2024年06月18日( 火 )

ゼロゼロ融資の元本返済が本格化、全銀協、私的整理ガイドラインの改正へ

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債務整理の迅速化

    中小企業の倒産の増加に備え、地方自治体は迅速な再生処理ができるように仕組みを整えている。2022年7月、福岡県は信用保証協会が金融機関の融資に付けた保証債権について、知事の決裁で債権放棄できる条例を整備した。

 この条例は福岡県信用保証協会が中小零細事業者に対する求償権を行使して回収金を取得した場合、福岡県の回収納付金を受け取る権利の放棄を知事決済で可能とするもの。保証協会融資では、債務者の返済が滞った場合、保証協会が代位弁済を行う。肩代わりの原資は税金となるため、求償権の放棄はこれまで地方議会での承認が必要だったが、中小企業庁や金融庁、総務省は知事の権限で債権放棄を認めることができる条例の制定を求めていた。

前代未聞の破綻件数

 中小企業の債務整理に関わる社会システムの迅速化は、その必要性がこれまでにないボリュームで生じることを意味している。保証協会が保証する債務残高は22年度に40兆円と、コロナ禍前の19年度の20兆円から2倍に膨らんだ。今は無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化したタイミングで、物価高も重なって倒産が増える傾向にある。今年に入って中小企業の倒産は10月までに7,069件に達し、倒産件数はコロナ禍前の水準を超えるベースで推移している。だが、この倒産件数も費用をかけて法的手続きがとられたものに限られるため、破綻の実態としては氷山の一角に過ぎない。

私的整理による廃業時代へ

 金融庁は11月27日、全国銀行協会など金融機関の代表と中小企業の資金繰りについて話し合う意見交換会を開いた。金融庁は金融機関向けの監督指針を2024年春に改正し、中小の事業再生へと支援の軸を移す。鈴木俊一金融相は「資金繰り支援から、事業者支援に移行する必要がある」と述べ、全銀協に対して中小零細企業の私的整理ガイドラインの改正を要請する見通しだ。

 私的整理は、倒産の危機に瀕した事業者について、破産法・民事再生法といった法的倒産処理手続によらずに、債権者と債務者との協議によって、債権債務関係を処理する手続のこと。一般的には、対象とする債権者は金融機関のみとして、一般商取引債権者やリース債権者は取り込まれない。現状では、金融機関が債権放棄する合理性は、税務上損金算入が認められ、債権者は債権の無税償還ができる点にある。株主は出資額の範囲で有限責任をはたすことになるが、経営者は個人保証による無限責任が残る。私的整理ガイドラインの改正に注目したい。

【児玉 崇】

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