2024年04月30日( 火 )

共産党は緩やかな党派性を認めよ~統一選こぼれ話10

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 選挙期間中に某党選挙事務所を取材したところ、「(株)データ・マックスが名の通らないメディア」と取材拒否にあった旨を記事にした

 同党へエールを送ることを兼ねて名を出すと、共産党のことである。

 本件は共産党の対メディア姿勢に大いに疑問をもたせる内容であったことから、ある共産党候補者に記事のあらましを伝えたところ、「そのような対応は絶対に許されません! 我が党はいつも真摯に対応します」という取材拒否への批判と、断固とした反論をいただいた。ぜひ、そうあって欲しい。

 さて、塩対応をいただいた共産党の当該選挙事務所には、投開票日の夜、戦いを終え開票開始を待つ静寂な午後8時に再度お邪魔させていただいた。1週間前に取材拒否をいただいた事務局長は、当落確定の瞬間を映すために集まった名の通ったテレビ局のクルーと談話中であったが、私に気づいて顔を背けたように見えた。私はその場でお茶汲みしていた女性に名刺を差し出して、候補者にお話をうかがいたいと申し出た。女性が私の名刺をもって事務所の奥へいくと、どうやら先日取材にきた人間であることが分かったらしく名刺を見て話し合っていたが、候補者本人が取材に応じてくれた。取材を終えてその帰りしな、私が事務所を後にするとき、取材拒否の当人が立ち上がって、くるりと私の方へ振り返りお辞儀をしながら、「お疲れさまです!」とはっきりした声で挨拶してくれた。思いもかけない挨拶に対して、私はまごついて満足な返礼もできないまま失礼してしまった。

 ひょっとすると取材拒否が事務所内で問題になったのかもしれない。あるいは名刺を渡していたので記事を読んだのかもしれない。党勢衰退と取材拒否との関係をあてこすった記事に対して、取材拒否した当人は心中に思うところがあったかもしれない。今後、取材拒否はもちろんしていただきたくないが、選挙の結果を見れば、取材拒否と党勢衰退の関りなどもはやどうでもよいくらいに、共産党の衰退は明らかである。

 今回の統一地方選挙前半戦における共産党の惨敗に対して、党中央は現時点で除名問題との関りについての認識を避けているようだ。しかし、はっきりいって除名問題は有権者が心のどこかにいだいていた共産党に対する素朴な尊敬の念を木っ端みじんに打ち砕いた。それは党中央に対する尊敬では断じてない。地域で地道に貧困問題や福祉の問題に取り組み、市民に根差した活動に身を挺してきた無名の党員たちが培ってきた尊敬である。

 これまでの選挙においても、共産党へ票を投じてきた有権者たちは、決して表立って共産党への支持を表明してきた人たちばかりではなかった。共産党の主張を全般的に支持はできなくても、共産党の地道な活動と存在がトータルで社会にとって有益だと認める人たちがおり、その人たちを裾野として目に見えない緩やかな党派性がたしかに存在していたのである。しかし、今回の共産党の除名問題は、党内部における目に見えたかたちでの緩やかな党派性を一切認めないことの表明に他ならない。共産党に対して心情において緩やかな党派性を感じていた人たちは、もはやこのような党に一票を投じることができるだろうか。

 除名問題は共産党が自党に対する緩やかな党派性の裾野を認めるか、認めないかの瀬戸際である。認めなければ、支えのない斜塔はただ倒れるのみである。

【寺村 朋輝】

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