2024年03月30日( 土 )

韓国の建設業界に忍び寄る連鎖倒産の危機(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

弱り目に祟り目

ソウル マンション イメージ    不動産市場はこれまでと違って、逆風が吹き荒れている。不動産市場と密接に関係のある産業は建設産業だが、建設産業もまた危機に立たされている。まず、利上げは建設産業にも打撃となる。利上げの時代には、金融機関も融資の不良債権化を恐れて、貸出条件を厳しくする。よって、どうしても資金の流動性は縮小するため、建設業界の資金繰りが大変なことになる。

 ところが、韓国では江原道・レゴランドの資産流動化企業手形(ABCP)不渡り事態で、大手企業さえ資金繰りに苦労している状況となった。社債よりも安全とされていた地方自治体の公債がデフォルトを起こしたことで、資金市場で大きなショックが走った。また今月に入って、韓国電力、LGユープラス、韓進などの大手企業が相次いで社債発行に乗り出したが、投資家を見つけられず、社債が販売できなかった。

 建設会社の連鎖倒産が噂されているなか、日本でも有名なロッテグループのロッテ建設は、短期借入金の返済が困難となり、20日、短期借入金償還などのために系列会社ロッテケミカルから5,000億ウォンを緊急調達したのに続き、来月18日には2,000億ウォン規模の有償増資を行う。ロッテグループ系列会社だけではない。SKグループ系列会社であるSKエコプラント、暁星グループ系列会社である暁星化学·暁星重工業なども公募社債発行が難しくなり、8~9月信用保証基金の保証を受けて、やっと資金を調達したほどだ。

 韓国の建設業界では資金調達方法としてプロジェクトファイナンス(PF)を活用する事例が多い。以前はゼネコンや銀行が支払保証をするケースが多かったが、ゼネコンや銀行ではリスク管理が厳しくなり、それを回避するために多用されている手法である。その代わり、貯蓄銀行や証券会社、保険会社などが資金を提供したり保証をしたりして、そこから収益を上げていた。ところが、このように資金繰りが苦しくなって来ると、施工に関わった建設会社、支払保証をした証券会社などが連鎖倒産するのではないかという懸念が高まっている。

 一般的に不動産危機は、不動産景気の悪化→販売在庫の増加→資金繰り悪化→不良債権化という順序で発生する。ところが、今回は資金繰り悪化が始発点となっている。資金繰りが悪化しても、住宅の販売が円滑であれば会社は耐えられるが、不動産市場が冷え込んで住宅の販売不振に陥っているなかで資金繰りが悪化すると、会社はもちこたえられない。国土交通省によると、全国で販売できなかった住宅は、前年同期対比で235.5%増加した4万7217戸である。そのような状況下で、今年の年末までに満期が到来する手形の合計額は34兆ウォンに上り、これを確保できないと会社は倒産の憂き目にあうので、会社の存命をかけて資金繰りに必死になっている。

 急激な利上げによる住宅販売の不振と、鉄筋、コンクリートなどの建設資材の高騰、それにレゴランド発の資金市場の冷え込みまで重なり、建設業界に暗雲が立ち込めている。世界金融危機の際にもプロジェクトファイナンスの不良債権化で40社余りの建設会社が倒産したが、今回も同じようなことが繰り返されるのではないかと建設業界では神経を尖らせている。加えて、前回の記事で取り上げた貨物連帯のストが長期化し、全国の建設現場に大きな影響をおよぼしている。建設資材の高騰や資金繰り悪化で体力が弱くなったなか、ストが止めを刺すのではないかという恐怖感に業界は包まれている。

 大韓建設協会によると、今月1日基準で全国985カ所の工事現場のうち、半分を超える577カ所が生コンの打設を中止している。事態を深刻に受け止めた韓国政府は業務復帰命令を発動し、生コンは供給が開始された。しかし、火種はまだ残った状態なので油断はできない。韓国政府の対応次第では、建設業界に大きな嵐が吹き荒れそうだ。

(了)

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