7月の豪雨で被害、1日も早い復旧・復興へ
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うきは市長 高木 典雄 氏
7月7日から10日にかけ、今年も九州の広い範囲で豪雨被害が発生した。福岡県では久留米市をはじめ、隣接するうきは市でも大きな被害が発生。うきは市の被害総額は23億円に上るともいわれている。被災の具体的な状況や今後の復旧・復興の在り方について、うきは市長・高木典雄氏に話を聞いた。
平坦部と山麓部で、短時間に集中降雨
──今回の豪雨災害による被害状況はいかがでしたか。
高木 うきは市はこれまで何度も豪雨被害を経験してきましたが、今回のそれは雨量が平坦部および山麓部の地域に短時間に集中したという点で、これまでとは状況を異にしています。とくに7月10日には、短時間に何度も線状降水帯が発生しました。多くの中小河川などが流れ込む巨瀬(こせ)川に雨水が集中したことで越水氾濫してしまい、国道210号の一部区間でも冠水となりました。また、下流の久留米市田主丸地区では、水深が1mになるなど、冠水による大きな浸水被害が発生しました。
被害状況は、住宅が浸水による半壊50棟、床上浸水42棟、床下浸水約500棟となり、道路や河川など公共土木施設は345カ所、農地・農業用施設・林道は278カ所、商工業は108カ所、公共施設などは24カ所で被害が出ました。8月22日時点での被害総額は約23億円となっています。ただ、初動対応で人命被害がなかったこと、土砂崩れによる河道閉塞を食い止められたことなどは不幸中の幸いでした。
──復旧状況はいかがでしょうか。
高木 当初は災害ガレキの撤去やボランティアセンターの設置、救援物資の配布、高齢者を中心とする健康管理などに、市の職員総出で取り組みました。ただ、現状(9月7日時点)はまだ応急対応の段階です。土砂崩れが発生した道路は、やっと片側通行ができるようになったところです。何より頭が痛いのは、復旧・復興のための財政措置です。被災直後に国により激甚災害指定を受けましたが、被災規模が一定以上で災害査定を受けたものが対象となるため、被害状況によっては市税で対応するしかないケースが多くあるからです。
収穫に危機感 名産のフルーツ
──とくに何が問題となっていますか。
高木 うきは市は「フルーツ王国」といわれるほど果実などの農業が盛んですが、農業機械が壊れてしまったことで、「このままでは離農するしかない」と話す市民が数多くいます。さらに、果樹園に土砂が堆積した場合、時間が勝負。ブドウやキウイフルーツは根が浅いことから、土砂に長期間埋もれると、今後収穫できなくなってしまう懸念があるのです。これからの季節は梨や柿のシーズンですが、土砂崩れのため果樹園に入ることができず、消毒がままならない状況で、収穫できたとしても市場価値が大きく下がってしまう可能性があります。
また、市内の多くの事業所がオフィス機器などの浸水被害に遭っており、その対応も急がなくてはなりません。国や県、他の自治体の協力を得て取り組んでいますが、被害の査定がまだ進んでおらず、本格化するのは9月末からになるものとみられます。査定がすべて完了するには、早くても今年いっぱいとなる見通しです。市では、被災された農家が自力復旧する場合、たとえば重機のリース代といったような費用について、8割補助を行うなど対応を急いでいるところです。
自助、共助、互助の体制づくりを推進
──本格的な復旧・復興について、どのようなビジョンをお持ちですか。
高木 今後のまちづくりの在り方と絡めて、構想を練っているところです。災害が発生した場合、公的機関による救助活動、いわゆる「公助」には限界があり、自分自身や家族による「自助」、友人や近所など地域の方々による「共助」「互助」での救助活動や助け合いが大変重要になります。そのためには、常日頃からの関係づくりが大切でありますが、その点今回の災害では、皆さんのご協力により比較的円滑に進んだのではないかと思っています。10月から11月ごろに、各地区自治協議会、民生委員、自主防災組織代表者、行政などに参加をいただき、今回の反省とともに、次に向けて協議する場を設けたいと考えています。
11年前の九州北部豪雨は、私が市長に就任する前日に発生しました。そのため、市長就任後の3年間は、政策目標として掲げていたことを封印し、復旧・復興活動に取り組んできたところです。そしてまた、再び被害が出てしまったわけですが、11年前を教訓にしっかり復旧・復興に取り組んでまいります。
──まちづくりについては、いかがでしょうか。
高木 うきは市は九州、福岡県内でもとくに自然資本が豊富で、歴史的な遺産や観光名所、温泉などにも恵まれています。昨年にはラグビーチーム「ルリーロ福岡」が発足して活躍しており、8月末には世界的な宿泊特化型ホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット・福岡うきは」が、道の駅うきはに隣接してオープンしました。さらに10月には国際サイクルロードレース「マイナビ ツール・ド・九州2023」が行われ、市内を走行します。
こうしたすばらしい自然資本と新たな観光資源を生かしつつ、そして1日も早く元の生活に戻れるよう復興という視点で、今後のまちづくりを進めていきたいと考えています。
【田中 直輝】
<プロフィール>
高木 典雄(たかき・のりお)
1951年8月、福岡県浮羽郡浮羽町(現・うきは市)出身。74年、福岡大学商学部2部を卒業。70年に建設省九州地方建設局(現・国土交通省九州地方整備局)に入省。94年から98年まで、建設省九州地方建設局から浮羽町助役に出向。その後、福岡国道事務所副所長や九州地方整備局調査官、九州地方整備局総括調整官などを歴任後、2012年3月に国土交通省を退官。12年7月にうきは市長に初当選し、現在3期目。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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