9月、「令和7年度地価調査」の結果が発表された。福岡市だけを見ると、近年のトレンドと大きく変わらず、依然として大幅な上昇傾向が続いている。
住宅地の上昇率は前年9.5%だったものが今年は7.2%へ、商業地も13.2%が10.2%へ、工業地も16.8%が11.8%へと減速したものの、前々年比の上昇水準とは遜色ない上昇率となっている。住宅地、商業地ともに13年連続、工業地も12年連続で上昇を継続。主に戸建住宅のさらなる販売鈍化傾向も見られはするが、引き続き地価高騰が顕著に進んでいるといっていいだろう。
今年、前年比2ケタ増となったのは右図の通り。2ケタ増となった基準地は前年の95から大幅に減少し、多くの基準地の上昇率が前年から下落した。今回はまず、2ケタ増となった基準地のうち、各行政区の上昇率上位から見ていこう。
【博多区】
綱場町は6年で2.6倍に
博多区で2ケタ増となった基準地は15。そのうち上昇率が最も高かったのは、「綱場町9-28」(18.6%)だった。同地点は福岡県内トップの上昇率で、価格も210万円/m2と大台に乗せ、2013年比で4.8倍、19年比でも2.4倍となっている。「綱場町9-28」は地下鉄・呉服町駅から徒歩4分、同・中洲川端駅からも徒歩6分のSRC造・地上8階・地下1階建のオフィスビル。昭和通りに面する立地で、敷地面積は238坪、容積率は600%、建ぺい率は80%。「令和3年都道府県地価調査」において、全国1位の上昇率(商業地)となったことも記憶に新しい。
次に上昇率が高かったのは、「博多駅南3-2-6」(14.7%)。地下鉄・東比恵駅から徒歩11分のRC造・地上9階建の店舗、事務所兼共同住宅。筑紫通り沿いで博多駅からも徒歩14分の立地にあり、敷地面積は154坪、容積率は500%、建ぺい率は80%。周辺は中高層事務所ビル、共同住宅のほか、営業所等も混在する商業地域で、賃貸マンション用地としての売買も目立つエリア。同地も大幅な価格高騰が続いており、13年比で3.7倍となる133万円/m2を付けた。
3位の上昇率となったのは、工業地の「半道橋2-7-45」(14.6%)。周辺は小規模の工場、事務所、自動車関連店舗などが混在する地域で、同地は工場兼事務所として利用されている。敷地面積は375坪、容積率は200%、建ぺい率は60%。福岡空港に近く、国道3号と県道112号に挟まれた立地。4年連続で2ケタ増を続けており、価格は13年比で2.4倍の29万円/m2となった。
4位は「中洲4-2-18」(14.3%)。周辺は飲食店ビルなどが建ち並ぶ歓楽街の商業地域で、同地はコロナ禍の2020年は横ばい、21年は2.1%減と低迷していたが、23年は5.2%増、24年は20.7%増の大幅な伸びとなり、同年は福岡県内トップの上昇率となっていた。今回は伸び率こそ縮小したが、依然として高い水準にある。同地は地下鉄・中洲川端駅から徒歩4分のRC造・地上5階建の店舗兼共同住宅で、歓楽街・中洲のメインストリートである中洲中央通りに面している。同・櫛田神社前駅からも徒歩6分という立地で、敷地面積は67坪。容積率は600%、建ぺい率は80%。20年に基準地として設定され、同年比でも1.4倍の280万円/m2となった。
5位は「博多駅前3-21-12」(13.4%)。博多駅から徒歩7分のS造・地上8階建のオフィスビルで、敷地面積は268坪。容積率は500%、建ぺい率は80%。15年連続で上昇を継続しており、価格は同年比5.5倍の338万円/m2となった。
周辺は中層の店舗兼事務所が多い商業地域で、近年はホテル開発が活発化。同地から西に100m強の立地では、(株)えんホールディングス(福岡市博多区)と東急リゾーツ&ステイ(株)(東京都渋谷区)がそれぞれホテル開発計画を進行中。いずれも博多駅から徒歩9分、地下鉄・櫛田神社前駅から徒歩5~6分の立地で、人参通り西側にえんHDによるHOTEL TRADⅡ(164室)、東側に東急リゾーツ&ステイによる東急ステイ(149室)が計画されている。
今回2ケタ増となった地点のうち、「麦野6-10-13」(10.0%)、「西春町3-3-33」(11.0%)、「春町2-1-16」(10.6%)については、昨年開業した西鉄・桜並木駅の周辺に位置している。これら3地点は第一種住居地域に区分されており、いずれも容積率は200%で価格は26~33万円/m2にとどまっているものの、ここ数年は大幅な伸び率で推移している。
【永上隼人】

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