【インタビュー】下関・北九州を隔てる関門海峡を通じて 経済交流による魅力あるまちへ

参議院議員 元下関市長 江島潔 氏

 本州の最西端で、九州との玄関口に位置し、古来より大陸との交流でも栄えた山口県下関市。県下最大の人口を有し、対岸の福岡県北九州市とは「関門都市圏」として密接な関係がある。多くの観光客が訪れる唐戸市場やホテルの新規開業などウォーターフロントの開発が進んでいる。下関北九州道路の整備促進、まちづくりや安倍晋三元首相との交流について元下関市長・江島潔参議院議員に話をうかがった。

下北道路は本州と
九州をつなぐパイプ

参議院議員 元下関市長 江島潔 氏
江島潔 氏

    ──山口県と福岡県は緊密な経済関係があります。早期実現が期待されている下関北九州道路については。

 江島潔(以下、江島) 11月10日に初めて下関北九州道路の新規事業化を促進する大会を東京で開催し、両県知事、国会議員、県議会議員などが集まり、国土交通省の道路局長にもご出席いただきました。

 私は1995年から4期下関市長を務めましたが、当時から下関北九州道路の必要性を主張しておりました。鉄道は36年に建設が開始され、戦時中に上下線開通しました。戦後に入りトンネルは58年、関門橋は73年です。供用開始から年数が経過しました。関門橋は豪雨や台風などの悪天候、関門トンネルも補修工事や事故などで通行止めが相次いでいます。下北道路は巨大なつり橋を関門海峡に整備し、下関市・彦島から北九州市小倉北区間の約8kmを結びます。下関や北九州にとどまらない本州経済圏と九州経済圏を結ぶ強いパイプをつなぐことが最大の意義だろうと思います。居住域としての下関の可能性は相当高くなってくると思います。

関門エリアの
都市としての魅力向上

 ──地方の人口減少が深刻です。

 江島 いわゆる地域間競争として人口問題は捉えるべきで、下関単独というより「関門都市圏」(下関市・北九州市)として地域間競争に打ち勝てる政策が必要だと思います。

 市長時代、北九州市は末吉興一市長がカウンターパートでしたが、我々の共通認識は、協力して福岡市経済圏に対抗しなきゃいけないということでした。関門海峡沿いの医療施設、あるいは山口側、山陰側の雄大な自然のエリアといった独自の魅力をアピールすることは強みだと思います。

 ──元市長として現在の下関市の取り組みをどうみますか。

 江島 非常に良く頑張っていると思います。とくにウォーターフロント開発は私の数代前の市長のころからの課題でした。私が市長に就任し、水族館や市場を整備し一段階進んだのですが、12月にいよいよ星野リゾートによる「リゾナーレ下関」がオープン(2025年12月11日開業)します。関門海峡が眼前に広がるロケーションや下関の海の幸も堪能できます。

 ──下関は漁業が盛んな町ですが、議員連盟で取り組まれているクジラの捕鯨については。

 江島 大洋漁業(現・マルハニチロ(株))が本拠地を置いていたことがあり、下関のアイデンティティーの1つでした。IWC(国際捕鯨委員会)が採択した商業捕鯨モラトリアムによりクジラの捕獲量が減ったことで消費量は減少しました。紆余曲折を経て、日本は商業捕鯨を再開しましたが、下関港が拠点です。

 科学的調査に基づいて、持続的に利用することが我が国の方針で、頭数管理を行いながら捕鯨を行っています。下関市内の学校給食では、年に数回、クジラを使った料理が出されており、日本の食文化を学ぶ機会にもなっています。

安倍元首相の
遺志を継承する

 ──下関は22年に逝去された安倍晋三元首相の地元でもありますが、安倍元首相との交流は。

 江島 市長4期務め十分政治をやり尽くしたと思って、退任後は倉敷芸術科学大学の客員教授に招かれましたが、安倍元首相より「自分はもう一度党総裁に戻って政権を奪取するから、江島君ももう一回政治の世界に戻ってこい」とお声がかかりました。13年の参議院補欠選挙で、岸信夫さん(安倍氏の実弟)が参議院から衆議院にくら替えをするので、参議院に立候補しました。亡くなられる数日前もお会いしていました。令和の時代に政治家が狙撃されて殺されるとは思いもよりませんでした。安倍先生の元統一教会との関係は、祖父の岸信介元首相の時からあくまでも共産主義に対抗する勝共連合としての関わりでした。

 安倍元首相の目指した国づくりを踏襲する高市政権も誕生し、安倍元首相の遺志を継いでいくのが安倍派の残されたメンバーの役割と思い、国会・地元を回って日々過ごしています。

【近藤将勝】


<プロフィール>
江島潔
(えじま・きよし)
1957年4月生まれ、東京大学大学院工学系研究科卒業、千代田化工建設技師、水産大学校非常勤講師などを経て、95年3月の下関市長選で初当選、以降4期。2013年4月の参議院山口県選挙区補欠選挙に立候補し当選。15年、第3次安倍改造内閣で国土交通大臣政務官、20年9月菅内閣で経済産業副大臣兼内閣府副大臣も務める。自民党水産部会長、参議院農林水産委員長などを歴任、現在、自民党政調会長代理を務める。

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