九州電力 次世代炉の新設を含めた原子力の「最大限の活用」を目指す

 九州電力(株)(本社:福岡市中央区、池辺和弘代表)は、原子力発電の新設を含むエネルギー構成の再構築に取り組む方針を明らかにした。

 19日に発表された「カーボンニュートラルビジョン2050」のなかで同社は、エネルギー供給面における電源の低・脱炭素化を推進するにあたって、次世代エネルギーである再生可能エネルギー、蓄電池、水素などの主力電源化を進めると同時に、原子力について「最大限の活用」を取り組みの目標とすることを表明した。

 具体的には、まず玄海原発や川内原発といった既設炉について、安全最優先と地域理解を前提に設備利用率の維持・向上に努めるとした。そして原子炉の新設についても触れ、将来的に安全性に優れた革新軽水炉やSMR(小型モジュール炉)といった次世代革新炉の新設や、水素製造に原子力エネルギーを活用することなどを検討するとした。資料内では触れられていないものの、原発の新設地としては、川内原発の敷地内が想定されているものと考えられる。

革新軽水炉 (例:SRZ-1200)
革新軽水炉 (例:SRZ-1200)
SMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)
SMR(Small Modular Reactor:小型モジュール炉)
高温ガス炉+水素製造(イメージ) 出所:九州電力資料
高温ガス炉+水素製造(イメージ)
いずれも出所:九州電力資料

 次世代炉について同社は、たとえばSMRについては、外部電源が不要な静的安全システムで、冷却材喪失といったリスクが原理的に排除されていることや、自然循環による冷却機能などを備えているとして、安全性と効率性の両立が可能であるとの認識を示した。また、原子力利用の前提となる高レベル放射性廃棄物の最終処分問題についても同社は、国の原子力発電環境整備機構(NUMO)による地層処分を想定するとしており、これらの説明を通して、改めて同社は、原子力が社会的課題を抱えつつも、脱炭素とエネルギーの安定供給を両立させる現実的な選択肢として積極的に評価する姿勢を打ち出している。

 また、その他電源についても、再生可能エネルギーは太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスの主要5電源に加え、蓄電池や揚水発電への投資を加速することや、北九州市響灘沖での洋上風力発電事業をはじめ、地域分散型のゼロカーボン社会実現に向けて地元自治体や企業との連携も強化するとした。また、火力発電については、再エネの不安定さを補う調整電源としての役割を維持しつつも、水素・アンモニアとの混焼や将来的な専焼化を進め、2030年までに非効率石炭火力のフェードアウトを目指すとしている。

 このようなビジョンの背景には、九州で高まる新しい電力需要がある。同社は「カーボンニュートラルビジョン2050」と合わせて、「九電グループ経営ビジョン2035」を公表し、九州において活況を呈している半導体工場やデータセンターの新設にともなう電力需要の増加、ならびに生成AIといった新たな技術による電化需要の高まりに対応するためとして、従来の電気事業に加えて、海外展開やICT、都市開発といった新しい成長分野にも軸足を広げていくことも合わせて表明している。

【寺村朋輝】

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