2024年05月05日( 日 )

CoCo壱番屋の不正転売~問われる管理責任

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 カレーハウスCoCo壱番屋を展開する(株)壱番屋(愛知県一宮市、東証・名証一部上場)は、異物が混入した冷凍ビーフカツを産業廃棄物業者に廃棄処分を依頼したものの、廃棄処分されずに店頭で販売されていたことが判明。大きな社会問題となっている。

 今回の問題を時系列でまとめると、以下のようになる。

<2015年>
9月2日
・壱番屋は、愛知県一宮市の自社工場で冷凍ビーフカツ(4万609枚)を製造したが、出荷前のサンプル検査で、製造機械の一部が破損し直径約8ミリの樹脂が混入したことが判明。該当品の出荷停止を決める。

10月19日
・産業廃棄物業者のダイコー(愛知県稲沢市)に該当品の廃棄処分を依頼し、引き渡す。

<2016年>
1月11日
・壱番屋のパート従業員が、同県津島市のスーパー「Aマートアブヤス」の神守店の店頭で、「ココイチのビーフカツ」と表示・販売されていた該当品を発見。不審に思い、本部に連絡。
・壱番屋がダイコーに確認したところ、廃棄するはずの冷凍ビーフカツを仲介業者(みのりフーズ)に転売したことを認める。

1月13日
・壱番屋は自社のホームページに、「廃棄を依頼した冷凍ビーフカツが不正に転売された」旨を発表。
・愛知県の依頼を受けて、岐阜県は「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)に立ち入り調査を実施。取引の状況を示す伝票等はなかったが、壱番屋の名前が印刷された段ボールの空き箱約800箱が残っていたのを確認。

1月14日
・愛知県警は、廃棄物処理法違反容疑でダイコーを家宅捜索。廃棄処分を委託された該当品約4万枚のうち、7,000枚を廃棄処分したものの、残り3万3,000枚をみのりフーズに1枚33円で販売していたことが判明(総額約109万円)。

1月15日
・岐阜県の発表内容によると、みのりフーズの冷凍庫から新たに壱番屋のメンチカツとロースカツが見つかった。さらに冷凍庫には壱番屋の商品以外にも、骨付きフライドチキンなど200箱以上保管されていたが、大半は賞味期限切れだった。
・県の事情聴取に、みのりフーズの実質経営者の岡田正男氏(78歳)は、「ダイコーから入手した」と説明。
・みのりフーズは複数の業者に販売。多治見市光ケ丘のスーパー「ヒバリヤ」は2,300枚を購入し、「ヒバリヤ多治見店」では問題のビーフカツ計885枚が完売。また、スーパーを展開する山彦(愛知県稲沢市)も、海津市の「生鮮館やまひこ海津店」で壱番屋のビーフカツ100枚を総菜として販売済み。

● ● ●

 上記の経緯は大まかではあるが、今回の問題は廃棄されるはずの冷凍ビーフカツが、壱番屋 → ダイコー → みのりフーズ → 各スーパーという経路で流れた、一連の不正転売だと言えよう。

問われる管理責任

 壱番屋が、出荷前のサンプル検査により発見した異物混入の可能性がある製品を、製造時における異物混入時点が限定できなかったということで、混入の可能性がある全ロットの廃棄処分の決定を下したことは、上場企業の対応として立派だと言えよう。

 ただ、ここで問題となるのは、壱番屋が該当品を裁断処理することなく、産廃業者に廃棄処理を頼んでしまったことだ。相手は、海千山千の業者である。きちんと裁断を行ったうえで廃棄処理を依頼していれば、そもそも今回の不正転売問題は起こることがなかったはずだ。
 今回の問題での真の被害者は、何も知らないまま購入し、すでに口にしてしまったかもしれない消費者である。もちろん、壱番屋も被害者であるのは間違いないが、その一方で、不正転売を誘発してしまったという点では、詰めが甘かったと言わざるを得ない。

 今、壱番屋に求められているのは、上場企業としての、さらに一歩踏み込んだ管理体制の強化ではないだろうか。

【北山 譲】

 

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