22年上半期 福岡市の開発動向、博多区がマンションで独走（後）

【西区】3位に躍り出る

　21年下半期と比較して498戸増加し、博多区、東区に次いで、計画戸数3位に躍り出た西区。牽引役となったのが、九州大学伊都キャンパス（以下、九大）至近地で建設が進む「研究開発次世代拠点」だ。

　同拠点整備事業では、3万1,224.68m²の広大な敷地で、研究開発棟・商業棟・テナント棟・住居棟の4つの棟の建設が進められている。住居棟の概要は、Ⅰ棟がRC造5階建て、延床面積4,708.89m²のワンルーム182戸。そして、Ⅱ棟がRC造5階建て、延床面積1万128.39m²のワンルーム355戸の合計537戸となっている。建築主は、大和ハウス工業（株）福岡支社と西部ガス都市開発（株）で、設計・施工を上村建設（株）が担う。
2-2_「研究開発次世代拠点」完成イメージ

　このほか、（有）伊都エステートによる「La Coeur 九大学研都市Ⅱ（RC造5階建て、延床面積822.86m²のワンルーム30戸）」などの開発が計画されている。

　大型物件があったとはいえ、姪浜以西エリアでは九大開校後、隣接自治体の糸島市の全国的な知名度の獲得も相まって、10年以上の長きにわたって持続的な開発が進んでいる。糸島半島としてのブランディングにより、誘客効果の促進も可能なことから、これからも緩やかに開発は続いていくものと考えられる。

【城南区・早良区】下半期と立場逆転

　城南区と早良区の22年上半期における計画戸数は、21年下半期とは真逆の結果となった。城南区の22年上半期の計画戸数は21年下半期比で64戸減少した。対して、早良区は同92戸増加させている。

　城南区で注目される物件は、（株）シフトライフによる「（仮称）別府3丁目マンション」。建築物の概要はRC造13階建て、延床面積2,650m²のワンルーム外36戸。設計は（株）SAKO建築設計工社が手がける。

　早良区で注目される物件は、（株）リビングコーポレーションによる「（仮称）quador藤崎」。建築物の概要はRC造4階建て、延床面積1,293.26m²のワンルーム36戸。福岡市地下鉄・藤崎駅まで徒歩10分程度と交通利便性の高さが魅力だ。

　城南区では、JR九州を代表とする企業グループによる、油山市民の森と油山牧場のリニューアルが決定しており、新たな交流拠点の誕生および地域住民の生活利便性の向上が期待される。

　一方の早良区も、西南学院大学や高級住宅街・百道浜を擁し、文教地区や閑静な住宅街といったブランド付けがなされたエリアでもあり、商業施設も充実していることから、とくに高所得者層の居住区として申し分ない水準にあるといえる。

　両エリアともに特性を生かし、開発を誘引することで強固なエリアブランドを構築できれば、さらなる発展を実現できるだろう。

22年下半期以降も残る開発契機

　博多区の躍進が目立った22年上半期の開発動向。商業施設「ららぽーと福岡」の開業によって、竹下エリアの開発は早くも賑わいを見せており、顔となる商業施設の誕生が地域にもたらすインパクトの大きさを見せつけた。

　また、トップ3から陥落した中央区ではあるが、旧大名小学校跡地活用事業の供用開始（ザ・リッツ・カールトン福岡は23年春頃開業予定）が控えているほか、パチンコホール「プラザ赤坂」跡地の開発動向など、活性化に向けた起爆剤は複数用意されており、まちづくりのポテンシャルは依然高い。コロナ禍で、天神ビッグバンにおける優遇施策の対象ビルの竣工期限が、26年末まで延長された影響も出てくるはずで、22年下半期も引き続き都市開発は活発に進むものと考えられる。

（了）

【代　源太朗】