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2016年01月25日 09:05

TPP批准は止められる~山田正彦元農相に聞く(4)

 TPP(環太平洋連携協定)協定をめぐって、開会中の通常国会で審議が本格化する。元農水大臣で、弁護士の山田正彦氏(TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会幹事長)に、TPP協定案の問題点や、加盟12カ国の批准の見通しなどについて話をうかがった。

(聞き手・山本 弘之)

医療――薬の値段が上がり、高額医薬品が保険適用外に

 山田 もう1つの大問題は、医療だ。TPPの最大の狙いは、医療。皆保険制度はなくならないと政府は説明して回った。確かに、皆保険制度や国民健康保険制度などをなくすというような条項はない。

 ――実際には、どうなりますか。

山田 正彦 氏<

山田 正彦 氏

 山田 そこで一番の問題になるのが、まず薬価の決め方がどうなるか、だ。私が調べた限り、協定案には、それに触れたものがない。だから、ここからは私の解釈だと断って話すが、TPPは、貿易自由化、関税撤廃、12カ国は内国民待遇、同じルールでやるということで、各国が一致している。薬価の決め方も同じルールになると思う。
 そうなった場合に、どんな商品でも自分で価格を決めて売れるのと同じように、米国の製薬会社は自分で価格を決めて売れる。だから米国の製薬会社が自分の決めた価格で売れるようになる。そうすると、価格があまりにも高額なので、保険の適用外になる。

 混合診療が、患者申し出療養制度として2016年3月から始まる。すでに肝臓がんの新薬が、1錠あたり、化学合成品だから原価100円だけど、8万円で承認された。患者申し出療養制度導入は、15年9月の安保法案の議論に隠れて、決まってしまった。患者の申し出によって、国保や社会保険の適用がない保険適用外で、自由診療が受けられるようになった。これからすべての新薬がそうなってしまうと懸念している。今までは、薬価は厚労大臣が安く抑えられたが、これからは製薬会社が自分で決めていく。しかも、データ保護期間があるから、いくら特許料を払っても、その期間は、ジェネリック薬品をつくれない。その結果、医療費がとてつもなく高くなる。国民皆保険制度があったとしても、そのような高額な薬を保険診療の対象にしたら、国の医療費負担が天井知らずに増加してしまうから、政府は保険適用外の自由診療にしてしまう。ということは、交通事故の自賠責保険と任意保険と同じような形になり、任意保険に入らなければいけなくなる。

医療保険に入らなければ、新薬、新しい医療は受けられなくなる

 ――つまり、アフラックなどの医療保険に追加で入っておかないとカバーできなくなる。国民皆保険制度の骨抜きだ…。

 山田 インプラントのように、お金のある人しか新しい治療は受けられなくなり、効果の高い新薬、先進医療は受けられないかたちになる。前から米国のようにタミフル1本7万円になると言っていたが、肝臓がんの新薬は1錠8万円を承認した。米国の製薬会社の言いなりになっていく。

 ――肝臓がんの新薬、今後の保険適用の方向は…。

 山田 まったくない。だからこれからのがん患者は非常に高い治療を受けないといけない。そうやって製薬会社が利益をあげていく。ファイザーがアイルランドのアラガン社を買収し、本社をアイルランドにおくことで租税を回避できる金額は9兆8,000億円と言われている。一方、ファイザーが米国政府に届け出ているロビー活動費は5,000億円と言われている。その規模のロビー活動を日本でもふんだんに使うようになれば、日本はとんでもない社会になっていく。

 ――ロビー活動費5,000億円あれば、ISD条項違反で訴える訴訟費用6億円はなんということもない。

 山田 TPPの大筋内容は、2014年にオバマ大統領が日本に来て、寿司屋の「すきやばし次郎」で“握って”(合意して)しまった。政府は「誤報だ、誤報だ」と言ってきたけれど、それが真実だった。国民はだまされていた。「まだこれからもだまされるつもりか、国民よ」と、私は問いたい。

(つづく)
【取材・文:山本 弘之】

▼関連リンク
・TPP交渉差止・違憲訴訟の会
・TPP大筋合意アトランタ現地報告~山田正彦元農水相

<プロフィール>
yamada_pr山田 正彦(やまだ・まさひこ)
元農林水産大臣。弁護士。TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長。1942年、長崎県五島生まれ。早稲田大学卒業。牧場経営などを経て、1993年の初当選以来衆院議員5期。農業者戸別所得補償制度実現に尽力。『輸入食品に日本は潰される』(青萠堂)、『小説 日米食糧戦争 日本が飢える日』(講談社)、『TPP秘密交渉の正体』(竹書房新書)など著書多数。

 
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