2024年04月24日( 水 )

「除菌」だけが健康対策?~腸内環境を整えて健康に(前)

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(株)シー・エム・シー
代表取締役社長 三浦 隆輔 氏

 清潔さが求められる現代において、「菌」は何かと悪者にされがちだ。しかし、私たちの体には数多くの菌やウイルスなどの微生物が暮らしており、これらのバランスが保たれることにより健康でいられる。人間の腸のなかに暮らす微生物の多様性を保つことが健康の秘訣だと語る(株)シー・エム・シー代表取締役社長・三浦隆輔氏に、乳酸菌の働きがいかに大切かを聞いた。

菌やウイルスは「敵」ではない

 人の体には本来、細菌やウイルスなどの数多くの微生物が住み着いており、腸内だけでもおよそ100兆個の腸内細菌が生息していると言われている。人はこれらの腸内細菌に助けられて食べものを消化し、病原菌などの外敵から体を守り、健康を保っているのだ。

 (株)シー・エム・シー代表取締役社長・三浦隆輔氏は、「人は約1,000種におよぶ細菌からなる腸内フローラ()をもっており、腸内フローラの適切なバランスを保つことが健康につながります」と話す。たとえば、りんごは根から養分を吸収している。そのため、土のなかの微生物の環境が整っていると養分を吸収しやすくなり、おいしいりんごができる。人は腸から養分を吸収するため、腸内環境を良くすることが体調を整える秘訣だという。

乳酸菌生産物質の健康効果

(株)シー・エム・シー代表取締役社長 三浦隆輔氏
(株)シー・エム・シー
代表取締役社長 三浦 隆輔 氏

    発酵食品が健康に良いと言われて久しいが、2500年前の仏教経典「大般涅槃経」の一節に、「醍醐」と呼ばれ「最上なり」とされる成分が、乳製品からつくり出されるものであることを示す記述がある。浄土真宗本願寺派第22代門主で親鸞直系の大谷光端師は1900年ごろ、シルクロードの仏教遺跡の発掘を手がけるなかで、「大般涅槃経」のこの一節に注目した。「乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す…」という記述を、段階的な菌の発酵作用を示すものではないかと考えたのである。

 そこで大谷光瑞師は、微生物学者・正垣一義氏とともに、中国・大連に「大谷光瑞農芸化学研究所」を設立。醍醐の科学的な追求に着手した。正垣一義氏の父・角太郎氏は、いち早く乳酸菌の健康効果に着目し、日本初の乳酸菌製剤を開発した人物である。

 そうして39年、正垣一義氏は、豆乳を培地に複数種の乳酸菌と酵母を同時に発酵させる「共棲培養法」を編み出し、「乳酸菌生産物質」を誕生させた。「醍醐」を近代科学によって蘇らせることに成功したのである。

 正垣氏は、「有効菌」の働きは毎日の暮らしに欠かせないと考えてきた。有効菌は食物の消化や栄養素の分解を助けるほか、有害菌の増殖を防ぐ働きもある。また、健康に良いと世界から注目が集まる和食には、麹菌や酵母を使った味噌や醤油などの発酵食品が豊富だ。ヒトの腸内には多種多様な微生物が共生し、時には互いに助け合うことでバランスを保っている。正垣氏が発明した、12種類の乳酸菌と4種類の酵母を用いて発酵させる「共棲培養法」は、ヒトの腸内環境を模したものともいえるのである。

 その後、蕎麦屋や居酒屋を経営しながら、正垣氏の研究を支援していた佐藤福一氏が乳酸菌生産物質の製造方法を受け継ぐ。佐藤氏は乳酸菌生産物質を商品化して人の健康に役立てたいと考え、多くのビジネスを手がけてきた(株)シー・エム・シー創業者・三浦一志氏に相談した。それまでの乳酸菌生産物質は液体であったため、三浦氏は保存が効いて流通させやすいように粉末に加工。理由は成分の安定性が保たれ、持ち運びしやすいためだ。こうした試行錯誤を経て、乳酸菌生産物質の商品化が実現した。

 また、乳酸菌の発酵食品は、ヨーグルトなど牛乳でつくられたものが多いが、乳酸菌生産物質は、日本人が豆腐などで日常的に食生活に取り入れてきた豆乳を培地につくられている。現代では、日本人の5割が乳糖不耐症の体質と言われており、今から考えてみると優れた視点だったと言えるのではないだろうか。

 乳酸菌生産物質には、発酵によってできた乳酸、短鎖脂肪酸、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの乳酸菌代謝成分のほか、活性型イソフラボンやペプチドなどの大豆由来成分、乳酸菌や酵母の死骸である菌体成分が含まれている。同社の調査結果により、乳酸菌生産物質を摂ると、腸内環境を整えるうえで重要な働きをする短鎖脂肪酸が増えることがわかっている。「短鎖脂肪酸」とは、腸内細菌によりつくり出される「酪酸」「酢酸」「プロピオン酸」などと呼ばれる成分のことだ。三浦氏は「人が健康を維持するために欠かせない腸の働きに注目して、乳酸菌生産物質を役立ててきました」と話す。

毎日の健康の秘訣

 三浦氏は「健康を保つためには、食事、運動、睡眠を整えることが生活の基本です」と話す。腸内細菌のバランスによって、どのような食べ物が体に合うかが決まるため、自分の腸内細菌に合わない食べものを食べ続けると腸に負担がかかり、体調を崩す原因になりやすいという。三浦氏は毎日、自然に沿った生活をおくることができるよう、農薬や食品添加物を摂るのを控えて自然食を実践している。(株)シー・エム・シーは会員制であるが、食事や運動、睡眠に関する相談に乗ることも多く、1人ひとりのお客さまとの距離が近いという。

 「目に見える悩みが同じでも、体調不良の原因はさまざまであることが多いです。そのため、目に見える悩みだけを抑え込んでも、根本的な原因が解決されなければ、真の意味で健康を取り戻すことはできません。自分と向き合って己を知り、気付きを得て、体質に合う食べものを摂ることが大切です」(三浦氏)。

(つづく)

【石井 ゆかり】

※:人間の腸内に住む腸内細菌の集まり。  ^


<COMPANY INFORMATION>
代 表:三浦 隆輔
所在地:東京都新宿区西新宿6-5-1
    新宿アイランドタワー20F
設 立:1992年5月
資本金:5,000万円

(後)

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