2024年10月09日( 水 )

地場不動産会社が注目する「那の津」のポテンシャル

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大きく変わった、築港本町・石城町

(株)トリビュート    「築港本町や石城町の地価は、10年前から比べると3倍から10倍になりました」──福岡市内を中心に不動産売買などを手がける(株)トリビュートの田中稔眞社長は、そう話す。近年、天神や博多駅に近いエリアでは、賃貸マンションなどを中心に不動産開発が活発になり、まちの新陳代謝が行われてきた。開発が開発を呼び、それまで低層の住宅や倉庫ばかりだったエリアに高層の賃貸マンションが建ち、コンビニなどの店舗ができ、賃貸需要も増加することで、収益物件の開発がさらに活発となる現象が発生してきた。

賃貸マンションの開発で変貌した築港本町
賃貸マンションの開発で変貌した築港本町

    「大手企業や海外投資家は東京・大阪に加え、福岡に注目しています。福岡市は人口増が続いており、天神ビッグバンも目に見えて進んでいることが最大の要因となっているようです」とトリビュートの執行役員統括部長・永田誠氏は分析する。また、「開発余地のある天神・博多駅の周縁ではそれがより顕著に表れており、築港本町や石城町はその代表例といえるでしょう。また、当社が実際に関わった事例でいうと、約10年前に仕入れた築港本町の土地は、今では400万円くらいで取引されるケースも少なくありませんが、当時は3分の1から10分の1で取得することもできました」と続けた。

 トリビュートでは、約5年前に長浜エリアでも賃貸マンションを取得していたが、当時でさえ引き合いは多く、仕入れから数カ月という短期間での売却をはたしていたという。「かつて、那の津通りを越えての分譲マンション開発はあまり考えられませんでしたが、今となっては十分考えられるようになりました。解体が進められているカスタリア大濠ベイタワーの跡地も開発されるでしょうし、さらにまちが変貌していく可能性は高いと思います」(永田氏)。

規制外れれば「化ける」、天神2km圏内・那の津

 そして、未来の投資先として注目しているのが、「那の津エリア」だという。同社・田中社長は次のように話す。

 「那の津などの臨港地区では、建物の開発に規制がかかっており、分譲マンションやオフィス、賃貸マンションなどは開発が抑制されています。その結果、売地があっても価格は大きく抑えられており、取引も極少数です。那の津エリアは臨港地区のなかでも天神に近く、規制がなくなれば大きく化ける可能性があります」。

 那の津エリアは、地下鉄・天神駅から最も離れているところでも2km程度と近く、交通インフラが整備されれば、距離的には高砂エリアと同程度のため、大きな可能性を秘めているのだという。「大規模な開発をするとなれば、10年以上の時間が必要でしょうが、それでもほかの都心部に比べれば地権者の数も少なく、比較的開発はスムーズに進むのではないかと見ています」(田中社長)と続ける。整備はバスなどの交通インフラだけでなく、信号機の増設をはじめ少なくない投資が必要だろうが、成長を目指す福岡市がこれほど都心部に近い湾岸エリアに開発規制を残したままにしておくメリットは、少ないように感じる。

 規制がかかった状態でも、坪単価200万円程度で売買される那の津エリアの不動産。現状の用途地域は商業地域と準工業地域で、容積率は300~400%となっている。仮に規制がなくなれば、容積緩和の余地もあり、売買価格は800万円/坪を超えてもおかしくない。

 現在、福岡市の都心部において、海を望むには(一部を除き)都市高速道路が必ず視界に入る。たとえば、那の津エリアの開発規制が外れ、高層マンションやオフィス・ホテルが開発されるとなれば、都市高速道路の外側にあるため、福岡では希少なオーシャンビューの建物を建てられることとなる。海岸線は公園として整備してもいいだろう。百道浜エリアとはまた違った立地であり、福岡の魅力向上に寄与するエリアとして生まれ変わるポテンシャルは十分にあるはずだ。

那の津通り沿いの分譲マンション
那の津通り沿いの分譲マンション

【永上隼人】

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