2024年04月27日( 土 )

【動画レポート】唐人町商店街振興組合 破産

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 「唐人町商店街振興組合」は2021年12月21日に破産手続開始決定を受け、22年3月2日に同手続が終結している。株式会社や有限会社、合同会社の破産が多いなかでの商店街振興組合の破産。今回の破産の経緯を調査した。

 同組合は唐人町商店街内で行われるイベントの開催や商店街全体の意思統一のために1990年に設立された。ピーク時には110店舗が加盟していたものの、店舗の減少にともない、加盟数も年々減少。破産申請時の加盟店数は40店舗(うち、アーケード内の加盟店数は20店舗程度)と、収入の柱である加盟料が減少していった。

 近年はコロナ禍による加盟店閉店の加速化やイベントの中止・開催自粛が相次いだことから、加盟料およびイベント収入の減少から先行きが見えなくなったこと。また、2010年にポイントカード事業を導入したものの、加盟店舗が集まらず、システム利用料を借入金返済に充てる計画が頓挫したことなどが破綻の要因となった。

唐人町商店街    同商店街は福岡市営地下鉄「唐人町駅」および明治通りから徒歩1分以内の場所に位置している。天神や博多といった福岡の中心地へのアクセスに優れているだけでなく、周辺には大濠公園のほか、「福岡PayPayドーム」や「MARK IS ももち」などの大型施設、小学校や専門学校などの教育機関もあることから、幅広い世代が集まる人気エリアとなっている。

 しかし、その人気ゆえに地価が年々上昇しており、同商店街の店舗経営者のなかには店舗兼住居としていたところを店舗のみにし、遠方から通うかたちに変えたという人もいる。高い地価が固定費としてかかるため、中小企業の入居はハードルが高くなってきている。商店街の周囲で進む再開発の影響が商店街のなかにもおよんでおり、一部の店舗はマンションへと変わった。

 商店街振興組合の目的は「商店街の活性化」であり、利潤を追求する企業活動とは異なる。潤沢な資産を持つことよりも、「より多くの店舗が加盟し、横のつながりを強めていくこと」が求められる。

 「破産のかたちを取ることに関して、加盟会員からの反対はありませんでした。旧態依然のかたちとなっていた現在の組合を一度終わらせ、新たな団体をつくり直した方がいいと考え、この判断を下しました。今は新団体設立とコロナからの復興に向けて、商店街全体が前向きな方向に進んでいる」と、当時代表理事であった大川内斉氏は話す。

 平日の昼の同商店街では買い物客が行き交っていた。同商店街にある多くの店舗は観光客ではなく、地元住民によって支えられているという。

 人が集まる土地でなければ商店街は衰退する。一方、競争激化にともなう地価上昇は小規模店舗の経営者にとって痛手となり、退去せざるをえない状況になる。今回の破産はコロナ禍の影響のみならず、商店街が抱えるジレンマを浮き彫りにしたかたちとなった。

【杉町 彩紗】

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