2024年04月29日( 月 )

議会の役割が問われる久留米市議会 請願や意見書が提出できないとの批判の声

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 2月下旬から福岡県議会をはじめとする県内約60の自治体の議会で、3月定例会が行われている。3月に入って開会する議会もあるが、2月下旬に開会した議会では一般質問が行われている議会もある。

 福岡県南の中核都市である久留米市では議会が2月20日に開会し、会議録署名議員の指名や議案説明が行われた。28日まで考案日となっており、29日から一般質問が行われる。その久留米市議会で今、議会の役割が問われる問題が起こっている。

 同市議会は定数36人で、従来まで7つの会派があった。このうち4つの保守系会派に計22人所属している。昨年5月、結成以来の14年にわたる最大会派で原口剣生自民党県連会長に近い保守系の「明政会議員団」が分裂し8会派となった。また、これにより鳩山二郎衆議院議員に近い「久留米たすき議員団」が最大会派となった。

 旧明政会議員団は「きずな議員団」と「立志会議員団」の2会派に分かれた。関係者によると、「久留米市は広域にわたり、選挙区・支持基盤が重複する議員が多く、対立ではなく引き続き議会運営や県議選などでは協力関係にある」という。

 久留米市議会は、長年、鳩山二郎衆議院議員を支持する旧明政会議員団系会派と、自民党県連に近い会派とが議長ポストをめぐって対立してきた経緯がある。保守系議員が旧社会党系議員の賛同を得るために、政策的譲歩を行うなど激しい駆け引きが展開されてきた。

 昨年5月の議長選に、きずな議員団の吉富巧氏と、久留米たすき議員団の甲斐田義弘氏の2人が立候補したが、吉富氏が20票、甲斐田氏が13票で吉富氏が議長に選出された。

 議長選の遺恨がいまだに残っており、市民からの請願について会派間の調整がつかないために、請願を受理し審議することができない状況にあるという。「不採択になるくらいなら、受理しないほうが良い」との考え方があるためだ。

 複数の保守系議員が、データ・マックスの取材に対し「誠に恥ずかしい話ですが、会派の対立で天皇陛下の御即位の賀詞決議も流れました。新疆ウイグル自治区の人権問題やコロナワクチンの副反応被害に対する請願についても、紹介議員(請願書に署名、記名捺印する議員)になれない状況があります」などと語った。

 地方議会の声を国会や関係省庁に届ける意見書についても、久留米市議会は年4回ある議会を通じて1、2本程度にとどまっている。

 福岡市議会においては、定例会ごとに何らかの意見書や決議が起案され、提出されている。昨年12月定例会では、「大阪・関西万博の中止を求める意見書案」が自民・公明などの反対で否決されたが、「ガザ地区における人道的休戦を求める決議案」は全会一致で可決している。

 請願は、国民に認められた憲法上の権利の1つであり、国や地方自治体に意見表明を行うものだ。久留米市議会のホームページを見ても「どなたでも提出できます」と明記されている。会派の考え方があるにしても、教育や人権問題に対する請願の提出ができないのは、不可解である。

 昨年の通常国会において地方自治法が改正され、地方議会に対する住民からの請願書の提出や、国会に対する地方議会からの意見書の提出などのオンライン化が可能となった。請願書のオンライン提出は、全国都道府県議会議長会などが要望していたものだ。

 久留米市議会に限らず、市民の要望・意見を聴くといいながら、市民が切実な思いを込めた請願や陳情を適正に取り上げない地方議会は少なくない。裏金問題で国会に注目が集まるが、改めて地方議会の役割とは何か、議員1人ひとりが考えるべきである。

【近藤 将勝】

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