武雄アジア大学の補助金19.5億円、議決の経緯(1)申請のために急かされた議決
(学)旭学園(本部:佐賀市、内田信子理事長)が4月に武雄市に開学した武雄アジア大学。4月4日に入学式が行われ、定員140名に対して、最終的に実際の入学生は37名となった。
前回記事『武雄アジア大学、アンケート調査の内容判明 「学生確保見込み169名」の実像』(4月1、2日掲載)では、武雄アジア大学が、文科省に対する設置認可申請書類で学生確保見込みを「169名」と結論付けていた内容と、実際の入学予定者数との乖離について分析した。
今回記事では、武雄アジア大学の設置認可申請に先立って、19.5億円の補助金が武雄市議会でいかにして議決されたかを議事録を基に見ていく。
武雄市議会が補助金を議決したのは「令和6(2024)年6月定例会」だ。補助金を含む予算案は、「第49号議案 令和6年度武雄市一般会計補正予算(第2回)」の1つとして賛成多数で可決された。また、同補助金は複数年度にまたがる債務負担行為であるため、「令和7(2025)年3月定例会」の「第23号議案 令和7年度武雄市一般会計予算」として賛成多数で再可決された。
以下では、まず24年6月定例会において、小松政市長と議員らがとくに武雄アジア大学のリスク面についてどのように議論し、補助金を決定するに至ったかを見る。
総事業費36.1億円のうち補助総額19.5億円の予算案
武雄市が24年6月議会に示した議案説明資料によると、小松市長らは武雄アジア大学の総事業費36億1,436万円(以下、1万円未満切り捨て)のうち、19億4,809万円(武雄市負担12億9,873万円、佐賀県補助6億4,936万円)を補助金として支援する予算案を提出した。一方の旭学園の負担金は、総事業費から補助金を差し引いた16億6,627万円が想定されていたことになる。なお、総事業費には26年度開学後、29年度分までの経常経費(運営費)も含むが、補助金19.5億円の用途は施設整備費、設計費、備品費が対象とされており、経常経費は旭学園の負担金16.7億円に含まれる。
リスク担保は、認可、学生確保、16億円、補助金交付要綱
小松市長が大学構想に対して19.5億円(うち武雄市負担13億円)にものぼる膨大な補助金を議会に提案した際に、リスクを担保する根拠として論じたのは次の4点、「文科省による大学設置認可」「学生確保見込み」、運営者である「旭学園の財務力」、「補助金交付要綱」だ。
まず設置認可について小松市長は、今後の審査となるため、あくまでも認可後に補助金を交付するという条件設定を示した。
次に学生確保見込みについて、小松市長は、「(学生確保見込みを調査する)アンケートについて、現在、集計の段階ではありますけれども、武雄アジア大学を第1志望として受験をする、かつ、合格したら入学するという回答をした生徒数につきましては、認可申請に必要といわれております入学定員を超えたというふうに、最新の情報として連絡があっている」と答弁し、あくまでも旭学園からの伝聞に依拠する形で、リスクは担保されているとの考えを示した。
3つ目の旭学園の財務力については、「体力があるかというところも大変大事であります。旭学園の令和5年度の事業実績、決算関係書類については市で確認をしておりまして、例えば特定資産や現金預金で16億円が確かに確保されている」と答弁し、「16億円」という数字を、旭学園の財務体力を示す材料として提示した。
4つ目の「補助金交付要綱」について、小松市長は、「様々なリスクに対しましても、他市の前例などを参考に、また市民が損害を被ることがないように、今後、補助金交付要綱等の制定や文書の締結につきまして、学園側と協議をしてまいりたい」と述べ、今後、要綱をまとめていくことで、リスクを担保するとの考えを示した。
以上を整理すると、市がリスク担保として示した4つのうち、「認可」は未来の交付条件であり、「補助金交付要綱」は今後まとめるものとされ、実際に議決時点で示された根拠は、「学生確保見込み」「旭学園の財務体力」のみだった。市側はこの2点について条件を満たしているとして、補助金の議決を求めた。
認可申請のために急かされた補助金予算化
「学生確保見込み」については前回記事でも検証したが、武雄市が「学生確保見込み」を旭学園からの報告のみに依存しており、自身では何ら検証を行っていなかったことを明らかにした。
では、補助金を決定した24年6月定例会の議決時点ではどうだったか。先に市長の答弁を引用した通り、「アンケートについて、現在、集計の段階」であり、結果は出ていなかったものの、「入学定員を超えた」という旭学園からの伝聞をもってリスクが担保されると主張している。補助金の交付対象者である旭学園からの伝聞をもって、19.5億円もの補助金のリスク担保の根拠とするのもおかしな話だが、大学の経営上重大な「学生確保見込み」を旭学園の報告のみに依拠する構造が、補助金決定の段階でできあがっていたことがうかがえる。
ところで、アンケートの結果が出ていない段階で補助金の予算化を急いだのはなぜか。それはなぜこの議会で補助金議決が必要とされたかという理由と同じなのだが、それについて小松市長は次のように説明する。
「認可申請をする手前では、やはり資金計画を含めて、膨大な量の申請書の準備が必要となります。その準備期間を考えると、今6月議会がタイムリミットであるというふうに考えております。」
この時点でまだ旭学園は武雄アジア大学の設置認可申請を行っていない。なぜなら申請には資金の裏付けが必要であり、旭学園の自己資金では足りないからだ。よって武雄アジア大学の設置申請を行うためにまず先行して補助金の予算化を行い、その裏付けをもって設置申請が行われることとなっていた。このような順番からもうかがえることは、武雄アジア大学構想は、旭学園のしっかりとしたリスク担保に対して補助金がつけられたのではなく、旭学園の説明や見込みを十分に検証しないまま、先行して補助金をつける形で進められた事業構想だった。
認可後も学生確保見込みの中身に踏み込まず
武雄市は大学を誘致した手前、旭学園に大学設置認可申請を行わせることを最優先事項とし、設置申請の必要という理由で、リスク評価は二の次で前のめりに補助金の予算化に進んだ状況がうかがえる。このような補助金の予算化で示された甘いリスク評価は、その後も武雄市の基本姿勢として引き継がれていくことになる。
武雄アジア大学の設置が文科省から認可された後、25年9月定例会で江原一雄議員が、学生確保と経営持続性への不安を指摘する質疑を行ったのに対して小松市長は次のように答弁した。
「大学の設置の審査というのは厳格化、ここ数年、近年、厳格化されているというふうに聞いています。(中略)国においても、武雄アジア大学のそういった教育内容、財務状況、そして学生確保の見込み、そういったものについて一定の妥当性を確認し、認めたということだと思っています。」
この発言に小松市長の基本スタンスが集約されている。文科省の認可をもって、学生確保見込みや財務状況の実質的な妥当性まで裏打ちされたかのように受け取る答弁だが、これは、審査制度の“建前”に大きく依拠した答弁だ。いくら国の審査で認可されたからと言っても、現実の学生募集において、実際に学生をどれほど確保できるかは全くの別問題だ。にもかかわらず、武雄市は「認可を得た」あるいは「旭学園から入学定員(140名/年)を満たすとの報告を受けている」という論拠にとどまるばかりで、「学生確保見込み」の現実性を自ら踏み込んで検証しようとはしなかった。
このように、議会でたびたび学生数確保の懸念が示されるのに対して、正面から向き合わない市執行部の姿勢はその後も継続された。たとえば同年12月定例会で朝長勇議員は次のように質疑した。「既に出願期間がもう終わっているということになるわけですね。このパンフレット上の話ですけれども。総合選抜の1期 15 名と、学校推薦の 70 名と、留学生については出願期間が終わっているということですけれども、この現時点の応募状況についてどうなっているかお伺いいたします。」
これに対して市担当者は、「武雄アジア大学を運営される学校法人旭学園に学生募集状況について問い合わせたところ、学生確保の状況につきましては、すべての入学試験が終了し、入学者が確定した後、公表することとしますと回答がありました」と答弁するばかりだった。すなわちこれは、先日3月26日の武雄市議会全員協議会で入学予定者数の報告が行われた通り、武雄市としてこのときまで学生数が何人程度になるかも確認しないことを了承したと言っているに等しい。
以上を見る限り、学生確保が想定を下回る可能性や、それによって武雄アジア大学の経営が不安定化するリスクを、武雄市自身のリスクとして認識していた様子はうかがえない。
次回記事では、リスク担保のもう1つの根拠とされた「16億円」について見てみる。
(つづく)
【寺村朋輝】










