2024年03月28日( 木 )

福岡IR誘致(案)の可能性について(後)

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(株)アクロテリオン
代表取締役 下川 弘

4.奈多ヘリポートの活用について

 次に、航空系アクセスであるが、福岡空港からのアクセスは、軌道系、道路系を使うのが一般的かもしれないが、この海の中道には、2020年に福岡空港混雑にともない機能移転された「奈多ヘリポート」がある。海外の富裕層が利活用するには、このヘリポートは大変有効なものとなるであろう。たとえば、混雑の少ない北九州空港や佐賀空港までプライベートジェットできて、そこからヘリに乗り換え、奈多ヘリポートに到着するというルートも考えられるからだ。ただし、ヘリポートの利用にあたっては、ジェット旅客機の福岡空港への離着陸時の運航ルートの真上でもあるため、たとえ富裕層がお金を積んだとしても、自由にヘリの離発着をすることはできないであろう。

福岡空港の離発着飛行ルート(国土交通省 HPより)

5.近隣航空施設、航空法、パイロットとの関連について

 福岡IR誘致計画地のすぐ東側には国土交通省の福岡航空管制部があり、福岡ボルタック(VOR/TAC)が設置してある。このボルタックこそ現在の福岡空港への進入の際に目標地点とされるもので、約2,000 ft(約610m)上空を多い時で、約1分半間隔での着陸態勢の飛行機が上空を通過するのである。

 福岡IR誘致の計画案では、超高層の建物が数棟建てられているイメージパース図がある。多少の高さのある建物を建設することは可能であるとは思うが、福岡空港の離着陸の飛行ルート上にあたるため、パイロットの心理からすると、こうした超高層ビル(いわゆる障害物)があるのは、あまり望ましくないようである。

6.まとめ

 福岡IR誘致については、筆者は賛成の立場であることを前提としているが、残年ながら今回の米国Bally’s Corporation社の計画案と記者発表については、しっくりこないところがある。もし、Bally’s Corporation社が「IRをつくりたい」ということではなく、「Bally’sリゾートを福岡に進出させたい」として直接福岡市と企業誘致の話をするのであれば、きっと福岡市や(一社)九州観光推進機構も協力的なのではないだろうか。そしてリゾート施設を建設後に、施設全体の3%未満の部分でカジノ施設を追加するIR申請を、福岡市を通して国に行うという方がタイミング的にも理にかなっているような気がする。

 それから、計画地内での施設設計だけでなく、福岡の都市計画に精通した設計者がプロジェクトメンバーとして計画し、国土交通省九州地方整備局や福岡県、福岡市の担当者とも十分な協議を進め周辺の交通計画を一緒に考えるならば、もっと説得力のある計画になるような気がする。

 筆者は、昨年「2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想」を提言している。そのなかで、現空港の跡地利用としてディズニーフォレストを提案しているが、このBally’s Corporation社のリゾート施設が来ることも1つのアイデアになるかもしれない。

(了)


<プロフィール>
下川 弘
(しもかわ ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部・営業部長などを経て、20年9月からは九州支店建築営業部・営業部長を務め、21年11月末に退職。現在は(株)アクロテリオン・代表取締役を務める。ほかにC&C21研究会・理事やハートフルリンクアジア協同組合代表理事など。

(前)

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