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2015年06月22日 11:47

リピート率を上昇させる海洋観光のおもてなし

海洋観光(株)

 旅行に不可欠な現地での移動手段に始まり、食事の準備、ガイド・通訳の手配まで手がける海洋観光(株)。同社の行き届いたサービスは、日本のおもてなしをも凌駕するのか――。

35歳の若き経営者

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スカイシー・クルーズが運航する客船
『スカイシー・ゴールデン・エラ(黄金時代の意)』。
中国人観光客が多く利用している

 海洋観光(株)の蔡赫社長は、中国・北京の出身。2008年に裸一貫で来日。何もかもが手探り状態のなかで、翌09年には友人とともに東京で事業を起こした。東京国際空港・成田空港から日本へ入る中国人観光客向けのおもてなしサービスの展開。現在のビジネスモデルの雛形を、わずか1年の間につくり上げてしまったのだ。軌道に乗り始めた商売、しかし今から2年前、蔡赫社長は拠点を東京から福岡へと移した。
 「飛行機とは比べ物にならないぐらい、船を利用しての訪日中国人観光客が多いことを知りました。福岡へ拠点を移した理由です」(蔡赫社長)。
 データに裏付けされた数字と、それを基にした福岡での勝負。決断力、行動力、共にズバ抜けているが、何よりも驚かされるのはそのスピードだ。ビジネスを展開していく速度があまりにも早い。
 「私たち外国人が日本に滞在して何かアクションを起こし続けていくためには、常にビザの問題を頭に入れておかなければなりません。のんびりと構えている暇はないのです」(蔡赫社長)。

 外国人であるということ――。それが、国内で生活する分には期限や条件などの制約がなく、何不自由なく過ごすことのできる日本人との一番の違いである。こういった環境的な優位が、日本人が気づかぬうちに何かを決断し、アクションを起こすまでのスピードを遅くしてしまっているのかもしれない。一般的にもよく使われる『ハングリー精神がない』という言葉。蔡赫社長の日本に来てからわずか数年間の動きからは、そんな意識の違いから生まれる差、ハングリー精神の有無がもたらす『実行力の違い』がまざまざと見えてくる。35歳とまだ若い蔡赫社長は、精神的にも肉体的にも、まだまだ伸び盛りである。
 「日本人経営者の方と同じように、もっとスムーズに業種の垣根を越え、業務展開をしていきたいと考えております」(蔡赫社長)。
 蔡赫社長が生み出した訪日中国人観光客向けのサービスは、現在、その好調ぶりから同業他社を生み出すまでに新たな旅行業・観光業の在り方として成長、定着している。外国人であることのハンデをものともしない蔡赫社長の前向きな姿勢は、そんなライバル企業たちとの競合を前にしても変わることはない。
 「昔、オーシャンホテルに案内した中国人観光客の方が、ホテルを出るときに涙を流されていたので、「どうしましたか?」と尋ねてみると、『ホテルのサービスがとても良かった』と理由を話してくれました。こういった人を感動させられるサービスを、私たちも目指していきます」(蔡赫社長)。

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中国人観光客に対する歓迎セレモニー

 競争がサービスの向上につながるという実力主義の考えが蔡赫社長の根底にあり、同社にはそのなかで必ず生き残っていけるだけのノウハウの蓄積がある。蔡赫社長が同業他社の存在から危機感ではなく、貪欲にサービス向上に必要な具体的な物(バス不足の解消)、精神(日本人的おもてなしの心の取り入れ)を語るのも、これまでに積み重ねてきた類まれなる経験と、同社の宝でもある優秀な若き社員たちの存在があるからでもある。
 「人的な直接交流を提供することによって、リピーター率をより一層高めていきたいと考えております」(蔡赫社長)。
 旅行者にとって現地観光の際に必要となる足(観光バス)、食事、ショッピングやサービスを円滑に行うためのコミュニケーションツールとしての通訳、街そのものへの知的好奇心を満たすためのツアーガイドの用意など、すべての手間を観光客に代わって手配してくれる同社の存在は、これからも必要とされ続けることだろう。

中国と日本の架け橋に

 訪日中国人観光客の、いわゆる『爆買い』によって、日本市場は救われていると言っても過言ではない。そんな大切なお客さまでもある訪日中国人観光客に人気の『滞在期間』を蔡赫社長に尋ねてみた。
 「一番人気は4泊5日のプラン。次いで5泊6日のプランが人気です」(蔡赫社長)。
 約1週間の滞在期間中に、「また日本に来たい!」と思わせるためにも、ネットやテレビに取り上げられるような表層的な中国事情ではなく、同社のような『本物の』中国の情報を持った旅行業・観光業者が必要である。日本国内の、とくに九州で中国パワーを取り込みたいバス観光業者やホテル・旅館経営者は、一度同社とタッグを組んでみるといいだろう。きっと新しい集客方法を生み出せるはずだ。

 蔡赫社長は語る。「中国と日本、国同士が仲良くなるためにも、まずは民間交流が活発化することが大切だと考えます。私が身を置く旅行・観光業は、人と人との『直接交流』を提供できる素晴らしいものです。つまり中国と日本の関係改善の橋渡し役として、一番貢献できる立場なのです」。
 中国の購買力は、日本はもちろん、日本で働く中国人経営者たちにも還元される。そのなかで大切なのは、どちらが多くパイを握るかを競い合うだけでなく、双方が協力することで相乗効果を発揮させて、より多くの利を市場に循環させていくことだ。中国で生まれ育ち、日本で企業人として活躍する蔡赫社長の言葉には、福岡がダイナミックな成長を遂げるためのヒントが溢れている。

【代 源太朗】

中国人観光客の特徴

 中国人クールズ観光利用者の数は、約70万人。35歳以下の利用者が全体の半数以上を占めており、また、個人やカップルといった少数の旅行ではなく、家族全員といった大人数での利用が多いことも特徴である。また、日本滞在時の1人当たりの消費額は34万円と言われており、一度の寄港で来福する中国人観光客の人数が2,000名規模であることを考えると、一度に福岡に落とされる金額はおおよそ6億8,000万円となる。

※参考:世界観光都市連合(WTCF)調べ

 
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