2024年04月29日( 月 )

公共工事の設計労務単価、10年連続上昇

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 国土交通省(以下、国交省)は、2021年度に実施した公共事業労務費調査の結果に基づき、公共工事設計労務単価(以下、労務単価)を改定した。

 労務単価とは、労働者が受け取るべき賃金相当額(日額換算値)のことで、交通誘導警備員から運転手、特殊作業員に至るまで、ほとんどすべての職種の労務単価が前年度比で大幅に上昇した。改定後の全国全職種の平均値は2万1,084円で、13年以降10年連続の上昇となった。改定された労務単価は、22年3月以降に実施される公共工事費の積算に用いられている。なお、福岡県では3月7日以前の労務単価(旧・労務単価)から、全職種平均値で1.9%上昇した単価が採用されている。

労務単価

 労務単価は、国や地方自治体が公共工事の予定価格を積算する際に用いられ、(1)「基本給与相当額」、(2)「基準内手当(当該職種の通常の作業および作業内容の労働に対する手当)」、(3)「臨時の給与(賞与など)」、(4)「実物給与(食事の支給など)」の4つで構成される。

 労務単価に含まれない賃金や手当、経費は(1)「時間外、休日および深夜の労働についての割増賃金」、(2)「各種の通常の作業条件または作業内容を超えた労働に対する手当」、(3)「現場管理費(事業主負担分の法定福利費)、研修訓練などに要する費用など)および一般管理費などの諸経費」となっている。労務単価はあくまで建設労働者などの賃金相当額であり、労働者の雇用にともなう賃金以外の必要経費分(法定福利費、労務管理費、安全管理費など)は含まれていない点に留意する必要がある。

 しかし、労務単価について、賃金以外の雇用にともなう必要経費分を含んだ金額と誤解している企業も少なくない。そのため、元請下請間で、労務単価から必要経費分の値引きを強いられ、技能労働者に支払われる金額が不当に低く抑えられるという事態が頻発しており、建設業界における喫急の課題となっている。国交省では対策として、労務単価と雇用にともなう必要経費を含む金額とを並列表示することで、労務単価には必要経費が含まれていないことを明確化するなどの取り組みを行っている。

 前述の通り、労務単価は22年3月から、全国全職種の平均値で前年度比2.5%が引き上げられ、2万1,084円となった。しかし、これまでの推移を見ると、1997年度の1万9,121円から徐々に低下していき、2000年度に入ると建設投資の減少にともなう労働需給の低迷により、1万6,263円にまで大きく下落している。その後も労務単価は下降線をたどっており、建設業界関係者にとっては厳しい時代が長く続いていたことがうかがえる。

 福岡においては、規制緩和などによる都市の再開発が活発化しているが、全国的に見れば、建設業界の再興はまだ道半ばだ。依然として適正価格での契約がうまくできていない市町村もあることから、労務単価の改定に関しては、今後も現場の声を可能な限り汲み取っていくことが求められる。

【内山 義之】

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