドイツなど)や日本人など、定年後にタイへの移住を希望する外国人も顧客に含まれ、タイも誘致に力を入れており、非常に大きな市場が形成されていて、今後拡大していくでしょう。住居、介護施設、サービス付き高齢者施設などで大きな市場があると思います。市場の拡大にともない、食事などの関連商品・サービスでは消費者ニーズの高まりが予想されることからも、この分野の先進モデルである日本からの事業進出や連携が期待されています。

 高齢者関連産業に限らず、タイでは全般的に消費市場が育っており、国内外の多くの商品が扱われています。すべての産業において投資を歓迎していますが、とくにBCG経済の実現に向けて、環境に関連した持続可能な産業分野に強い関心をもっています。

ウィズコロナ政策を堅持

 ──コロナ禍で海外ではロックダウンが実施され、サプライチェーンが寸断されるケースが出ていますが、タイで今後同様の事態が生じる可能性はあるのでしょうか。

 ソールット タイは周辺諸国と相互に支え合っており、各国と国境を接しています。そのため、ゼロコロナを目指してロックダウンを実施するのは難しいです。また、経済、防疫面のみならず、政策全般に影響をおよぼしかねません。こう考えると、タイはウィズコロナ政策しか取り得ず、ロックダウンの実施は100%ないと考えています。

 EECのサプライチェーンの維持と新たな受け入れという方針について、1月に駐日大使、大阪総領事および本国外務省の国際経済局長とミーティングを行い、本国は準備が整っていることを確認しました。ウィズコロナのなかでマイナスの影響を最小限にし、その条件の下で最大の効益を求めていきます。観光業と各産業を並行して振興していくのが、タイの生きる道だと思っています。

 ──タイ政府としては、ウィズコロナ政策ということですね。

 ソールット はい。そのなかでタイ政府は影響を最小限にするため、懸命に努力しています。オミクロン株の影響もあり、1日に感染者数が約2万4,000人と増えているものの、ほかの国に比べて相対的に少ないと思っています。ワクチン接種率は1月時点で80%に達しており、コロナからの復興に関して準備ができていると思っています。

 経済復興策として、事業者に対する各種支援策を行っており、観光面の経済刺激策として、外国人を含め国内外からの観光、経済活動を目的とした訪問を歓迎しています。

 入国規制について、「test&go(※)」という緩和措置を2月から再開しました。これは最初にPCR検査のために2日間ホテルを予約してもらうだけで、隔離期間を事実上設けない制度です。ワクチンを2回接種済みで、かつ航空会社が規定する各種条件を満たしているケースに限られます。この措置は昨年11月に始まり、12月にオミクロン株の感染拡大を受けて停止していましたが、約1カ月の間に20万人以上の外国人から入国申請を受けました(※:タイ入国の水際措置に関する最新情報は、在福岡タイ王国総領事館のウェブサイトで確認)。

 ほかにも「サンドボックス制度」という入国緩和策を並行して実施しています。これはプーケット、パンガー、クラビ、サムイといった観光地として知名度の高い地域において、隔離期間はあるものの、外での活動が認められる一種の緩和措置です。

 オミクロン株による感染はあるものの、タイとしてはコントロール可能と考えています。観光目的、商用目的の外国人の方にぜひお越しいただきたいと思っています。今後も感染予防対策や検査をしっかりと行い、続けていきたいと思っています。

 アフターコロナの時代には、タイへの投資で非常に大きなビジネスチャンスがあるでしょう。総領事館および在日本のタイ政府関連機関は「Team Thailand」として、タイと日本の地域間の総合的な連携・交流の発展に尽力し、とくに経済面で共に成長していけるよう協力することを望んでいます。

 新産業についていえば、コロナからの復活・復興に関わっているという意味で、あらゆるビジネスに今後チャンスがあると考えています。タイは政府の支援策を含めたビジネス環境、スワンナプーム空港などの各種インフラが非常に整っています。

 タイは観光のみならず、ワーケーションという視点からも魅力があり、住みやすい場所であると好評であり、中部の世界遺産都市アユタヤなど複数の都市が評価されています。コロナが落ち着いたら、ぜひ実際にタイにきて経済活動を行ってもらいたいと思います。心から歓迎します。

アユタヤの仏像
アユタヤの仏像

(了)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
ソールット・スックターウォン

1964年生まれ。タイ・チュラロンコン大学(学士)、小樽商科大学(大学院修士課程)および北海道大学(大学院博士課程)に留学。96年タイ外務省入省。在ベトナム、在チェコ共和国の大使館、在台北タイ貿易経済事務所勤務、在広州総領事館副総領事、タイ外務省広報局文化広報課長、同次官事務局財務会計管理室長などを経て、2021年10月、在福岡総領事に着任。

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