中国の債務負担、世界最高水準に

イメージ    近年、中国の債務負担が国際的に注目されている。国内総生産(GDP)に対する債務比率。いわゆるマクロレバレッジ比率は286%に達し、米国の249%を上回る水準で、ほぼ世界最高水準となっている。

 2023年第4四半期の統計によれば、中国のマクロレバレッジ比率は過去最高の286%へ上昇。家計部門、非金融企業部門、政府部門の債務を合算したものであり、とくに政府部門の比率が2.3ポイント上昇したことが大きく影響した。一方、米国は依然として高水準の249%にあるが、中国よりはやや低い。こうした差は、中国経済の構造的特性および近年急速に進んだ債務の積み上げによる結果といえる。

 2022年末の時点で、中国の非金融部門におけるGDP比債務残高は295%に達し、これも過去最高。とくに地方政府の債務が深刻な問題となっており、その総額は1800兆円超に膨らんでいる。債務の急増は、不動産バブルの崩壊や経済成長の減速と密接に関係している。

 中国の債務レバレッジ比率が急上昇した背景には、以下のような要因が存在する。

1.不動産セクターの過熱とその余波

 中国経済は長らく不動産業に強く依存してきたが、恒大集団や碧桂園などの大手企業が
相次いで経営危機に陥り、不動産市場全体が不況に転じた。多くの地方政府は土地売却収入に依存して財政を支えてきたが、市場冷却により歳入が減少し、債務返済能力が著しく低下した。

2.地方政府の融資プラットフォーム

 地方政府はインフラ建設や公共プロジェクトを推進するため、融資プラットフォームを
通じて巨額の資金を調達してきた。これらの融資の透明性は低く、潜在的な不良債権リスクが常に指摘されてきた。2018年時点で対GDP比38%(約35兆元)だった融資プラットフォームの債務は、2023年には57兆元(対GDP比53%)に急増し、2027年には102兆元に達するとの試算も存在する。

3.コロナ禍と財政出動

 2008年のリーマン・ショック以降、中国政府は大規模な景気刺激策を継続的に実施し、
債務は年々膨らんできた。コロナ禍では、景気後退を防ぐための積極的な財政出動が行われた結果、債務残高が急増。これは新興国のなかでも顕著であり、世界全体の債務膨張を牽引する要因の1つとなっている。

4.一帯一路構想と対外融資の影響

 中国は「一帯一路」構想を掲げ、アジア・アフリカ諸国を中心にインフラ投資を加速させ
てきた。しかし、これにより債務返済困難な国が増加し、「債務の罠」との批判が高まっている。こうした対外融資は中国自身の金融リスクの間接的な増幅要因ともなっている。米国の債務レバレッジ比率は249%と中国より低いが、それでも高水準である点に変わりはない。米国の債務は主に国債発行によるものであり、世界中の投資家によって支えられている。ドルが基軸通貨として信認されていることもあり、当面のリスクは限定的とされている。一方で中国の債務構造はより複雑であり、とくに地方政府と不動産セクターに集中している。また、金融システムの未成熟さや透明性の欠如がリスクを高めており、債務問題が一段と深刻化しやすい要素となっている。

 中国のマクロレバレッジ比率が286%に達した背景には、経済構造の偏重と政策の累積的影響がある。不動産バブル崩壊、地方政府の債務圧力、そしてコロナによる財務拡大が重なり、債務負担は過去最大級に膨らんだ。

 政府には債務管理と経済成長の両立という難題が突きつけられている。その実現には構造改革、中央と地方の財政再設計、そして外部環境の安定が不可欠である。国際社会もまた、中国の政策動向がグローバル経済に与える波及効果を注視し続ける必要がある。


中国経済新聞を読もう

<連絡先>
(株)アジア通信社
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:edit@chinanews.jp
URL:https://chinanews.jp

関連キーワード

関連記事