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2015年06月25日 07:04

自主回収から4年、『茶のしずく』問題を振り返る(2)

損害論の審議で被告が原告の軽快を主張

被害発生からの約4年間の主な動向 被害発生からの約4年間の主な動向

 東京弁護団による訴訟の経緯を振り返る【表参照】。原告側は被告3社(販売会社の(株)悠香、製造会社の(株)フェニックス、原料会社の(株)片山化学工業研究所)に対し、製造物責任法に基づく損害賠償請求を行っている。先に審議されたのは責任論で、『茶のしずく』石けんに欠陥があったかどうか、製造・販売時に欠陥を認識できたかどうかが争点となった。

 原告側は、『茶のしずく』石けんには小麦アレルギー発症の原因となる「グルパール19S」が含まれているため、『茶のしずく』石けんには欠陥があると主張。また、『茶のしずく』石けんの製造・販売段階で、グルパール19Sが小麦アレルギーを誘発すると認識できたと、医学的な資料から立証してきた。

 これに対して被告側は、「小麦アレルギーを発症したのは被害者の体質によるもの」、「小麦アレルギーを発症することは当時の医学的知見から認識できなかった」などと反論した。

 損害論では、(株)悠香・(株)フェニックスが「原告の症状は軽快している」と主張。原告側は、これらの主張は「日本アレルギー学会での議論や医師の見解を曲解している」と反論した。また、被告側は原告側に小麦アレルギーを発症する以前のカルテの提出を求め、原告側は診断書を作成した医療機関のカルテを提出すれば十分とした。カルテ提出をめぐるやりとりで膠着状態となったため、原告側は診断書を作成した医療機関だけでなく、裁判と関連性などが認められる範囲でカルテを提出することにした。その後、診断書を作成した医療機関のカルテを裁判所に提出することになり、「文書送付嘱託」制度を利用し、裁判所から医療機関にカルテを請求できるようにした。

 被告側は「医療機関を受診しないのは、小麦アレルギーが治ったからだ」と主張。このため弁護団は、被害者に医療機関での再受診を促した。この点について原告の1人は「通院をやめた原告が多いのは、小麦アレルギーが治ったからではなく、病院に行っても抗アレルギー剤を処方されるだけだから。治療薬があるわけではないので、高いお金を払ってまで病院に行く必要はないと考えていた」と話し、裁判所に治療中であることを証明するために、再受診する予定としている。こうして現在、1人ひとりの症状ごとに和解金額を算出するための個別立証の準備が進められている。

 内容にもよるが、原告側は裁判所から出される予定の和解案に対して、基本的に受け入れる方針を示している。7月の和解案がどのような内容になるのかが注目される。『茶のしずく』裁判は最終局面を迎えている。

全国270施設で2,111症例

 日本皮膚科学会が5月31日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市西区)で開催した市民公開講座では、旧『茶のしずく』石けんによる小麦アレルギー問題について、厚生労働省が設置した特別委員会から最終の研究結果が報告された。

 日本アレルギー学会の「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」による疫学調査の結果報告(藤田保健衛生大学皮膚科・矢上昌子氏)によると、2014年10月20日時点で、診断基準を満たした症例数は2,111例だった。年齢は1歳(男児)から93歳(女性)までで、平均年齢は45.8歳。20代~60代の女性が多かった。症例登録には全国270施設が協力。都道府県別で見ると福岡県が最も多い311例で、東京都125例、北海道124例、大阪府123例、広島県50例と続いた。

 ほかのアレルギー症状との関係を見ると、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状を持っていた患者は半数で、もともと持っていたアレルギーとの関連性はなく、あくまでも石けんを使用することで発症していた。患者の約7割が顔面のかゆみやまぶたのはれを発症し、約3割は症状が出なかった。症例登録が少なくなっていることから疫学調査を終了し、特別委も解散となった。

(つづく)
【山本 剛資】

 
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