2024年04月20日( 土 )

柳川商店街再生の試み(3)

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資料:柳川観光開発(株)サイト 資料:柳川観光開発(株)サイト

 マルショク跡地の活用に活路を見出そうとする柳川商店街ですが、その前に柳川市では地域づくりにおいて大きな課題を抱えているという事実に触れておきましょう。
 それは、観光と商店街の関係です。柳川観光は、川下りで有名です。この川下りコースは、市内の名所旧跡をたどるように設定されています。その終着点は江戸時代以来の柳川藩主立花家の邸宅であった「御花」であり、この一帯が柳川観光の拠点となっています。

 柳川商店街(図の楕円囲み京町近辺)は、観光川下りコースから外れており、観光拠点の「御花」一帯からも約1㎞離れています。問題はせっかく各地からやって来る観光客を商店街に取り込む工夫、都市計画上の政策的な仕掛けができていないことにあります。前々回に述べた柳川市の入込観光客数は2012年に117万4,000人としましたが、その後の柳川市の発表によると、13年は124万5,000人と1年間で約7万人増加しています。
 この柳川市の観光客に関する実態調査データを引用しつつ、柳川観光の実態を見ておきましょう。データは「柳川市観光客動態調査報告書」(12年3月、柳川市観光課)によります。ただし、大学生が調査にあたったようでデータには納得し難い箇所もあり、それらを除いて紹介します。
 これによると、来訪者の居住地は、「福岡市内」25.0%、「福岡県(福岡市を除く)」20.5%、「九州内(福岡県除く)」22.0%、「九州外」32.6%となっており、九州外が多いことに注目されます。この割合は、09年の前回調査より約5ポイント増えています。また、九州内でも長崎県、大分県、宮崎県といった比較的遠方からの訪問が増えており、柳川観光マーケットの広域化傾向がみられます。

 ここで、この傾向に関連して我が国の訪日外国人旅行者数(インバウンド)の動向を見ておきましょう。
 訪日外国人旅行者数は、12年の約836万人から13年は1,036万人と、初めて1,000万人を突破しました。そして、14年は約1,341万人へと急増し、15年は1,500万人を超えると予想されています。これを受けて観光庁では、20年までに訪日外国人旅行者数の目標を2,000万人と設定しています。今の状況では十分達成可能な目標値とみられます。
 このような訪日外国人旅行者数の増加の背景には、このところの円安、大型クルーズ船の寄港の増加、東南アジア初の旅客へのビザ発給要件の緩和、クールジャパンブーム(とくに日本食ブーム)、官民による活発な訪日プロモーション活動の強化、飲食・宿泊施設の外国人客受け入れ態勢の整備等が挙げられます。
 九州においてもこの傾向は看過できず、一般社団法人九州観光推進機構では、さまざまな誘致策を強化しており、13年に年間で約125万人であったインバウンドを、23年までに約440万人に増やすことを目指しています。

 柳川市の観光において、その資源は外国人にも十分訴求できるものであると考えられます。したがって、この流れに乗る必要は当然あるわけで、広域化している観光マーケットをさらに広げる好機であり、その対策を早く取らないと遅れをとることになりかねません。話がやや先に行きましたが、もう少し柳川市観光の動向を見ておきましょう。
 柳川への旅行形態は「個人旅行」(旅行会社を利用しない)が87.2%で、団体旅行は少ないようです。これは、どこの観光地でも同様の傾向です。そして「日帰り旅行」が62.2%でこの報告書から全対象者のうち柳川市内に泊まった割合を算出してみると、それはわずか5.4%にとどまっています。宿泊型の観光地ではないのは一目瞭然です。「リピーター」率は49.4%。訪問理由は「川下り」47.6%、「食事」38.8%、「祭り・イベント」16.9%、「まち歩き」12.1%とやはり川下りが売り物です。訪問場所は「御花」64.6%、「川下り」57.1%、「沖端商店街」27.6%、「北原白秋生家・記念館」23.4%であり「柳川商店街」はわずか3.2%です。この点に問題があるのは明白です。

 観光スポットから市内中心部の商店街への誘導ができていないのです。柳川商店街では、マルショク跡地を利用し、季節に応じて「辻門市場」「夏祭り」「柳川ひな祭り・巨大さげもん」などのイベントを実施。商店街に賑わいを取り戻そうとしていますが、観光客の呼び込みはあまりできておらず、主に地元の消費者のみが利用する場所となっているのです。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshida地域マーケティング研究所
代表 吉田 潔
和歌山大学観光学部特別研究員(客員フェロー)、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師。

 
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