現職・新人13人が名乗りを上げた福岡選挙区、全国有数の激戦に

 参院選が3日公示され、九州唯一の複数区でもある福岡県選挙区(改選数3)には現職3人・新人10人が立候補した。投票日(20日)までの17日間、各地で激戦が繰り広げられることとなる。公示日の3日に取材した各陣営の動きをお伝えする。

現職3人は強い危機感

 2016年の定数改正で3に増えて以降、福岡県選挙区は、自民党・公明党・旧民主党(16年は民進党、その後は立憲民主党)による「指定席」となり、「プラチナチケット」とも呼ばれてきた。

 しかし、昨秋の衆院選で自民・公明が過半数割れし少数与党となるなか、新興勢力である国民民主党や参政党などが台頭。「プラチナチケットではなくなった」(立憲関係者)との声もあり、自民・公明・立憲の各陣営は危機感を募らせている。

自民現職・松山政司氏

 自民現職で、党参議院幹事長を務める松山政司氏は、福岡・北九州・久留米の3会場で出陣式を行った。午後1時からJR小倉駅近くのホテルで行われた出陣式には、大家敏志参議院議員をはじめ、北九州市や筑豊・京築地域の地方議員、各種団体関係者など約600人が集まった。

    松山氏は「春闘33年ぶりという高水準の賃上げを実現させることができた」と語り、「中小・小規模事業者が物価高に負けない賃上げに全力で取り組んでまいります」と訴えた。国民生活に対する対応として減税論もあるなか、「暮らしを支える物価高対策はスピード感が重要」として、「現金給付を選択した」「来年も必要なら給付をやればいい」と説明。「ポピュリズム的な政党に政治を任せられない」と強調し、「粉骨砕身、全力で戦ってまいりたい」と決意を述べた。

立憲現職・野田国義氏

 立憲現職の野田国義氏は、福岡・天神や小倉駅前で街頭演説を実施。午前11時からの天神での演説には、古賀之士参議院議員や堤かなめ衆議院議員のほか、同党所属の県議や福岡市議、連合福岡の藤田桂三会長らも駆けつけ、野田氏への支援を呼びかけた。
    「国政は誰のものでもない。主権者である国民のためにある」と述べたうえで、「今の政治は何もしない」と自民・公明を批判。「食料品の消費税をゼロにする。我々はできることをすぐにやっていく」と強調。「12月に2万円給付を行うと石破首相は言ったそうですが、できることはすぐやることが国民の暮らしを守ることだ」と語った。

 また企業・団体献金について、「政策をゆがめているのが企業献金であり、必ず企業献金を禁止にしてみせたい」と訴えた。

公明現職・下野六太氏

 公明現職の下野六太氏は、福岡市内で出陣式を行い、JR博多駅前で第一声を上げた。公明党所属の地方議員のほか、政界引退を表明している山口那津男・元代表も応援に駆けつけた。

    出陣式で下野氏は、ひきこもり対策に取り組んできたことに触れ、「この仕事を途中でやめるというわけにはいきません」と語り、「もう一度国政に送り返していただき、この仕事を続けさせていただきたい」と訴えると、多くの拍手が起こった。

 国民生活について「今、皆さんが悩んで苦しんでいる一番の問題は物価高」と述べ、「お米の備蓄米の放出を求めたのも公明党である」「輸送コストの軽減に国交省にも協力いただいた」と、国土交通大臣を公明党議員が担っている意義を訴えた。

 また党の公約に掲げる減税と給付をセットで行う方針についても、「(現金)給付は“ばらまき”との批判もある。選挙のためにするというわけではない」と強調した。

参政新人・中田優子氏

 現職の3人に対し10人の新人が挑むなか、最近の世論調査で支持率が急伸しているのが参政党である。

 参政新人の中田優子氏は、地下鉄・中洲川端駅近くで第一声を上げた。参政党所属の新開裕司・福岡市議会議員も応援に駆けつけた。

    中田氏は「日本がいかにこの30年で衰退を続けてきたか」と述べ、「国民がこれほど苦しんでいる国は先進国では日本だけだ」と指摘。

 「政治が国民の方を向いていないのであれば普通のお母さんが声を上げないと、この国は変えられない」「段階的な消費減税と積極財政で日本人を豊かにすることを参政党は掲げており、参政党が飛躍しなければ本当に日本は衰退してしまう」と支持を呼びかけた。

国民新人・川元健一氏

 昨秋の衆院選で、躍進した国民民主党。国民の新人・川元健一氏は、午前10時45分からJR博多駅前で第一声を上げ、福岡県出身で比例区から立候補している薬師寺道代氏も隣に並んだ。

 川元氏は「手取りを増やす夏にする。この福岡から政治を変えてもう一度日本を豊かに経済成長して、毎日が豊かになるそんな日本を取り戻す」と中間層だけでなく、保守層も意識した発言でアピールした。

 「減税によってこの国の経済をしっかりとまわしていくことから始めたい、現金給付よりも、働いている本当に苦しい皆さんに取りすぎた税金をお返しすることでしっかりと支えたい」「経済成長・将来への投資・自分の国を自分で守る国民民主党に皆さんの願いを託してください」と支持を訴えた。

れいわ新人・沖園理恵氏

 「消費税を廃止する」ことを掲げた山本太郎代表率いるれいわ新選組は、組織・団体の支援を受けず、草の根選挙を展開している。れいわの新人・沖園理恵氏は午前11時から福岡市役所前で第一声を上げた。

 沖園氏は「どこの党も消費税を焦点にあてているが、多くの人が消費税が原因だとわかっている」としたうえで、「国民の10人に6人が生活が苦しいと訴えている一方で、世界で二番目にお金持ちが多い国」と指摘。「格差社会をつくり出したのは今までの古い政治や政治の失敗であり、皆さん政治を変えていきましょう」「もし皆さんが投票に行かなかったら何もしなかったことと同じで、このままでいいという意志表示になってしまう」として投票に行くよう呼び掛けた。

共産新人・山口湧人氏

 リベラル系の老舗政党、共産党は支持者の高齢化などで党勢の拡大が課題となっている。

 共産新人の山口湧人氏は、福岡・天神で第一声を上げた後、福岡市内を遊説。午後4時からJR博多駅前で街頭活動を行い、小池晃・書記局長も駆けつけた。

    山口氏は、「消費税は一律5%に減税すべき」としたうえで、「大幅な賃上げが必要」として「最低賃金を時給1,500円に引き上げるべき」と主張した。

 また国民生活への影響が大きい医薬品などについても言及。「社会保障や医療費の削減を、自民・公明・維新・国民民主が主張しているが、本当にそれでいいのか」「自民党政治に変わる新しい政治を切り開く選挙に」と支持を呼びかけた。

その他の立候補者

 この他、日本誠真会の新人で元福岡市議会議員・冨永正博氏、NHK党の新人でコンサルティング会社役員・村上成俊氏、日本維新の会の新人でイベント会社代表の伊藤博文氏、日本保守党の新人でITエンジニアの森健太郎氏、社民党の新人で元県立高校教諭の那須敬子氏、チームみらいの新人でWEBエンジニアの古川あおい氏の6人が立候補している。

 福岡県選挙管理委員会によると、在外選挙人を含む県内有権者総数は422万7,649人(7月2日時点)。4日から期日前投票が開始され、福岡県内では157カ所の投票所が設置された。一部の投票所を除いて投票日前日の今月19日まで、午前8時半から午後8時まで投票を行うことができる。

 立候補者一覧は以下の通り。

(届け出順)
日本誠真会新人・元福岡市議会議員 冨永正博氏、
参政党新人・不動産会社社員 中田優子氏
NHK党新人・コンサルティング会社役員 村上成俊氏
立憲民主党現職・元八女市長 野田国義氏
国民民主党新人・元宇宙事業会社取締役 川元健一氏
公明党現職・元中学校教諭 下野六太氏
日本維新の会新人・イベント会社代表 伊藤博文氏
日本保守党新人・ITエンジニア 森健太郎氏
れいわ新選組新人・フードプランナー 沖園理恵氏
社民党新人・元高校教諭 那須敬子氏
チームみらい新人・WEBエンジニア 古川あおい氏
自民党現職・党参議院幹事長 松山政司氏
共産党新人・元福岡市議会議員 山口湧人氏

【近藤将勝】

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