2024年05月15日( 水 )

Park-PFI制度で福岡市内3公園を再整備(後)

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清流公園
水辺を生かした賑わい創出

清流公園
清流公園

    1952年度に開園した清流公園は、戦後の復興土地区画整理事業によって整備された街区公園である。那珂川に面して北は昭和通りから南はキャナルシティ博多に至る細長い形状となっており、天神と博多駅を結ぶ回遊軸上に位置している。

 同公園は、那珂川に面する立地的な特性から、人々が川沿いを眺めながらくつろげる憩いの場であるとともに、春吉橋から南には夜間に屋台が軒を連ねるスポットとして有名である。また、キャナルシティ博多に隣接する南端部広場は、中洲まつりや中洲JAZZなどのイベント会場としても利用される賑わいの場となっている。さらに23年4月からは春吉橋の架替えにともなう迂回路橋を生かした橋上広場も同公園区域に編入し、イベントができる広場として供用開始した。

 福岡市では現在、都心部の回遊性向上を図るため、水辺や風を感じることができ、福岡を代表する風景でもある那珂川沿いの須崎公園から清流公園までのエリアにおいて、川に向かって開かれたまちに誘導していく、水辺を生かしたまちづくり「リバーフロントNEXT」に取り組んでいる。今回の再整備にあたっては、このリバーフロントNEXTを踏まえたうえでPark-PFI制度および指定管理者制度を導入することで、民間のノウハウを活用。公園利用者の利便性や公園の魅力向上を図るとともに、都心部の回遊性を高め、水辺のロケーションを生かした公園とすることを目的としている。

清流公園
清流公園

明治公園
オフィスワーカー憩いの場へ

 1964年12月に都市計画決定され、65年に開園した都市公園が明治公園である。博多駅博多口側に位置する都市公園として、ややひっそりと利用されていた同公園だが、08年からは博多駅周辺地区における浸水対策工事や地下送電管路推進工事、博多駅前広場地下車路建設工事による占用が継続していた。11年からは同公園の再整備に着手。15年に一部区域の供用が開始されたものの、その後も地下鉄七隈線延伸工事における占用が継続されたことで、全面整備が完了していない状況にある。現在はオフィス街の一角に位置する緑のスペースとして、主に近隣に勤める人々の憩いの場としての利用がされているものの、未整備区域が残されているため、その利用は限定的なものとなっている。

 同公園が立地する博多駅周辺エリアにおいては、19年5月より市の再開発誘導プロジェクト「博多コネクティッド」が進行。民間ビルの建替えに合わせた賑わい創出の取り組みが進められるとともに、博多駅前歩行者デッキの延伸(21年4月)や、筑紫口駅前広場のリニューアル(22年8月)、地下鉄七隈線の延伸区間の開業およびはかた駅前通り再整備(23年3月)など、都市機能のアップデートが進んでいる。

明治公園
明治公園

 一方で、22年9月には現役世代を中心とした運動不足を解消するため、自然と楽しく体を動かしたくなる仕組みや仕掛けがあるまちづくりに取り組む「Fitness Cityプロジェクト」が始動しており、博多駅周辺をパイロットエリアとして指定し、明治公園において立ち寄りたくなる公園づくりを進めることとしている。

 今回の同公園における未整備区域の整備においては、コンセプトとして「博多コネクティッドを踏まえた施設計画」および「Fitness Cityプロジェクトを踏まえた施設計画や運営計画」を提示。Park-PFI制度を活用して、九州の陸の玄関口である博多駅前に相応しい風格のある公園とするとともに、オフィスワーカーの憩いの場としていくことを目的としている。

管理運営開始は25年春 Park-PFI活用は続くか

 今回、Park-PFI制度を活用した公園整備・管理運営事業の事業者公募が行われる3公園では今後、いずれも朝廣和夫氏(九州大学大学院芸術工学研究院准教授)を委員長とし、公募実施の公園ごとに7名からなる提案評価委員での選定を経て、今年8月に優先交渉権者の決定・通知がなされる予定となっている。順当にいけば、管理運営の開始時期は東平尾公園(大谷広場)と清流公園が25年4月から、明治公園が24年度中(25年3月まで)。認定公募設置等計画の有効期間は、公募対象公園施設の設置管理許可における設置管理の開始日から最長で20年間となっている。

 福岡市では今回の3公園のほかにも、西南杜の湖畔公園(城南区)や水上公園(中央区)、高宮南緑地(南区)などでPark-PFI制度の活用による公園整備・管理運営事業の事業者公募を行っている。Park-PFI制度を活用することで、都市公園に民間の優良な投資を誘導し、公園管理者の財政負担を軽減しつつ、都市公園の質の向上、公園利用者の利便の向上を図ることが期待できる。一方で、民間事業者が運営する以上、その場所で収益を上げることができるか否かが最重要視されることになるが、たとえば公園内に飲食店などを誘致した結果、近隣の飲食店の客を奪ってしまうような結果になる懸念もある。単に公園を賑わせるだけでなく、その賑わいを周辺に波及させて、いかにエリア全体を活性化していけるかも、評価で重視すべきポイントになるだろう。

 今後、Park-PFI制度活用による3公園の整備・管理運営がうまく軌道に乗るかどうかが、市がその後もPark-PFI制度活用をさらに推進させていくかどうかの試金石となる。

(了)

【坂田 憲治】

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