2024年04月25日( 木 )

糸島・荻浦で活発化する住宅開発

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バランスの取れた地域・荻浦

荻浦から可也山を臨む
荻浦から可也山を臨む

 荻浦(おぎのうら)は、糸島市の玄関口であるJR筑前前原駅から徒歩15分程度、隣駅の美咲が丘駅から徒歩10分程度の場所にある住宅地だ。電車一本で天神・博多まで50分以内と、福岡市の中心部も通勤・通学圏内にある。また、国道202号線にも隣接しており、自動車での移動もスムーズなほか、沿線にはマルキョウニュー前原店、ファッションセンターしまむら前原店などの商業施設も充実しており、相応の生活利便性が確保されている。

憩いの場である「はな咲公園」。ローラーすべり台が人気
憩いの場である「はな咲公園」。ローラーすべり台が人気
子どもに人気の高いローラーすべり台
子どもに人気の高いローラーすべり台

 もともと荻浦は田畑の広がる農村地域だったが、1988年の荻浦土地区画整理組合・準備委員会の発足が転機となり、住宅地としても発展を遂げることになる。準備委員会はまちづくりの方針について、当時の前原市と協議を進めていたが、そこに思いがけず第三者が参画する。この第三者というのが、福岡のまちづくりに欠かせない存在であるJR九州だった。

 JR九州は、新駅設置を目指して荻浦土地区画整理事業に参画した。準備委員会、前原市、JR九州の産官民連携により、同事業は当初の想定を上回る規模感で話が進んでいくことになる。そして、92年に準備委員会は福岡県から正式に事業許可を受け、荻浦土地区画整理組合として始動。そこから約4年の歳月を経て誕生したのが、新興住宅地・美咲が丘であり、JR美咲が丘駅である。

 以降、荻浦と美咲が丘は別の地区として歩み始めるのだが、相乗効果によって荻浦にも子育て世帯の新しい住民が増えていった。受け皿としての住宅整備も進み、田園地帯と居住区のバランスの取れた地域として、荻浦は今日まで賑わいを見せている。

JR美咲が丘駅と国道202号
JR美咲が丘駅と国道202号

 糸島ブランド構築が追い風に

 近年、市や地元企業による積極的な情報発信の効果もあり、観光地や移住先として全国的に注目される糸島。荻浦でも糸島というエリアブランドを生かした開発が進められており、とくに活発なのが住宅開発だ。西日本鉄道やタマホームなどの大手も荻浦で開発計画を進めるなど、福岡市の中心部との距離感、海や山などの豊かな自然環境、そしてコロナ禍における働き方の変化が、生活拠点の選択肢としての糸島・荻浦という存在を、より身近なものにしている。

 広島を拠点に、土地調査から不動産の企画・開発まで手がける総合不動産コンサルタントの(株)BIMも、荻浦で住宅開発を進める1社だ。同社は5年前に福岡に支店を開設し、これまで筑紫野市や糟屋郡、東区、城南区などで実績を上げてきた。

 同社代表取締役・藤田準一郎氏は、「荻浦の計画は、当社にとって福岡西部エリア初案件となります。もともとは1物件の売却相談でしたが、周辺環境を調査するなかで、不動産相続や管理に関する課題などが浮上し、各土地の所有者さまとの交渉を進め、現在の20区画超の計画となりました。新住民の方の憩いの場として公園も整備する予定ですので、楽しみにしていただければと思います」と意気込む。

 相続などで複雑化した権利関係によって資産運用や売却が困難な土地、あるいは土砂崩れの危険性や接道要件など、立地条件がネックとなって開発が容易ではない土地など、いわゆる“やっかいな土地”の開発を強みとする同社は、次のように話す。

 「全国的な知名度を得たことで、糸島には子育て世帯をはじめ移住者が増えています。また、コロナ禍でリモートワークに代表されるように働き方が多様化したこともあり、相応の住宅需要が見込まれます。荻浦の開発を通じて、周辺エリアにおけるインフラ整備、防犯・防災対策の充実に貢献できればと考えております。また、今回の開発を契機に、当社がこれまでに培ってきたノウハウが生きる、開発困難とされる土地の開発現場を増やしていくことで、福岡でも資産価値の向上を支援できればと考えています」(藤田代表)。

 荻浦は、夏祭りや餅つき大会など、地域のイベントが多彩で、住民間の交流が盛んな点も魅力だ。糸島市の中心市街地の前原にも近く、まだ居住区として発展の余地は残されている。進行中の開発計画の動向も含め、荻浦の今後に期待したい。

【代 源太朗】

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