先月発足した高市政権は、各種世論調査で7割、8割の支持率となっている。とくに若年層の支持率が高い。石破前政権で参政党などの新興政党に流出した保守層が自民党に回帰すると期待されている。
こうなると面白くないのが前政権の面々である。石破茂前首相は、10月30日、広島県を中心とするブロック紙「中国新聞」のインタビューで、高市政権について「正規ルールでできたのだから、党員として支えていかなきゃいかん」としながら、「ただ、無批判に従うということではない」と党内で批判の声を上げる意向を示した。
また、連立入りした日本維新の会を「新自由主義的」と指摘し、「自民党政治がいわゆる保守の路線へさらに傾くことにすごく違和感がある」とも述べた。
政権発足から10日足らずでの前首相による発言であるが、石破氏が指摘したように、維新との連立について警戒や批判があることは事実だ。ただ、SNSでは「早速後ろから鉄砲を撃つ」などの批判の声が上がり、党内でも石破氏に対する批判が聞かれる。
また、岩屋毅前外相は1日、大分放送(OBS・TBS系)のインタビューで、スパイ防止法について「法律の立てつけが、人権をきちんと守るという観点から心配のない設計になるのかを見なければ、『良い』『悪い』の議論はできない」と語り、特定秘密保護法など「現行の制度で十分対応できている」として、スパイ防止法の法制化に否定的な見解を示した。
高市早苗首相は岸田政権で経済安全保障担当大臣を務め、安保関連3文書改訂やスパイ防止法を推進させることを考えている。
今回の官邸人事も、外事情報の集約や危機管理を念頭に警察庁や防衛省などの官僚を重用し、内閣情報調査室の国家情報局への格上げも検討されている。自民と維新の連立合意文書には、年内の検討開始と速やかな法案成立が盛り込まれており、参政党・国民民主党両党も導入に前向きな姿勢を見せる。
スパイ防止法案は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と関わりが深い「スパイ防止法制定促進国民会議」の運動を背景に、1985年6月(中曽根政権)に自民党議員が法案を提出したが、野党や日弁連、自民党内の反対もあり廃案となった経緯がある。
かつて高市早苗氏が提案し、参政党が参議院に法案を提出している国旗損壊罪については「『立法事実』がない」としたうえで「日の丸が燃やされて大変なことになって、規制しなきゃいけないという事実がないでしょ。事実がないのにそうした法律をつくることは、国民の精神をどこかで圧迫する恐れがある」と反対を表明した。
なお、岩屋氏は99年の国旗・国歌法の制定には賛成している。岩屋氏の地元・大分県では、かつて教職員組合による国旗・国歌反対運動が盛んであった。
石破・岩屋両氏の相次ぐ「政権批判発言」は、安倍晋三元首相の事件後、リベラル的であった岸田・石破両政権からの路線転換により、再び自民党において右派色が強まることへの警戒感を示しており、党内に亀裂が生じる可能性をうかがわせている。
【近藤将勝】

				
				
				
				
				
				
				
				
				
				
							
							
							
        
                          
                          
                          
                          
                          
									






