9月11日、スターバックス(中国語名「星巴克」)中国の「売却大劇」がついに最終プレイヤーを確定した。博裕資本、ケイリークループ、EQT、セコイア中国の4つの機関が、正式にその事業売却の候補者となった。この業界を揺るがす取引は、10月末に結果が発表される見込みだ。
高盛(ゴールドマン・サックス)が主導するこの資本争奪戦の裏側には、スターバックスが中国市場でカギとなる転換を迫られている姿がある。同社はついに「単独闘争」の堅持を捨て、地元化パートナーを切実に求めている。激しい競争が続く中国コーヒー市場に直面して、スターバックスは本当に「巻き込めない」状態に陥ったのかもしれない。
このニュースは、7月29日のスターバックス2025会計年度第3四半期決算発表後に市場を震撼させたものだ。中国事業の評価額が350億元(約7,227億円)を超え、株式売却を求めることが確認された。これは一時代の転換点である。創業者ハワード・シュルツが「米国以外で最大の市場」と呼んだこの戦場は、今やスターバックスにとって再評価を要する資産となった。これは単なる財務操作ではなく、過去の発展論理に対する再検討のように見える。世界コーヒー市場の巨人が、中国の急速に進化する消費波のなかで、「遅緩」「重厚」「時代遅れ」に映るようになったのだ。
収益成長が隠せないシェア危機
2025会計年度第3四半期、スターバックスのグローバル収益は89億ドルに達し、市場予想を上回った。中国市場の収益は7.9億ドルで、前年比8%増、店舗数は522店舗増加して7828店舗となり、グローバル店舗総数の約5分の1を占める。表面上、中国市場は回復しており、4四半期連続の下落後の同店売上高が2%増加、同店販売量が6%増加した。
しかし、深層では、この成長は「価格交換量」の結果だ。メニュー価格引き下げ、外売特典補助、集中プロモーションにより得られた「受動的回復」である。中国市場は、店舗が増えるほどシェアが小さくなることだ。2017年、中国市場シェアは42%だったが、2024年には14%に急落した。
一方、瑞幸コーヒーのデータは驚異的だ。四半期収益123億元(約2,539億円)、前年比47%増、中国市場収入はスターバックスの約2.5倍。カップ量で算定すれば、瑞幸は市場定義権を「併合」した。スターバックスが認めなくても、瑞幸は「低価格補完」ではなく、中国消費者の連鎖コーヒーに対する基本認識を全面的に再構築した存在だ。
「第三空間」が失われた
スターバックスの中国核心資産は、コーヒーや店舗ではなく「第三空間」だ。これは創業者シュルツが最も誇る理念で、家とオフィス以外に社交、瞑想、リラックスできる空間を創造する。2010年代、この定義は中国市場で大成功した。都市中産階級が体面消費を求め、「スターバックスを持って歩く」ことがステータスシンボルだった。
しかし、瑞幸らの台頭がこの「文化幻想」を破壊した。瑞幸はデジタル化、低価格、爆款新商品、高頻度消費で、連鎖コーヒーの「実用主義」を再定義した。コーヒーは情景消費ではなく日常飲料、精致生活ではなく高性价比の提神ツールとなった。「環境」は「効率」に譲り、「ブランド」は「製品」に、「儀式感」は「便利性」に取って代わられた。
スターバックスの困境の本質は、瑞幸に顧客を奪われたことではなく、市場定義能力の喪失だ。消費パラダイ厶の変化で、「第三空間」は小衆概念に退化している。
スターバックスは危機を認識し、対応を試みている。たとえば広東省で試験導入した「自習室」サービス‥無料、無制限、無料水電。これは「夏日避暑十学習シーン」の革新拡張として包装されている。
しかし、実質は「在庫解消」式の試みだ。店舗閑散期に空間価値を解放し、学生やフリーランサーを引きつけ、「温度」で「流量」を換える。これは悪いことではないが、こうした補救策は市場主軸の移行を逆転できない。
スターバックスの根本問題は、「第三空間」の定義が辺縁化しつつ、ブランド核心戦略が依然これを軸に回っていることだ。かつての核心資産が「コスト負担」になると、どう攻撃するのか?
低評価された資産・・・なぜ 「売る」のか?
2017年の合弁会社全額買収、直営化から、今の戦略協力探求まで、スターバックス中国事業の舵取りは180度転換した。一方、これは経営現実の必要‥本土ブランドの急速下沈、加盟体系の速さ、直営重資産模式の制限、新商品遅れ、デジタル運用遅滞、消費者価格体系の心理プレミアム喪失。
他方、評価額から見て、この資産は「成長エンジン」ではなくなった。メディア報道では、50~60億ドルと、グローバル時価総額の5%未満で、店舗比率や歴史収益比率を下回る。つまり、市場の目にはスターバックス中国が「その価値に値しない」ようになった。 資本導入は、引き継ぎではなく入力だ。導入すれば、スターバックスは「制御権譲渡」ではなく、地元化運営の新レバー獲得‥急速拡大、データ化運営、全チャネル小売通路の打通。これは中国で再び「立つ」ための必経路だ。
しかし、資本は「勢能対賭」ももたらす。将来的にスターバックスが「速く軽く」なれは、「空間」定義を守れるか?これが戦略再構築の最大難題だ。
中国の巨大市場を捨てたくない
スターバックスは中国で「自分」を続けるが、この「自分」を再定義する必要がある。「第三空間」を放棄せず、その意義を拡張‥オフラインシーンだけでなく、オンライン接続、コンテンツ共創、コミュニティ集約へ。瑞幸の価格戦を模倣せず、独自の「製品十情景」再組合を見つける。
スターバックス中国は店舗、ブランド、ユーザー基盤に欠けていない。欠けているのは新時代滴応のブランド表現と運営方法論だ。短期では戦略協力者の導入で「組織機能」修復、長期では中国若世代の生活方式理解で定義権再構築。
スターバックス北京国貿初店舗はまだ営業中だが、周囲は「敵なし」市場ではない。連鎖茶飲、高性价比コーヒー、ネット紅新ブランドが潮のように交代。スターバックスはもはや「唯一選択」ではない。
この速い市場リズムで、スターバックスは初心を取り戻し、過去を捨てる必要がある。スターバックスを苦しめるのは瑞幸の台頭ではなく、かつて主導した時代が理解できないかたちで幕を閉じることだ。
しかし、これはスターバックスが再成長する契機かもしれない。「米国以外中国市場」から、「中国で中国を理解するスターバックス」へ。
さらに詳しく振り返れば、スターバックス中国の売却話は昨年11月から兆しがあった。ブルームバークが、中国事業の各種可能性を探っていると報じた。売却はその1つだ。
スターバックスの中国物語は1999年に始まる。北京国際貿易センターで内地初店舗を開店。当時コーヒー文化は小衆だった。
初期の水土不服後、急速拡大。「第三空間」属性と高品質コーヒー生活方式で、本土ショッピングモールの集客看板となった。白色カップは「小資」象徴だった。長らく中国コーヒーブラッド市場シェア首位を占め、多くの消費者のコーヒー認識を形成した。
今、スターバックスは約30%株式保留、70%売却を計画。残りを複数買手で分割、各持分30%未満。これは巧妙な計画‥ブランドイメージと企業文化を守り、成功時は利益共有、失敗時は損失制御。戦略的ヘッジだ。中国市場に進出26年のスターバックスは、この巨大市場を捨てたくない。
スターバックス中国の売却は、コーヒー市場のダイナミクスを象徴する。中国消費者の変化、デジタル化の波、低価格競争が、伝統ブランドを試す。売却後、スターバックスはより敏捷で地元適応型になるか?その答えが、中国コーヒー市場の未来を決めるだろう。時代は終わり、新章が始まる。
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