「ちはや公園」「KURUMERU」公園で地域の魅力向上へ

高橋（株）

千早に誕生“民間がつくる公園”

　2021年4月、福岡市東区千早で複合商業施設「GARDENS CHIHAYA（ガーデンズ千早）」が開業した。同施設は、半世紀以上にわたって地域のランドマークとして親しまれてきたボウリング場、アイススケート場、ゴルフ練習場などからなる「スポーツガーデン香椎」が、かたちを変えて新たに生まれ変わったもの。地域の人々に愛される場所となることを目指し、「食と健康」をテーマにした同施設には、食品スーパー「サニー」や無印良品、スポーツクラブエスタなどのほか、医療関連のテナントも入っている。

　さらに、今年4月28日にはガーデンズ千早本館の隣接地で、新たに「ちはや公園」も開業した。ちはや公園は、「公園」という名前が付いているものの公設公営ではなく、民設民営の憩いのスペースである。コンセプトとして「暮らしたのしむ、まちのオープンリビング」を掲げており、目指したのは自宅リビングの延長線上のような、地域の人々にとって居心地の良い空間の開発だ。緑の芝生が広がるオープンスペースのなかに店舗棟6棟が立ち並び、スポーツガーデン時代から地元で愛されてきたレストラン・喫茶「ハロー」をはじめ、個性豊かで魅力的な7店のテナントが入居している。

　立地する千早エリアは、もともとは香椎操車場だった場所を再開発して生まれた新しいまちで、舗装された街並みは綺麗ではあるものの、心安らげる緑地には乏しいエリアだ。そのため、小さな子どもでも安心して遊ばせることができるうえ、そのついでに隣接する本館での買い物にも便利なちはや公園の誕生は、主に地域住民から多くの歓迎の声を寄せられているという。

　「ちはや公園との相乗効果で、ガーデンズ千早の本館にもこれまで以上に多くのお客さまが訪れるようになりました。メインのターゲットは千早（東区）に住むファミリー層ですが、休日は家族連れ、平日は子育てママの利用が多いようです」（高橋（株）グループ経営企画部長・上野敬之氏）。

　また、ちはや公園には、全国でも珍しい「公園長」がいる。公園長は、その名の通り公園を管理する責任者であり、公園を中心とした活動のサポートや地域との関係性構築、地域住民や企業による取り組みを進める役割も担っている。

　「隣の本館だけでなく、周辺の公園や施設などさまざまな場所とつながっていくための“ハブ”的な役割をちはや公園が担っていきたいと思います。新たに立ち上げた協議会『ちはやをよくする会』とも連携しながら、地域の皆さんと一緒になってさまざまな活動を展開し、千早エリアをもっと楽しい、より良いエリアへとしていきたいですね」（公園長・松本圭仙氏）。

　なお、隣接するスポガ香椎跡地は現在、既存施設がすべて解体されて更地となっている。その広さは、ちはや公園を含めたガーデンズ千早とほぼ同等であり、今後の跡地利活用の方策についても気になるところだ。

　「今後については現在、慎重に検討を重ねています。ただ、どういったかたちになるにせよ、皆さまに愛していただいたスポーツガーデンの記憶や場所の“DNA”のようなものを受け継いでいくものにしていければ、と思っています」（上野氏）。

【吉村　直紘】