(一社)アジア・インスティチュート
理事長 エマニュエル・パストリッチ
米国の孤立主義化が突きつける国連体制の限界
トランプ大統領が1月7日に「国際機関からの米国脱退」大統領令を発令し、66の主要国際機関(そのうちの31機関は国連関連)からの離脱を決定したとき、事態は明らかだった。戦後、国際主義と民主と人権を理想とした米国は、今や地球上で最も孤立主義的な国家へと変貌し、すべての問題を軍事的に解決し、環境を破壊しながら、石油・石炭の無限消費を主張している国となった。
米国が国際法を無視し、気候変動を否定し、人種差別主義者や過激な宗教団体を国家政策として支持している限り、国連本部がニューヨーク市にとどまる実用的な理由はない。実際、ドナルド・トランプ氏らは、近い将来、米国が国連を脱退することを計画している可能性が高い。
国連本部の日本移転という選択肢
今こそ、日本が、国連本部を和平の軸であるアジアに、なかでも日本に移すことを大胆に提案したら、それは国際関係、科学、そして人類文明におけるアジアの重要な新たな役割を象徴する絶好の機会になる。
日本は19世紀、アジア諸国のなかで最も早く西洋文化を本格的に取り入れた国である。今日、日本はG7のメンバーであり、ヨーロッパ、アフリカ、南米と緊密な関係にある。同時に日本は、儒教や仏教から、アニミズムやアジアの自然尊重に至るまで、東洋の文明と深く結びついている。さらに、日本は、公正な仲裁者、そして平和への取り組みで尊敬される国として、国際社会で独特の人気を誇っている。今日の日本は、世界中で最も多くの人が訪れたいと望む国である。
日本は国際機関において重要な役割をはたし、1950年代以降の平和運動の中心的存在として核兵器廃絶の取り組みを主導してきた。その最たる証拠が、核戦争の脅威を終わらせるための活動が評価され、2024年に日本の被爆者団体「日本被団協」がノーベル平和賞を受賞した事実である。
最も人口が多いアジアに国連の主要事務所が存在しないことは、長い間世界の市民にとって奇妙に映ってきた。全世界を代表すべき国連の事務所の大半がニューヨークとジュネーブに集中しているのはなぜか?
日本にはすでに国連大学が東京に所在しており、国連本部の理想的な補完機関となっている。しかし日本における国連の最適な立地は沖縄である。この平和の列島は、文化的・地理的に日本と中国を結ぶ架け橋だ。沖縄はまた、圧倒的な近代化、冷酷な経済システム、軍国主義に直面しながらも自らの伝統を守ろうとする先住民族の崇高な闘いを体現している。
沖縄に平和と紛争解決の役割を
国連本部を沖縄に置くことは、これらの島々を変容させるだろう。悲しいことに、沖縄の人々の平和と安定の伝統は、中国との戦争に備えて島々を急速に軍事化しようとする米国と日本の財閥の動きに押しつぶされつつある。これは、中国との戦略的競争と大規模な軍事増強を利用して、日本と米国の内部的な経済的矛盾から目をそらし、軍事予算を大幅に増やすことで富裕層や権力者層のために人為的に経済を刺激しようとする危険な計画の一部である。
国連が沖縄に置かれることで、平和と紛争解決が沖縄の主要な役割となるだろう。
現在の沖縄にあたる琉球王国が、高度な外交で知られていたことを思い起こそう。琉球王国は、中国と日本が対立する要求を突きつける時期でさえ、文化交流を巧みに活用することで両国との緊密な関係を維持できた。地政学的争いのあらゆる側と文化的関わりをもってきた琉球の伝統は、国連がアジアに移転した後の姿のモデルとなり得る。
最後に、現在の国連はほぼ完全にヨーロッパの国際法、外交、地政学的戦略、政治哲学の概念に基づいて設立された。持続可能性、長期計画、農業、知的・精神的達成、倫理的実践を重視するアジアの豊かな伝統は、今後進化する国連の新たな方向性をかたちづくることができる。私たちが必要とする国連は、金銭や原材料ではなく、人々に焦点を当て、財団への富裕な支援者の短期的な利益ではなく、人類の長期的な運命に注力し、巨額の予算確保や派手な注目を集めることではなく、倫理的な習慣と政策の構築に専念する外交と紛争解決を追求する組織である。
沖縄に建設される新たな国連本部は、現代の課題に応えるための国連の変革を体現すると同時に、国連憲章に根ざした国際主義的(グローバリズム的ではない)原点への回帰をも象徴するものである。
<PROFILE>
エマニュエル・パストリッチ
1964年生まれ。アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビル出身。イェール大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(比較文学比較文化専攻)、ハーバード大学博士。イリノイ大学、ジョージワシントン大学、韓国・慶熙大学などで勤務。韓国で2007年にアジア・インスティチュートを創立(現・理事長)。20年の米大統領選に無所属での立候補を宣言したほか、24年の選挙でも緑の党から立候補を試みた。23年に活動の拠点を東京に移し、アメリカ政治体制の変革や日米同盟の改革を訴えている。英語、日本語、韓国語、中国語での著書多数。『沈没してゆくアメリカ号を彼岸から見て』(論創社、25年)、『USAを盗んだ男—トランプ、そして腐敗を極める輩たち』(論創社、26年)。








