吉松源昭元福岡県議会議長、SNSで「統一教会関連団体とは手は組まない」と宣言
参政党と国民民主党が相次いで国会に「スパイ防止法」を提出したが、自民・維新両党の「連立政権合意書」にも「インテリジェンス(諜報)・スパイ防止関連法の検討開始」を明記されており、今国会にも関連法案を提出する可能性が高い。こうした動きの背後で、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の動きが活発化しているとの指摘がある。
自民党内でも法整備に賛否
スパイ防止法とは一体どういうものが想定されているのか、歴史的な経緯を少し解説したい。
先月26日の党首討論で高市早苗首相は、参政党の神谷宗幣代表の質問に対し「現在、考えているのは、まず基本法的なもの、そして外国代理人登録法、ロビー活動公開法などについても、今年に検討を開始して、速やかに法案を策定するということを考えている」と表明した。
高市首相の答弁は、スパイ防止法に前向きであると受け止められている。10月の自民党総裁選でも、高市氏が必要性を主張する一方、茂木敏充元幹事長と林芳正官房長官(当時)は「現時点で必要ない」と意見が分かれた。
なぜ、政府の要職を歴任した茂木・林両氏が消極的なのか。国の機密情報を入手する外国勢力のスパイ行為を取り締まる法律は、すでに整備が進められてきたからだ。安全保障に関連する重要情報を保護対象とする特定秘密保護法、企業の営業秘密を対象とする不正競争防止法、経済安全保障の重要情報に対するアクセス権限を制限するセキュリティー・クリアランス制度などである。
『週刊現代』2025年12月8日号では、元警察官僚で国家安全保障局長を務めた北村滋氏が、「日本にはすでに私が成立に関わった特定秘密保護法と、重要経済安保情報保護活用法がありますから、スパイを取り締まる法規がないわけではありません」と語っている。
北村氏は、警察庁警備局外事情報部長や第一次安倍政権の総理大臣秘書官などを歴任。我が国のインテリジェンスの第一人者として知られる。先日、自民党インテリジェンス戦略本部(小林鷹之本部長)でも講演し、警察や公安調査庁などが収集した情報を統合して政策決定者に伝える機能の充実の必要性を指摘した。
福岡県でも県議に接近
共産党など革新系の野党などリベラル勢力はスパイ防止法の制定に反対の立場をとるが、同法案は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と関わりが深い「スパイ防止法制定促進国民会議」の運動を背景に、1985年6月(中曽根政権)に自民党議員が法案を提出したものの、野党や日弁連、自民党内の反対もあり廃案となった経緯がある。
2022年7月の安倍晋三元首相の事件後、自民党は教団との関係を断絶したため、旧統一教会と政界の関係は表向き見えなくなった。しかし、教団の関連団体である「国際勝共連合」などは、スパイ防止法制定を名目に再び政治への接近を見せているようだ。
4日午後2時、東京都内では「スパイ防止法制定を目指すシンポジウム」(主催・シンポジウム実行委員会、後援・国際勝共連合など)が開催される。また、福岡においても同時間帯に粕屋町の公共施設を会場に開催される。
同町を含む糟屋郡選出で、元福岡県議会議員の吉松源昭は自身のXで「本日、私の事務所に、福岡県平和大使協議会と国際勝共連合福岡県本部の関係者が、12月4日に開催される『スパイ防止法』制定を目指すシンポジウムの案内状を持参(私は不在にしていた)してきた」と明らかにしたうえで、「この二つの団体は旧統一教会の関連団体・・・ シンポジウムの内容には賛成だが、旧統一教会のこれまでの活動には到底、賛同も容認もできない。目的が正しくとも反社会的団体とは手を組むわけにはいかない」と集会への不参加や教団関連団体とは協力しないことを宣言した。

投稿には賛否が寄せられ、4日午後の時点でインプレッション7.1万件を超え、被害救済に取り組む紀藤正樹弁護士も引用投稿するなど、反響が広がっている。
吉松氏は、24年の衆院選に福岡4区から立候補したが、その際自民党を離党している。福岡県議のなかでも保守色の強い1人だが、教団からのアプローチがあったことを公表したことは、旧統一教会がさまざまな社会問題を生み、現在東京高裁で解散命令が審理中であることを踏まえれば、適切かつ英断といえる。
吉松氏の投稿により、依然として教団が水面下で地方議員への働きかけを行っていることが明らかになった。無所属保守系議員だけでなく、自民党など国政政党、高市政権への接近も、関連団体あるいは第三者を介して行われている可能性がある。
【近藤将勝】








