2024年10月07日( 月 )

迷走する居酒屋チェーンの雄(前)

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ワタミ(株)

 「和民」「わたみん家」などの屋号で全国展開を行う居酒屋チェーンのワタミ(株)。近年、「ブラック企業」のレッテルを貼られ、苦戦を強いられていた同社だが、2015年3月期連結決算で126億円の巨額赤字を計上した。同社は自己資本比率も1ケタ台まで低下。現在、事業の建て直しに向けて、さまざまな取り組みを行っている。

もともとはつぼ八のFC店。設立30周年を迎える

watami ワタミ(株)は、1984年4月に創業者の渡邉美樹氏が、飲食店の経営を目的に神奈川県横浜市に資本金500万円で設立した(有)渡美商事がルーツとなる。当初は、(株)つぼ八と居酒屋「つぼ八」のフランチャイジーとしての加盟店契約を締結していた。その後、独自の飲食店および居酒屋チェーンを展開する目的で、86年5月に資本金2,000万円でワタミ(株)を設立した。87年3月に事業の多角化と規模の拡大を目的に、渡美商事より営業権を引き継ぐ。

 設立当初は、つぼ八の店舗運営と自社でお好み焼き屋を展開。そのようななか、92年4月に「居食屋 和民」笹塚店をオープン。同年7月につぼ八のFC本部であるイトマン食品(株)との間で、93年9月までFC契約を解除し、13店舗のつぼ八を和民に順次変更する覚書を交わして、つぼ八13店舗を「和民」に変更。その後は首都圏を中心に店舗展開を進め、96年10月に株式の店頭登録、98年8月、東証二部に株式上場を果たし、2000年3月に同一部に指定替えされた。

 和民の全国展開に合わせて事業規模の拡大を図り、自社の農業生産法人の設立のほか、介護事業への進出。04年4月にワタミメディカルサービス(株)を設立し、介護事業への参入を本格化させた。

 08年には宅配事業を行う長崎の(株)タクショクを買収し、基盤を引き継いだ。香港や中国、台湾、シンガポールなどの海外にも100店舗以上展開するなど、13年3月期には連結売上高1,557億6,500万円、当期純利益80億2,100万円を計上するなど、順風満帆であった。

後を引くブラック企業の影響

 06年に同社は、勤務時間の端数切捨てで賃金未払いとして労働基準監督署から是正勧告を受けた。さらには08年に入社2カ月の女性従業員が自殺し、12年に労災認定を受けることになった。その後の調停が不調に終わり、訴訟にまで発展。裁判の過程がニュースなどで頻繁に報じられることで企業イメージを大きく落とした。また、この過程で創業者の渡邉美樹氏が11年4月の東京都知事選に出馬し落選。女性従業員の遺族への対応や発言をめぐり批判に晒された。

 これにより同社は、世間からは過酷な労働条件を強いられる“ブラック企業”の象徴と揶揄され、マスコミ報道をはじめ、インターネット上の過剰で過激な書き込みもあり、同社のイメージがさらに悪化した。これが影響してか、大卒の新卒採用も思ったようにはできず、目標の半数しか採用できない事態となった。
 ブラック企業のレッテルによる影響が採用をはじめ、客足にもボディーブローのようにじわじわと現れ始めてくる。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:清水 邦晃
所在地:東京都大田区羽田1−1−3
設立:1986年5月
資本金:44億1,028万円
業 種:飲食店経営
売上高:(15/3連結)1,553億1,000万円

仕入先:酒類及び食料品卸
販売先:グループ各社
取引行:横浜(蒲田)、みずほ(蒲田)、三井住友(蒲田西)、三菱東京UFJ(蒲田)

 
(後)

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