2024年05月20日( 月 )

Z世代の就活事情 その多様性と“闇”(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

コロナ禍が一定の収束傾向を見せるなかで、企業による採用活動が活発化している。来年(2023年)卒業する大学生の就職内定率が7割を超えたという(6月1日時点リクルート調べ)。4月にデータ・マックスに入社した「Z世代」※の男性社員が、リアルな最新の就活事情をレポートする。
※1990年代中盤から2010年ごろまでに生まれた世代。幼少期からデジタル機器に接した初めての世代とされる。

オファー型就活アプリの登場

 就活サイト・アプリといえば、「リクナビ」や「マイナビ」を思い浮かべる方が多いだろう。その一方、企業が意中の学生に向けて直接アプローチする「オファー型」就活アプリが一般化する兆しがある。最近ではある種のブームにすら感じられるほどで、実際にオファー型アプリを利用する学生も増えている。ただし、取り立てて特技や資格ももたない普通の学生にオファーが来ることの裏には何があるのか、一度冷静に考えてみる必要もあるだろう。たとえば、労働環境などに大きな問題を抱える、いわゆるブラック企業がオファーしてくる可能性もあるのだ。

 記者自身、怖いもの見たさも手伝って、学生時代にオファー型就活アプリを使っていたことがある。何を隠そう、就活で最初に内定をもらった東京の企業は、そのアプリを通してオファーしてきた企業だった。

 この企業は経理のアウトソーシングを請け負っており、経営者が何冊も本を出版し、大量のYouTube動画を投稿していた。内々定後には、「入社前に社長の著書をすべて読んで感想を書くこと」「YouTube動画をすべて視聴してコメントを書くこと」という指示があった。さらに、新入社員で5人組をつくり、全員が日商簿記検定2級を取らなければならないという決まりもあった。オファー型は多様な企業からアプローチがくるため受け身になりがちだが、学生は慎重に判断すべきだ。

ブラック人材はあきらめるしかない?

 効率的な採用活動を行うため、選考の初段階で学生にグループディスカッションを課す企業がある。その際、就活生たちは面接官の見ている前で積極的に議論を展開しなければならないが、そこに自分勝手に場を乱して全体の進行を妨げる「ブラック人材」予備軍の就活生が存在する。彼らは就活生の間で「クラッシャー」と呼ばれて煙たがられている。

    4月に入社して以降、今度は就活生を受け入れる側として学生に接しているが、学生時代には予想もしなかった学生の実態に驚かされることが多々あった。ブラック人材のくくりでいうと、面接を無断で欠席する、土壇場でキャンセルするなどがそれに該当するだろう。事前に行われる説明会や面接では優秀で志望度も高いように見せかけて、蓋を開けてみると平気で面接を欠席するのだ。面接時間になっても姿を現さない就活生を心配して電話をかけると、「やっぱり辞退します」「内定が出たので行きません」などと悪びれずにいわれることもあり、面接官の確保していた貴重な時間が奪われることも少なくない。こうした場合は、「地雷」社員が入ってくるのを防げたとあきらめるしかなさそうだ。

 結局のところブラック人材は、いわゆるブラック企業に行くか、内定が出ずに卒業することも多い。また、給料が低かったり、労働時間が過度に長かったりするブラックな会社は、当然ながら人間関係が悪いということも往々にしてある。ブラック企業は人気がないためにブラックな人材を取るしかなく、入社後に社員を使い潰すのだ。ブラック人材はブラック企業に入るべくして入っている印象がある。

業界・業種の調査不足

 記者の経験も含めた現代の就活を振り返ってみると、かつてと比べて情報が溢れているにもかかわらず、企業や業界に対する知識が不足しているように思う。SNSや検索エンジンが一般化したためか、そうした情報をそのまま真に受けて下調べもせず、あるいはオファー型就活アプリなどで手軽に就活を行い、なんとなく良さそうな選択肢をなんとなく選んでいないだろうか。多様化する就活アプリと氾濫する情報の前で身動きが取れなくなっている。みえてきたのは、そんな若者の姿だった。

(了)
【吉村 直紘】

(中)

関連キーワード

関連記事