2024年05月27日( 月 )

能登地震で高まる万博中止論──維新が直視すべき夢洲震災リスク(前)

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不都合な真実から逃げる維新

    能登半島地震の発生を受けて、再び万博中止や延期あるいは縮小の声が強まっている。

 吉村洋文大阪府知事は1月4日の囲み取材で、能登半島地震で万博中止を求める声が出ていることについて問われ、「万博と復興支援が二者択一の関係ではない。なぜ万博と復興支援が二者択一なのか」と答えたが、元新潟県知事の米山隆一衆院議員(立民)は、以下のように反論した。

 「復興に大量の人員・重機・資材を投入することになる以上、万博会場建設を今のコスト・期限に完成することは一層困難になります」。「万博は、建設費をさらに増加させて復興のための建築リソースを奪うか、それができないなら(万博)建設計画の下方修正、開催日の延期を真剣に検討すべき時だと思います」。

 建設業界のリソースは無限ではないことから米山氏は、万博会場建設と震災復興には関係性があり、両立困難と見て縮小万博や延期の検討を提案したのだ。もう一歩踏み込んで万博中止論にまで言及したのが、れいわ新選組の山本太郎代表だ。被災地入りを5日に報告、国や石川県への4項目の提言を7日に発信したが、「最悪の事態を想定しているか」と題してこう発信した。

 「能登半島を含む石川県全域が豪雪地帯である。(中略)降雪、積雪のなか、道路の修復や復旧作業は困難。加えて、通常時、除雪作業は地元建設業者なども請け負うという除雪作業と復旧作業の両輪を回せると考えるのは現実を見ているとはいえない。(もちろん全国の建設業者を大々的に雇って行うならば可能だろう。その場合、当然万博は中止、徹底した積極財政で被災地も支える覚悟が必要だ。)」(7日のX)

 これにケチをつけたのが、維新政調会長の音喜多駿参院議員。「被災地に決して小さくない悪影響と負担を与えた彼から発信された情報や提案が、ことごとく政府や県知事・関係者が把握している域を出なかったことに、心から愕然としています」と批判したが、詐欺師紛いのスリカエ論法とはこのことだ。

 そもそも「除雪作業と復旧作業両立のために万博を中止、建設業界総動員体制を取る」という山本代表の提案は、国や県が検討表明すらしていない独自のものだ。仮に「把握」していたとしても「発表(発信)」しなければ政策実現することはない。「発信」と「把握」をすり替えて山本代表の政策提言が無意味と印象づけ、被災地に悪影響を与えたと決めつけたのだ。

 詐欺師顔負けの手口(世論誘導術)を駆使する音喜多氏には「心から愕然」とするが、維新が深く関係する万博中止論をスルーするのは姑息としか言いようがない。維新推薦候補が最下位に沈んだ「江東区長選(投開票日12月10日)」で応援演説をした音喜多氏を直撃、「万博問題、逆風になりませんか」と声をかけたが、「今日は江東区長選で来ているので。頑張ります」としか答えなかった。「身を切る改革」を掲げているのに維新は会場費上振れを容認、「国民の身を切らせるバラマキ政党」と化していることに対して釈明をしようとしなかった(直撃動画は「フランス10」を参照)。

 都合が悪いこと(不都合な真実)から逃げる姿勢は、万博中止論をスルーした能登地震でも同じだった。しかも維新の国会議員なら当然、注目すべき震災関連記事、「阪神大震災級の強い揺れ 軟弱な地盤、被害拡大か 能登半島地震」と銘打った1月4日の毎日新聞についての発信がないのにも愕然とする。毎日新聞の当該記事は軟弱地盤の「夢洲」(大阪湾の人工島)で開催される万博に警告を発しているような内容になっていたのだ。

 「3日に珠洲市などを現地調査した金沢大の村田晶助教(地震防災工学)は、『被害を受けていない家屋を見つけるのが難しく、23年5月の地震(最大震度6強)の被害をはるかに超えている。1階部分が潰れて屋根しか見えない家もある。崩れた家が道を塞ぎ、車が走行するのも難しい』と緊迫した様子で語った。村田助教によると、被害が大きい珠洲市正院町は河川による堆積平野にあり、地盤が軟弱で地震の際に揺れやすい」

 共に地盤が軟弱な珠洲市正院町と夢洲が二重写しになる。万博開催時に南海トラフ巨大地震が起きたら珠洲市正院町と同様、大きな被害が出る近未来図が目に浮かぶ。

 山本代表の提案にケチをつける暇があったら音喜多政調会長は、珠洲市正院町の現地視察や村田助教ら専門家への聞き取り調査をしたうえで、「軟弱地盤の夢洲での万博開催リスクの再検証」を維新ツートップの吉村知事や横山市長に提案すべきではないのか。国民の命を守る役割を担う国会議員で、しかも万博推進の維新所属議員なのだから、当然の責務のように思われる。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

(後)

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