精神科医療で「治す」を実践する 新体制で挑む新たな精神医療のかたち|勢成会 井口野間病院
<COMPANY INFORMATION>
(医)勢成会 井口野間病院
理事長:山岸久一
所在地:福岡市南区寺塚1-3-47
設 立:1995年11月
TEL:092-551-5301
URL:https://inokuchinoma.com
福岡市南区にある井口野間病院は、1956年創業の精神科専門病院である。2025年4月の経営刷新を機に「理念より実践」を掲げ、運動器および脳血管リハビリの強化と地域連携の深化に注力。18名のリハビリ専門スタッフが、精神・身体両面の課題を抱える患者に包括的ケアを提供している。医療人として成長できる舞台がここにある。
【目次】
- 言葉よりも行動 新体制で挑む医療の本質
経営刷新の背景と「理念より実践」を掲げる新体制の方針、病院再構築の方向性を紹介する。 - 精神科×リハビリ 専門職連携の包括ケア
18名のリハビリ専門職が精神・身体両面から支える、多職種連携の包括的ケア体制を解説する。 - 地域とともに育つ 次世代医療人の育成拠点
地域連携や教育・研修、働く環境づくりなど、次世代医療人を育てる取り組みの全体像を伝える。 - 求人情報

言葉よりも行動
新体制で挑む医療の本質
2025年4月、井口野間病院は転換期を迎えた。前理事長との方針の違いによりパートナーシップを解消し、山岸久一理事長を中心とする新体制へ移行した。山岸理事長は京都府立医科大学の元学長・名誉教授で、消化器外科の権威として日本医療界を牽引してきた。現在は再生医療分野でも先進的研究を進め、認知症やALSへの脂肪組織由来幹細胞(ADSC)治療の可能性を探る。その「困難な疾患にも挑む姿勢」は、同院が掲げる「医療を担い治療する」の理念を体現している。
副理事長でオーナーの岡田勢聿氏は、「理念より現場の課題に向き合うこと」を最優先に掲げ、行動指針の明文化に取り組む。自ら方向性を示し、職員との対話を重ねながら一体感を醸成。「過去を否定せず、歴史と価値を大切にしながら、言葉より行動を、理念より実践を」──その姿勢が新しい組織文化を支えている。
前体制で進められた「スーパー救急病棟」構想は21年に中止された。24時間対応の専門人材確保や地域ニーズ、安全基準を精査した結果、現時点での実現は困難と判断したためだ。しかしこの決断は後退ではなく、強みを見極め、医療の質向上に資源を集中する戦略的転換だった。
コロナ禍では外来患者数が減少し、病床稼働率も一時80%台に低下。しかし感染対策の徹底やオンライン面会、地域イベント開催などを通じて「地域とともに歩む医療」を実践し、24年には外来患者数1万1,887名、病床稼働率92.5%へと回復した。
精神科×リハビリ
専門職連携の包括ケア
井口野間病院の大きな強みは、精神科病棟における充実したリハビリ体制である。作業療法士14名、理学療法士3名、言語聴覚士1名の計18名が、精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者を心身両面から支援している。精神科単科で3種の療法士がそろう病院は全国的にも稀で、福岡市内では井口野間病院のみではないか。
対象は骨折の術後や脳血管疾患の後遺症に加え、抑うつ、不安、意欲低下、認知機能障害などを併発する患者だ。一般病院では「精神症状が安定しない」との理由でリハビリが中断されがちだが、同院では精神科医、看護師、公認心理師、リハスタッフが連携し、個々のペースに合わせたプログラムを提供する。
理学療法による歩行訓練・麻痺改善、作業療法による日常生活動作訓練、言語聴覚療法による失語・嚥下機能改善など、多職種が協働し多面的に支援する。さらに認知リハや心理的サポートを組み合わせ、注意力や記憶力の向上と気分の安定を促す。
退院後も支援は続く。精神科デイケア「ぬくみ」・認知症デイケア「きらり」や訪問看護を通じて、自宅生活・社会復帰まで切れ目なく支える。「一般病院で対応が難しい患者こそ、私たちが力になれる」──その信念がリハビリの核心だ。
今後は脳血管・運動器に加え、呼吸器リハビリの導入も視野に入れる。精神疾患を有する患者にも安全で効果的なプログラムを整え、包括的リハビリの確立を目指す。パーキンソン病など難病対応にも段階的に取り組む方針だ。
地域とともに育つ
次世代医療人の育成拠点
岡田副理事長が掲げるもう1つの柱が「地域医療を支える次世代の育成」だ。福岡県内の大学病院や公的医療機関と連携し、神経疾患や慢性疾患など専門性の高い領域にも挑戦。多職種が知見を共有し、地域全体で支え合う仕組みづくりを進めている。
退院前カンファレンスには訪問看護や福祉施設のスタッフも参加し、在宅生活への移行を支援している。共同訪問によって早期の問題発見と対応を実現する。さらに地域保健所や自治体、福祉施設と連携した社会参加支援プログラムを展開し、就労支援や生活スキル向上を地域資源と結び付けている。
教育面では、地域医療関係者向けの研修・勉強会を定期開催し、最新の精神医療知識や症例を共有。地域全体のケアレベル向上を図るとともに、スタッフ自身の自己研鑽にもつなげている。
人材戦略は「量より質」を重視する。医療の質に直結する職種へリソースを集中し、事務部門のスリム化を進める一方、優秀な人材の採用には積極的だ。限られた資源を最大限に活かし、職員が専門性を発揮できる環境づくりを徹底している。
198床(精神科急性期治療病棟103床、精神科治療病棟40床、認知症治療病棟55床)を擁する同院は、野間大池公園を臨む緑豊かな地にあり、治療環境としても理想的だ。「治す医療」「支える医療」の実現を目指し、多職種が協働しながら地域とともに歩む―井口野間病院は今、精神医療の新たなモデルを築こうとしている。
<求人情報>
(医)勢成会井口野間病院
業 種 :精神科、心療内科、内科
職 種 :看護師(病院、訪問看護、デイケア)、准看護師、作業療法士など
勤務地 :福岡市南区寺塚1-3-47
採用担当:山口智央
TEL :092-551-5301
採用ページ:https://inokuchinoma.com/recruit/









