2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

司法試験問題漏えいショック!揺らぐ制度の信頼

司法試験の遵守事項 司法試験の遵守事項

 司法試験問題の漏えい事件で、法務省が9月8日、司法試験考査委員の青柳幸一・明治大学法科大学院教授を国家公務員法の守秘義務違反の疑いで東京地検特捜部に刑事告発。法曹を養成し、法曹資格を与える制度の中核が不正にまみれ、司直の手が入る事態になった。

 試験問題漏えいの動機については、報道や憶測の範囲の情報が飛び交うに過ぎず、捜査機関による解明を待つのが筋だが、現時点では、法科大学院をあげて合格率を上げようという組織的な意図はうかがえず、青柳教授の個人的な人間関係・人間心理に端を発したもののように見受けられる。個人の私的欲求の結果としては、司法試験の信頼失墜という途方もない大問題に発展した。青柳教授は考査委員を解任された。受験生側も、漏えいをどこまで主体的に望んだのか不明だが、試験失格と今後5年間の受験禁止というペナルティは重かった。

 今年の司法試験は5月に実施された。青柳教授は、試験問題の作成や採点を行う考査委員に法務大臣から任命されていた。考査委員は司法試験ごとに任命され、青柳教授は長年にわたって務めてきており、問題作成の中心的役割を担っていたという。
 青柳教授は試験前に、教え子の受験生に論文式試験の公共系科目の憲法に関する問題を漏えいしていた疑いが持たれている。明治大学は8日、学長名で「司法試験制度の根幹を揺るがしかねない事態であると重く受け止めており、大学として関係者の方々に心よりお詫びを申し上げます」とお詫びを発表した。

 考査委員には、秘密漏えいしないことをはじめとする「遵守事項」が科せられている。遵守事項は、名目いかんを問わず、法科大学院修了予定者・修了生への指導を行わないとしたうえ、受験予備校、受験指導組織、司法試験受験を目的とするグループへの関与そのものを禁じている。「考査委員として問題作成・採点等に従事した司法試験の論文式試験について、その解答作成方法を指導したり、作成された解答を採点・添削指導したりすることはしない」とまで明記されている。
 ここまで細かいのは、2007年の慶応大法科大学院教授による答案練習会があったからだ。

 06年から実施されている新司法試験では、原則として法科大学院修了が受験資格となっている。法科大学院教授は、司法試験受験生を教える立場である。出ないのをあらかじめ知っている問題を教えたら意味はなく、出る問題の類似問題を教えたら漏えい疑惑を招く。制度上、教える立場と、問題作成・採点する立場の両立には無理がある。
 かつては、試験委員(現在の考査委員)は、司法修習所の教官など、受験生には“恐れ多い存在”が務めていたが、受験者数の激増(06年の約2,000人が10年以降は8,000人前後)を受けて、考査委員の人数も約130人にのぼるため、法科大学院教授が多数メンバーになってきた。近年、法科大学院教授を減らしてきているものの、大学の側も、選考委員になった教授を、法科大学院から他学部・大学院に配属を変えるなど、学生の指導から完全に外す厳格な措置を講じなければ、再発防止は不可能だ。

 青柳教授の刑事告発と同じ8日、司法試験の合格者が発表され、予備試験からの合格者が全体の1割を超した。法科大学院修了生の約7~8割が合格するという制度設計を目指したが、合格率が20数%に低迷。司法試験の信頼とともに、法科大学院を中軸にした新司法試験制度の根幹も揺らいでいる。法曹養成のあり方そのものの再検討が求められている。

【山本 弘之】

 

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