資生堂 福岡久留米工場を視察 “美の循環”を体現する最先端工場

「美の循環の輪」が象徴するものづくり

 福岡商工会議所の情報・文化・サービス部会の部会視察会で、資生堂福岡久留米工場を視察した。同工場は、単なる資生堂製品の生産拠点ではなく、持続可能な社会の実現を目指す「BEAUTY PLANET」としての強い理念を体現している。

 工場見学エリアの床に描かれた「美の循環の輪」は、黒い線が流れるようにめぐり、その途中に虹色の箇所が差し込まれている。その線の上を、化粧品の原材料が旅し、やがて製品としてかたちを得ていく過程が象徴的に表現されており、資生堂のものづくり全体がこの循環の上に成り立っていることを示していた。

“美の循環の輪”を描く黒のライン(右下)と、多様性を映す虹色の光(中央)
“美の循環の輪”を描く黒のライン(右下)と、
多様性を映す虹色の光(中央)

 工場の内部は、「自然の恵み」と「先端テクノロジー」が響き合う場だった。原材料の調達から製造、充填、出荷に至るまでの各工程が、持続可能性と高品質の両立を目指して緻密に設計されている。使用される水や原料の選定には地域環境への配慮が息づき、エネルギーの使い方にも再生可能な仕組みが積極的に取り入れられている。工場敷地内の駐車場の屋根にはソーラーパネルが設置されており、夏の昼間は工場で使用する電力の約50%を賄っている。資生堂は、CO2フリーの太陽光や水力発電由来の再生可能エネルギーを活用し、さらに高効率の設備を導入することで省エネルギーに努めている。

充填ロボットの動きを可視化した展示
充填ロボットの動きを可視化した展示

IoTが進化させる化粧品づくりの現場

 製造の中枢では、IoT技術を取り入れた製造窯が活用されていた。化粧品の中身製造プロセスにおけるリアルタイム品質監視と自動制御の導入は、世界で初めて久留米工場が実現したという。これにより、これまで人の経験や勘に頼っていた製造窯内部の状況が数値化され、より高い精度で管理できるようになっている。まだ一部の製造窯でのみIoT化が進んでいる段階だが、他の製造窯でも順次導入をしようと試みているという。広い製造室では、自動化設備と人の手作業が共存し、両者が補い合いながら次の時代のものづくりへと進化している姿が印象的だった。

人の感性が支える品質へのこだわり

 それでも最終的な品質を決めるのは、機械ではなく人の「眼」だという。検査工程では、「官能パネラー」と呼ばれる専門スタッフが五感を研ぎ澄ませ、香りや質感をたしかめながら製品の完成度を見極める。機械と人がそれぞれの強みを生かして共存する姿勢に、資生堂の“美をつくる信念”が滲んでいた。

見学では、官能パネラー体験ができる
見学では、官能パネラー体験ができる

 また、見学の最後には、資生堂製品を実際に体験できるワークショップが用意されており、季節ごとに変化する肌の悩みに合わせて内容が変わる。参加者が自分の肌と向き合いながら資生堂のスキンケア技術を体感できる時間となっている。技術と感性の両面から“美の循環”を感じ取れる締めくくりだった。

 資生堂福岡久留米工場は、最先端のIoT技術を駆使しながらも、最先端のIoT技術と環境への責任、そして人の感性を融合させた「美の循環」を体現する工場だった。

<INFORMATION>
資生堂 福岡久留米工場 BEAUTY PLANET

〔所在地〕
福岡県久留米市田主丸町鷹取808
〔見学運営時間〕
午前9時30分~午前11時30分
午後1時30分~午後3時30分
 1日2回
〔定休日〕
土・日・祝日・臨時休館日
〔予約方法〕
資生堂福岡久留米工場 見学予約

【和田佳子】

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