2024年04月26日( 金 )

TPP違憲訴訟、原告の意見陳述を封じる?(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

政府の日本語訳は条約解釈に何の影響もおよぼさない
午後4時からは、「TPP交渉差止・違憲訴訟の報告会」と「韓米FTAの報告会」が合流、衆議院第一議員会館の多目的ホール満席の250人を超える参加者が集合した。本日の裁判報告の後で、フロアーの参加者と原告弁護士団体、韓米FTA反対弁護士団体のソン・キホ団長とのQ&A移った。レベルの高い意見が数多く出て予定を45分超過した。

Q 「TPPの英文公開文書を見ると、正式文書は英文で、フランス語とスペイン語も付けると書いてある。日本語は入っていない。政府が誤訳をしても責任をとる必要がなくなるのではないか?」


A(三雲崇正弁護士)正文でないということは、政府が訳文を作ったとしても、そこに書かれてある内容は条約の解釈に何の影響も及ぼしません。政府は都合の悪い条文については、国民に説明する過程で、少し丸めた表現、柔らかい表現などをすることは十分想定できます。したがって、政府の訳が出た時点で、もう一度公表されている英文としっかり照合した上で、対応していかなければならないと考えています。

Q「韓国では、米韓FTAの関係で、学校給食にどのような影響が出ていますか?」


A(ソン・キホ弁護士)各地方自治体の市長、教育長などの考えで異なり条例は統一されてはいません。「遺伝子組み換え食品(OGM)の反対、地産地消」の住民運動も起こりましたが、学校給食から米国企業が排除されるのを嫌う米国が猛反対しました。それ以降、条例ではOGMなどの固有名詞は入れず、“安全な”食品などという曖昧な表現が多くなっています。
TPPは米国にすごく有利な“構造的”不平等条約
なぜ、このような裁判が起こっているのか。それは、日本国においては「条約は法律に優越する」効力が認められているからである。つまり、TPPが締結されると、グローバル企業の経済活動の自由と利益を保障するために、TPP条項にしたがって日本の国内法が全面的に書き換えられる可能性がある。

しかし、米国はそうならない。ここにTPPが“構造的”不平等条約である根拠がある。「TPP交渉差止・違憲訴訟」の原告が裁判所に提出した訴状のなかには、「米国では、TPP協定を締結しても、議会が国内法制を変える義務を負わない仕組みになっています。アメリカ合衆国では、通商を規制する権限(つまり、貿易協定を締結する権限)は議会に属するとされており、議会の専決事項になっています」とはっきり書かれている。
これは何を意味するかと言うと、訴状にはさらに「米国では通商協定と法律が同等の効力を有するので、議会は通商協定に拘束されることなく、自由に法律を制定できます。通商協定と法律の間では後に制定された法律の方が優先する関係になります。つまり、米国は議会が変えたいと考える法律は改廃しますが、通商協定の国内法としての効力は無効化することができるのです」と書いてある。


(了)
【金木 亮憲】

 

関連記事