政治経済学者 植草一秀
偏向報道と世論調査数値の創作。メディアの堕落が目を覆うばかりだ。高市訪米に対する評価は著しく低い。これを無理に高く評価する。戦前の報道そのもの。
ホワイトハウスに到着した高市首相をトランプ大統領が握手で迎えようとした。高市首相は愛人に抱きつくかのような振る舞いを演じた。政府公表の動画にはこの場面がない。編集で削除した模様。
トランプ大統領がバイデン大統領の肖像の代わりに揶揄の意味を込めてオートペンの写真を貼り付けたのを見て大笑いした高市首相。トランプの子息をイケメンと表現。夕食会での高市絶叫ダンス写真は米国公式サイトに掲載された。
高市首相はトランプ大統領との会談冒頭、英語で話そうとして撃沈。極めつきはトランプ大統領との会談冒頭で「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」と言い放ったこと。国際法、国連憲章を無視してイランへの軍事侵攻を指揮した人物にこの言葉を示すのは正気の沙汰ではない。
日本の心ある識者が正当な論評を示し、メディアがそれを伝えるなら世論調査で高市訪米は徹底的に叩かれる。これを回避するためにメディアが御用コメンテーターを出演させて「高市訪米大成功論評」だけを先制して垂れ流した。メディアの世論調査ほどいかがわしいものはないが、そのいかがわしい世論調査を活用して「高市訪米成功」というフィクションを打ち立てようとしている。
高市首相がイランへの自衛隊派遣要請に即応できなかった理由は日本国憲法第9条にある。憲法が日本が無法な戦争に巻き込まれることを防いだ。高市首相は憲法が邪魔したと考えているだろう。日本国民は喜ぶべきだ。憲法が盾となって無法な戦争への参画を免れた。
ここから得られる教訓は日本国憲法を守ることの重要性。憲法を守ることによって日本国民は守られる。高市首相が憲法の存在は邪魔だと考えるなら、なおさら憲法を壊してはならない。
こうした状況に直面するにつけて思い起こされるのは永井隆博士の言葉だ。永井博士は原爆で妻を喪い、自身も被爆して死に追い込まれた。死の瞬間まで医師として被爆者の救済に力を尽くした。その永井隆博士が自分の子に未来を託した。「いとし子よ」に痛切な思いが綴られている。
「私たち日本国民は憲法において戦争をしないことに決めた。」
「これこそ、戦争の惨禍に目覚めたほんとうの日本人の声なのだよ。
しかし理屈はなんとでもつき、世論はどちらへでもなびくものである。日本をめぐる国際情勢次第では、日本人の中から憲法を改めて、戦争放棄の条項を削れ、と叫ぶ声が出ないとも限らない。
そしてその叫びがいかにも、もっともらしい理屈をつけて世論を日本再武装に引きつけるかもしれない。
もしも日本が再武装するような事態になったら、そのときこそ…誠一(まこと)よ、カヤノよ、たとい最後の二人となっても、どんな罵りや暴力を受けても、きっぱりと〝戦争絶対反対〟を叫び続け、叫び通しておくれ!
たとい卑怯者とさげすまされ、裏切り者とたたかれても〝戦争絶対反対〟の叫びを守っておくれ!」
日本が誇る最大の価値。それが日本国憲法である。憲法を壊し、戦争をする国になるべきでない。国民を守る方策は「戦争」ではない。「戦争をしないこと」が国民を守る最良の方策だ。
戦争をしないために必要なものは「軍事力」ではなく「外交力」だ。核兵器を持たなければ国を守れないという。本当にそうだろうか。核兵器を持ったところで、使い方を誤れば国は簡単に滅びる。核を持たないなら核を持つ国に守ってもらうしかない。
本当にそうだろうか。他国が自国を犠牲にしてまで他国を守るだろうか。尖閣諸島で何らかの軍事衝突が生じたときに米国が米軍を出動させて日本を守る行動を示すか。日米安全保障条約があるから日本は守られると主張する人が多い。しかし、日米安全保障条約を精密に読んでも、尖閣でたとえば日本と中国の軍事衝突があったときに米軍が日本防衛のために出動することが確実とは読み取れない。
日米安全保障条約は次のように規定する。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」
を「自国の平和及び安全を危うくするものである」と認める。その上で、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」と書かれている。
尖閣諸島は領有権問題係争地。日本は領有権を主張するが、中国も主張する。米国は日本の立場にも中国の立場にも立たない。「領有権問題係争地である」と認定している。しかし、日本管理下には置かれている。
沖縄返還の際に、尖閣諸島施政権が日本に移行した。したがって、尖閣諸島は日米安保条約第五条の適用範囲である。この地域における「いずれか一方に対する武力攻撃」は「自国の平和及び安全を危うくするものである」と認められることになるが、その際に、米国が軍を出動して日本防衛の行動を取るとは書かれていない。「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」しか、書かれていない。
米軍が日本防衛のために軍事行動を取らなくても日米安保条約違反でない。核兵器を大量保有する米国と軍事同盟を結ぶことは日本に対する軍事攻撃を躊躇させる要因になるかもしれない。しかし、日本が日米軍事同盟に基づき、米国の命令に従い、軍備拡大を推進することが日本の平和と繁栄につながるとは言えない。
高市首相のように台湾有事があれば日本は中国との戦争状態に入ると宣言し、その上で南西諸島を中心に軍備拡大を猛烈な勢いで進めることは、日本の平和と繁栄の妨げになる可能性の方が高い。日本が中国に対する好戦姿勢を強める、日本が中国に対して軍事挑発を強めることは、東アジアでの戦争勃発を誘発する可能性が高い。そして、いざ戦争が勃発すれば日本はたちどころに殲滅される。日本に多数存在する原発にミサイル攻撃されるだけで日本は廃墟と化すだろう。
軍拡を推進し、東アジアの緊張を人為的に創作することは愚の骨頂。米国が本音で何を考えているのかを推察する「想像力」が必要。ウクライナの戦争はなぜ勃発したのか。そのウクライナ戦争で得をしたのは誰か。犠牲になったのは誰か。
米国は遠隔地で勃発した戦争で巨大な利益を獲得。ウクライナ自国内で巨大戦争が遂行されてウクライナ国民と国土が甚大な被害を受けた。東アジアでの戦争はウクライナ戦争と同種のものになるだろう。米国の言いなりになって、戦争を煽り、軍拡路線を突き進むことは日本国民の幸福にはつながらない。米国に媚びて米国に隷従する高市首相を退陣させることが必要だ。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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