NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「圧倒的多数の裁判官は内閣=政治権力の顔色を窺って職権を行っている」と指摘する6月6日付の記事を紹介する。
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2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所が引き起こした人類史上最悪レベルの原発事故。東京電力の株主が旧経営陣5人に対して23兆円余りを会社に賠償するように求めた株主代表訴訟で、東京高裁が6月6日に控訴審判決を示した。東京高裁の木納敏和裁判長は旧経営陣4人に合わせて13兆3,210億円の支払いを命じた一審の判決を取り消し、原告の株主側の請求を棄却した。
予想された結果だ。日本の裁判所は〈法の番人〉ではない。日本の裁判所は〈権力の番人〉である。下級裁判所には例外的に〈法と正義〉に基づいて、〈良心に従い独立して職権を行う〉優れた裁判官が存在する。
例外的に優れた裁判官が訴訟を指揮する場合には正当な判断が示されることがある。今回の事件での第一審がこの例に該当する。しかし、上級裁判所に移行するに従い、法に基づき、良心に従い独立してその職権を行う〈優れた裁判官〉はほぼ消滅する。したがって、下級裁判所が正当で優れた判決を示す事件であっても、上級裁判所が、その正しい判断を覆すことは、当然に予想されるのである。
この裁判では〈津波の予見可能性〉が焦点になった。一審は〈津波の予見可能性〉を認めたが東京高裁は〈津波の予見可能性〉を認めず、13兆円余りの賠償を命じた一審判決を取り消した。東日本大震災が発生し、東京電力福島原子力発電所事故は東日本大震災発生に伴って生じた。地震の揺れ、津波の襲来によって福島第一原発は電源を失い、原発の暴走を招き、人類史上最悪レベルの災害を引き起こした。
原子力損害賠償法は、原発事故を引き起こした際に事業者が無限の責任を負うことを定めている。ただし、「異常に巨大な天災地変の場合はこの限りでない」との文言を付記している。しかし、東日本大震災と大津波は、「異常に巨大な天災地変」ではなかった。
東北地方太平洋岸においては定期的に巨大地震と巨大津波が発生してきた。この事実を踏まえて産業技術総合研究所が、巨大地震にともなう巨大な津波が太平洋岸に襲来する予測を立て、東京電力の津波対策が不十分であることを〈報告〉していた。
原子力事故の処理や賠償に、想像を絶する資金が投下されている。しかし、その費用は東京電力の資金力を完全に超えている。したがって、東京電力は財務的に破たんする。原発事故を受けて東電を法的に整理し、その上で東電の再建を図るしか道はなかった。ところが、菅直人内閣は東電を法的整理しなかった。
東電の責任が問われる順序は株主、貸し手、経営者、取引企業、従業員になる。株主は株式の価値がゼロになるかたちで責任を問われる。貸し手は融資資金が毀損して責任を負う。従業員の責任はその下位に来るもの。しかし、菅直人内閣は東電を法的整理しなかった。
※続きは6月6日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「暗黒の裁判所の一筋の光明」で。
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6月に新刊『財務省と日本銀行-日本をダメにするカルトの正体-』を上梓する植草一秀氏を講師に迎えて、日本の財政政策の実態を読み解き、経営者が今後の経済環境にどう向き合うべきかを考えるセミナーを開催します。植草氏と直接意見交換ができる貴重な機会です。ぜひご参加ください。
<INFORMATION>
〔日時〕
2025年6月20日(金)午後3時~6時
〔場所〕
福岡市民ホール(小ホール)
〔プログラム詳細〕
講演『財務省の正体とビジネス防衛論』 午後3時~4時半
質疑応答 午後4時半~5時15分
出版記念パーティー(軽飲食付き) 午後5時15分~6時
〔講師〕
植草一秀氏(政治経済学者)
〔参加費〕
1万円(飲食、新刊書籍、書下ろし資料代含む)※要申込
〔お申し込み先〕
専用フォームあるいはTEL、FAXにて
▶ 専用フォーム
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389
主 催:(株)データ・マックス
※当セミナーの詳細な内容は告知記事にてご確認ください。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。