2024年04月28日( 日 )

戦争推進の旗振るメディアの愚

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、「米国はあらゆる面において横暴なダブルスタンダードで臨んでいる。そしてそれに何らモノをいうことができない岸田政権の外交姿勢は『価値観外交』を標榜すべきではない」と批判した11月11日付の記事を紹介する。

 一部の人々は以前から明確に認識しているが、多くの人が気付いていないこと。

 米国のダブルスタンダード。

 「力による現状変更」を悪であると認定し、ロシアを非難する。ロシアは「力による現状変更」を実行しているわけではない。ウクライナの東部地域は住民の圧倒的多数がロシア系住民。ロシア語を話し、ロシア聖教徒であり、ロシア人である。

 2014年に暴力革命政権が樹立されてロシア系住民支配地域に対する大弾圧が実行された。人権侵害、虐殺行為が展開された。ロシアはウクライナ東部のロシア系住民の安全確保のために行動した。東部2共和国が独立を宣言。ロシアは2共和国を国家として承認し、2共和国の要請を受けてウクライナ系住民の生命と人権を守るための軍事作戦を展開した。ロシアはウクライナ戦乱について、このような説明を示している。

 そもそも、アメリカ合衆国が「力による現状変更」なのではないか。アメリカ大陸には先住民が居住していた。このアメリカ大陸に侵略し、先住民を排除してアメリカ合衆国を創設したのではないのか。米国は米国創設の歴史的経緯を振り返るべきだ。

 パレスチナの地にはアラブ人が居住していた。その地にイスラエルが1947年、新たに国を創設した。パレスチナの地の53%をイスラエルが奪い、新しい国を創設した。これを「力による現状変更」と呼ばずして何と表現できるのか。

 そのイスラエルのアミハイ・エリヤフ遺産相がパレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスとの戦闘に関して「核兵器使用が選択肢の1つだ」と発言した。

 核拡散防止条約(NPT)は戦勝5カ国(P5=国連安保理常任理事国)である米・英・仏・露・中の核兵器保有を認め、これ以外の国の核兵器保有を禁止する条約。不平等条約の典型でもある。この条約を米国は批准している。P5以外の国が核兵器を保有することを許さない。

 このことから、米国はイラン、イラク、北朝鮮などに対して激しい行動を示してきた。イスラエルはNPTに加盟していない。そして、イスラエルはすでに核兵器を保有していると見られている。しかし、核兵器を保有していることを明言してはいない。イスラエルの核武装疑惑があるなら、米国はイスラエルに対して核放棄を求めなければならない。

 ところが、米国はイスラエルの核武装疑惑を問題にしない。イスラエルが核兵器を保有していることは「公然の秘密」と化している。ウクライナの民間施設が軍事攻撃を受けたことを米国メディアは繰り返し映像で配信した。

 10月7日、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスが前例のない対イスラエル軍事攻撃を実行した。これに対してイスラエルがハマスに対して宣戦を布告し、パレスチナに対する軍事攻撃を行っている。

 この軍事攻撃において、パレスチナ自治区の文民施設が攻撃対象とされている。ウクライナの文民施設が攻撃を受けたことについて、米国を中心とするメディアは、「戦争犯罪行為」であると激しく非難し続けてきた。同じロジックで考えるなら、現在のイスラエルの対パレスチナ攻撃は、ほぼ全面的な「戦争犯罪行為」である。

 しかし、米国を中心とするメディアはイスラエルの戦争犯罪を激しく糾弾していない。しかし、世界中で、事実を知る、イスラエルの暴挙を許さないとする人々が立ち上がり、抗議活動を拡大している。しかし、日本の大手メディアは、このことを大きく取り扱わない。

 すべてがダブルスタンダードなのだ。これを「米国の横暴」と呼ぶ。

 問題は、その「横暴な米国」に対して何もモノをいえない日本。「価値観外交」を叫ぶ岸田文雄首相はいまこそ「人権」「民主主義」「法の支配」を掲げて米国のダブルスタンダードを声高に非難すべきだ。それができないなら、今後は「価値観外交」などという言葉を用いるべきでない。

※続きは11月11日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「戦争推進の旗振るメディアの愚」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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