2024年05月07日( 火 )

国民に寄り添う政治の原点

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は日本政府の経済運営が国民の所得向上に寄与せず、国民の生存権を脅かしていると批判した2月8日付の記事を紹介する。
 「国民に寄り添う政治」「温かな心のある政治」に関して東アジア共同体研究所主宰の「UIチャンネル」での鳩山友紀夫元首相と植草氏の対談「いま日本政治に求められるもの」もぜひご覧頂きたい。

日本経済の停滞が続き、国民の生活の苦しみが増している。1995年を100として名目GDPが2022年にどの水準に変化したか。ドル換算値で比較してみる。

米国の名目GDPはこの27年間に3.33倍に拡大した。中国の名目GDPは27年間に24.47倍に拡大した。日本の名目GDPは27年間が経過して0.76倍に縮小した。

日本経済は過去30年間成長していない。2月6日に昨年12月の賃金統計が発表され、2023年の労働者1人あたりの実質賃金が前年比2.5%減少したことが明らかにされた。日本の労働者1人あたりの実質賃金は1996年から2023年までの27年間に1996年から2023年までの27年間に16.7%も減少した。

アベノミクスが始動したのは2013年で、2012年から2023年までの11年間を見ると、実質賃金は8.3%減少した。国税庁発表の2022年民間給与実態調査結果によると、1年を通じて勤務した給与所得者の51.2%が年収400万円以下、20.5%が年収200万円以下である。内閣府発表の年次経済財政報告によると、全世帯の所得中央値は1994年の505万円から2019年の374万円に131万円減少した。成長を続ける世界経済のなかで日本経済だけが成長できず、日本の労働者の所得は減り続けている。

かつての分厚かった中間所得者層は消滅し、圧倒的多数が下流に押し流された。2013年からアベノミクスが推進されたが、これによって実現したのは企業利益の拡大だった。法人企業当期純利益は2012年から2017年までの5年間に2.4倍に激増した。経済が成長しないのに企業利益だけが倍増した。

これは労働者の分け前が減ったことを意味する。経済が成長しないなかで労働者の分配所得が減り、企業利益が倍増した。安倍首相は「成長戦略」を唱えたが、安倍首相が唱えたのは「大企業利益の成長戦略」であり、「労働者不利益の成長戦略」だった。

20世紀にクローズアップされた基本的人権が「生存権」である。市場経済=市場原理は弱肉強食の社会をつくる。その結果、多くの人々が生存の危機に直面する。これを「市場の失敗」と捉えて問題を解決する方策が考察された。

その結果として浮上したのが「生存権」の考え方。日本国憲法にも明記された。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

※続きは2月8日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「国民に寄り添う政治の原点」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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