秋のアートを五感で楽しむ 山田ゆかり個展 ~Bloom in Autumn~

秋のアートで、心豊かな空間を五感で楽しむ

 現代アート作家・山田ゆかり氏の「山田ゆかり個展 ~Bloom in Autumn~」が9月29日まで創英ギャラリー(東京・銀座)で開催されている。秋の訪れを感じさせる抽象画の新作と、フラワーアレンジメント、音楽、香りのコラボレーションにより、五感でアートを楽しむことができる展覧会だ。

「山田ゆかり個展 ~Bloom in Autumn~」
「山田ゆかり個展 ~Bloom in Autumn~」

 今回の個展は、夕暮れとともに月が姿を見せる時を描いた「黄昏」や、花が咲くときの思いを描いた「開花」など、身近な自然の出来事や心の動きに注目した作品となっている。

「黄昏」
「黄昏」
左から、「開花」「雲間」
左から、「開花」「雲間」

 日常の近くにあり、誰が見ても身近に感じるテーマだからこそ、作品で表現された世界観と、見る人の心との距離がとても近く感じられる。山田氏自身は「日々の生活の近くにある自然のなかで感じる空気感や心の情景を描いているため、自分の感じたことを素直に表現した作品になっています」と語る。会場には、フラワーアーティストの前芝良紀氏による秋に咲く花を取り入れたフラワーアレンジメントもあり、やわらかく女性らしい空間となっている。

山田ゆかり氏
山田ゆかり氏

 それぞれの作品には、山田氏自身の詩句が付いているため、絵を見ながら詩を読むと作品への親近感が高まり、作者の描きたかったことがよりよく伝わってくる。一方、山田氏は日常のなかで感じた思いを作品に込めながらも、「見る人には、自分が絵を見て感じた気持ちを大切にしてほしいと感じています。作品を見る人が、描き手が最初に描こうとしたこととは違った捉え方をするのも、アートの楽しみです」と自由な楽しみ方を提案している。

感謝の気持ちを込めたアート

 ひとつひとつの作品を見てもらうのはもちろんのこと、さまざまな作品が奏でるハーモニーを空間として楽しんでほしいという思いから、山田氏は今回の展覧会では青、緑、ピンク、オレンジ、黄色など、幅広い色を使った作品を並べている。移り行く季節が柔らかい色合いで描かれ、直線や円などデザイン的なモチーフを取り入れた作品が主となっている。なお、絵のなかには、展覧会に訪れた人への感謝の気持ちを表す「ありがとう」の言葉が、さりげない直線で描かれたモールス信号で刻み込まれている。山田氏の作品には独自の世界観がありながらも、このようにいつも新たな工夫があり、新作と向き合う度に、見る者は新鮮な気持ちを感じることができるのである。

左から、「鍵」「とばり」「舞い」「雪華」「轟き」
左から、「鍵」「とばり」「舞い」「雪華」「轟き」

 今回の個展では、山田氏とアーティストのHana4(華世)氏がコラボレーションしたNFTアート()作品を来場者にプレゼントしている。4種類の作品のうちランダムで1種類が当たり、自宅に帰ってもデジタルアートを楽しめるのである。「アートを所有する体験を気軽に楽しんでほしい」という思いが込められており、山田氏の作品にHana4氏が描いた動きのある装飾が施され、デジタルならではのアートとなっている。

 家に絵を飾ることについては、「外から帰ってきたときにリラックスできる空間となってほしいと感じています」と話す山田氏。今後の作品づくりについては、「コロナ禍が下火になり、海外と自由に行き来できるようになれば、欧州やアジアなどにも足を運んで新しい感性を取り入れ、作品に反映していきたいと考えています」と語る。山田氏ならではの感性が込められた、次なる作品づくりが楽しみだ。

【石井 ゆかり】

※:ブロックチェーン技術を用いることで、データを改ざんができない仕組みを実現した唯一無二のデジタルアート。 ^

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