ねこの手を貸りて新たな時代へ付加価値の高い仕事のつくり方

2022年9月8日 17:00

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（株）ねこ

　中小企業の業務現場においてアウトソーシングの需要が高まっている。アウトソーシングとは、特定の業務を外部の専門業者に依頼することで、手間暇コストの削減だけでなく、業務の品質を高めることも可能になる。しかしなにより、自社の人的資源をより付加価値の高い重要な業務に投入することで、従業員には「やりがい」を感じる仕事に集中してもらうことができ、最終的に生産性も高めることができるのが最大のメリットであろう。

生産性向上は時代の要請

　少子高齢化で生産年齢人口の減少が続くなか、中小企業にとっては人員の確保が抜き差しならぬ経営課題となっている。日本の生産年齢人口（15～64歳人口）は2020年国勢調査で7,508万人と、ピークだった1995年の8,716万人から13.9％減少。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」（平成29年推計）によれば、将来の生産年齢人口は、29年、40年、56年にそれぞれ 7,000万人、6,000万人、5,000万人を割り、65年には4,529万人となるとされる。

　また、日本の労働生産性は20年時点で1時間あたりに生み出す付加価値は48.1ドルと主要七か国（G7）で最も低く、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38カ国の先進国が加盟する経済協力開発機構（OECD）各国平均の54.0ドルをも下回る。このことは、生産年齢人口が減少する環境のなかで付加価値の低い仕事に従事する日本企業の実態を示しており、これからの企業経営において、本質的な課題が生産性の向上にあることを示唆している。

リーズナブルな高品質CG制作

New Era is Coming Over（新しい時代がやってくる）の頭文字を社名に起用した「（株）ねこ」は、CGスペシャリストによる住宅パースを提供する、住宅業界に特化したビジュアル制作会社だ。主力事業は、一番の得意分野であるCG制作を通じて、建物の完成図だけではなく、建っていくその過程や周囲の景色を、時刻や季節、天気の移ろいも入れて表した「バーチャル展示場」の制作。住宅の購入を検討する顧客にそこでの日常を瞬時にかつリアルなイメージを提供するほか、大型の住宅開発案件では近隣住民への説明会に利用されるなど、その用途は急速に拡大している。

　この事業はもともと、原口社長が所属していた（株）栄住産業が新規事業として打ち出した顧客サービスの1つとして、日本全国で主にバルコニーの防水工法や屋上緑化を手がけるなかで、顧客となる工務店から住宅パースの制作を気軽に任せてもらえるようリーズナブルな価格帯で始まった。ところが、21年4月に栄住産業がヤマエグループホールディングス（株）に株式譲渡されたことを受け、CG制作部門が独立し「ねこ」としての歩みを始めた。

　同社の強みはリーズナブルな高品質CG制作にある。一般的にCG制作は、PC設備とビジュアルソフトの操作技術、そして人件費がそのコスト要因となる。高品質なCG制作には、よりハイエンドの設備での、より多くの操作工程が必要となるため、日本国内で制作すれば当然、人件費が嵩み、提供価格はどうしても高額になってしまう。同社はフィリピンに自社での制作体制を構築し、原口社長を含めた3名の社員がフィリピンの約100名のスタッフとともに制作を手がけることで、国内の市場価格の半値以下という価格帯を実現している。

新しい時代がやってくる

　フィリピンの若く優秀なIT技術者と協働する同社の在り方は、慢性的な人材不足に悩む今の日本において、1つの解を示している。同社は、21年9月に設立されたばかりだが、フィリピンの現地法人は13年以来、国内向けに9年間で約1万5,000例を超える実績を誇るIT集団だ。若者たちが仕事を渇望して一生懸命勉強してもなかなか見つからないフィリピンと、募集しても人材が来ない、定着しない日本とが、具体的な仕事のシェアリングによって物理的な距離を超えて結び合う。文字で表現すれば簡単なものだが、仕事を滞りなく進捗できるまでの道程は決して平易ではなかった。

　同社は海外拠点の立ち上げ経験から、社内の一部門の業務をまるごと海外法人へ移管する支援業務も行っている。フィリピンでは現地スタッフの気質を熟知した日本人管理者が常駐して雇用管理を一手に引き受け、海外拠点での業務進捗で壁となるコミュニケーションについても、同社の経験に基づいた最適解を提供している。これらのノウハウが評価され、在庫管理から受発注業務、施工業者への図面作成まで、すでに多くの相談が寄せられ、実際に同社の支援のもとでフィリピンに現地法人を設立する企業も出てきている。

　DXは人々を時間と場所の制約から解き放ち、遠くからでも事業に参画できることを可能にする。ヒト・モノ・カネが経営の三要素とされるが、人的資源の確保に苦労する中小企業は少なくない。テクノロジーを駆使して新たな経営手法を模索する中小企業は、一度同社のHPを訪れてみてほしい。そこには「ねこの手」以上の衝撃があり、それは自社の生産モデルを再構築すべき時代に突入していることを気づかせてくれる。

【児玉　崇】

（株）ねこ
代　表：原口　潤也　
所在地：福岡市博多区博多駅前2-12-12
　　　　第5グリーンビル5F
設　立：2021年9月　
資本金：1,000万円
ＴＥＬ：092-260-8118　
ＵＲＬ：https://www.necopower.com