日本社会を揺るがした安倍元首相銃撃、検察は山上被告に無期懲役を求刑

 2022年7月、安倍晋三元首相が銃撃を受け死亡した事件で、殺人罪などに問われた山上徹也被告の第15回公判が18日に行われ、検察側は論告で無期懲役を求刑した。判決は来年1月21日に言い渡される。

 これまでの裁判で山上被告は、起訴内容について「すべて事実です」と認めた一方、弁護側は、手製銃が拳銃などに該当しないとして、発射罪について争っている。

 山上被告の母親が旧統一教会に約1億円に上る献金を行ったことなどで家庭が崩壊し、教団への恨みを募らせ犯行に及んだとされる。

 被告はこれまでの公判で、ジャーナリストの鈴木エイト氏が寄稿していた宗教問題関連のサイト「やや日刊カルト新聞」などを通じて情報収集をしていたことや、2021年に韓国で行われた教団関連団体の集会に安倍元首相がビデオメッセージを寄せたことを知り、「絶望と危機感をもった」「安倍元首相が教団と政治のかかわりの中心で、他の政治家では意味が弱い」と動機を語った。一方で、「安倍元首相のご家族に何の恨みもない。非常に申し訳ない」と謝罪の言葉も述べていた。

 検察側は「被告は善悪の判断ができる40代の成人であり、不遇な生い立ちがあっても被害者とは関係はなく、著しく悪質な犯行」と指摘し、「戦後史において前例を見ない、極めて重大な結果・社会的反響をもたらした」と厳しく指弾した。

 安倍元首相の事件により日本社会に激震が走り、社会の雰囲気が一変した。旧統一教会に対する解散命令が行われたほか、事件の重大性から山上被告の犯行は、「テロ行為か、怨恨の事件か」を巡って、SNSやメディアで議論を呼ぶなど、その波紋は広がり続けている。

【近藤将勝】

関連記事