城山観光、財務制限条項に抵触しながら復配 経常赤字が続くなかでの判断に異論も

 城山ホテル鹿児島を運営する城山観光(株)(本社:鹿児島市、矢野隆一代表)が、2025年3月期決算で6期連続の経常赤字を計上したにもかかわらず、5期ぶりに配当を実施することがわかった。この配当は、同社が金融機関との契約で締結している「2期連続で経常損益を損失としないこと」という財務制限条項に明確に抵触する状況での判断となった。

 同社は、子会社である(株)モリナガの売却益約26億6,500万円を特別利益として計上し、当期純利益を黒字に転じたことを根拠に、1株あたり6円(普通配当5円、60周年記念配当1円)、総額360万円(配当率12%)復配を決定。6月25日の株主総会では、一部株主から「本業が赤字のままでの配当は時期尚早ではないか」といった意見も出されたが、議案は賛成多数で可決された。

 出席者によると、同社は「償却前の損益は黒字に転じており、将来の収益改善が見込まれる」と説明。さらに、財務制限条項への抵触についても「決算見通しや今後の投資計画を金融機関に説明し、了承を得ている」と説明したという。

 なお、子会社売却代金のうち約19億8,000万円が借入金の返済に充てられたが、期末時点で168億円の借入金が残る。「配当は要らない。内部留保に充ててほしい」との声もあがったが、反対票は可決ラインに届かなかった。

 配当額が「大した金額ではない」ことを理由に賛成した株主もいたが、財務制限条項違反は企業の信用力や金融契約上の信頼性に関わる重大な問題であり、配当率12%についても疑問視する声が出ている。今後は、本業の収益改善と財務体質の再建が一層問われることになる。

 同社の25年3月期の実績は、売上高85億2,200万円、営業損失6,200万円(6期連続赤字)、経常損失1億4,800万円。ただし、特別利益の計上により当期純利益は17億3,200万円となった。

【鹿島譲二】

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