【企業研究】石炭なき三井松島は何の会社か M&Aと資本配分で描く次の成長像

三井松島ホールディングス(株)

 約110年続いた石炭生産・販売事業から撤退した三井松島ホールディングス(株)。現在の収益基盤は、ストロー、シュレッダー、半導体関連設備、送電線用金具、産業用チェーンなど、M&Aで取得した多様な企業群へと入れ替わった。さらに上場株式投資やロールアップM&Aにも踏み込み、資本配分そのものを成長の軸に据えつつある。今後は、日本のニッチなものづくり企業を束ねる「産業持株会社」へ近づくのか。石炭会社は何の会社へ変わったのか。損益・財務構造、他社との比較、中期経営計画から、その現在地と今後の企業像を探る。

110年の炭鉱事業を終え
M&Aで多様な企業群へ

 三井松島ホールディングス(株)(以下、三井松島HD)は、何の会社なのか。もともと同社は1913年、長崎県で松島炭鉱として創業した。91年には豪州リデル炭鉱へ進出し、2001年に国内での採炭事業から撤退した後も、海外での石炭生産・販売を事業の柱としてきた。12年に同社は石炭事業以外でのM&Aに着手をはじめ、14年の日本ストロー(株)買収以降、非石炭分野へのM&Aを本格化させた。18年10月には持株会社体制へ移行し、現商号となった。そして、リデル炭鉱の終掘にともない、24年3月期をもって約110年にわたって主事業としてきた石炭生産・販売事業を終了した。25年3月期以降、事業区分から石炭事業が消えたが、売上高600億円台、純利益60億円超の業績規模を維持している。

 石炭事業からの撤退後、同社の事業構造は大きく変化した。【表1】は同社のM&A状況をまとめたものだ。現在の事業分野は、生活消費財、産業用製品、金融その他の3つとなっている。注目されるのは、買収先企業の業態がストロー、シュレッダー、ペットフード、住宅部材、水晶デバイス製造設備、送電線用金具、感熱レジロール、計量機、産業用チェーンと、製品や顧客分野でほとんど共通性がないことだ。通常の製造業が既存技術や顧客基盤を利用して周辺分野へ事業を広げていくのとは、性格が大きく異なっていることがわかる。

【表1】三井松島HDのM&A履歴(金額単位/百万円)

セグメント 会社名 階層・親会社 グループ入り 取得時売上高 取得価額 主力事業 本社所在地
生活消費財 日本ストロー㈱ 連結子会社 2014/02/03 3,818 3,100 伸縮・シングルストロー、包装資材 東京都品川区
生活消費財 ㈱明光商会 連結子会社 2019/04/26 8,318 6,507 シュレッダー等の事務用設備 東京都中央区
生活消費財 T SECURE INTERNATIONAL CO., LTD. 明光商会傘下 2021/08/02     シュレッダー製造・販売 タイ・プラーチーンブリ県
生活消費財 ㈱ケイエムテイ 連結子会社 2020/04/01 1,417   ペットフード・用品 大阪府泉大津市
生活消費財 ㈱システックキョーワ 連結子会社 2021/02/01 1,540   住宅・家具向け金物・プラスチック部材 大阪市平野区
生活消費財 THAI SYSTECH KYOWA CO.,LTD. システックキョーワ傘下 2021/02     住宅・家具向けプラスチック部材 タイ・ナコーンラーチャシーマー県
生活消費財 MOS㈱ 連結子会社 2023/02/15 7,536 2,355 感熱レジロール等の加工販売 東京都港区
生活消費財 ㈱山洋 連結子会社 2026/08/21 3,641   綿棒・綿球(一般用、工業用、医療用) 大阪府富田林市
生活消費財 ㈱コウナン 連結子会社 2026/08/28 2,594   感熱レジロール加工販売、紙卸、印刷 大阪府門真市
産業用製品 CST㈱ 連結子会社 2017/02/01 2,681 4,020 マスクブランクス 神奈川県高座郡
産業用製品 三生電子㈱ 連結子会社 2020/04/01 2,793   水晶デバイス用計測器・生産設備 東京都狛江市
産業用製品 Sansei America, Inc. 三生電子傘下 2024/01(新設)     米国事業統括・水晶デバイス関連 米国アリゾナ州
産業用製品 Saunders & Associates, LLC 三生電子→Sansei America傘下 2024/01/31     水晶デバイス関連装置・サービス 米国アリゾナ州フェニックス
産業用製品 日本カタン㈱ 連結子会社 2022/05/09 3,955 1,927 送配電線用架線金具 大阪府枚方市
産業用製品 ㈱プラスワンテクノ 連結子会社 2023/09/01 576   食品加工用自動計量機 北九州市八幡西区
産業用製品 ㈱ジャパン・チェーン・ホールディングス 連結子会社 2023/12/08 15,219 4,334 産業用チェーン事業の持株会社 東京都千代田区
産業用製品 ゼクサスチェン㈱ JCH傘下 2023/12     大型コンベヤチェーン等 東京都/埼玉県
産業用製品 ㈱杉山チエン製作所 JCH傘下 2023/12     ローラーチェーン等 埼玉県入間市
産業用製品 MAXCO Chain Ltd. JCH傘下 2023/12     産業用チェーン販売等 米国
金融その他 ㈱エム・アール・エフ 連結子会社 2024/07/01 3,684 12,321 事業者向け不動産担保融資 福岡市中央区
金融その他 MM Investments㈱ 連結子会社 2024/08(新設)     上場株式投資 福岡市中央区
金融その他 港倶楽部オペレーションズ㈱ 連結子会社 2019(新設)     三井港倶楽部の管理運営 福岡県大牟田市
持分法 ㈱花菱 持分法適用会社(34%) 2015/10/01 4,496 2,082 オーダースーツ さいたま市岩槻区
 
離脱済み ㈱エムアンドエムサービス 2020/3/31売却 2012/07/17 6,540   宿泊施設運営・保養所運営受託 大阪市中央区
離脱済み 永田エンジニアリング㈱/MM Nagata Coal Tech㈱ 事業売却・清算 2012/05/15     石炭選別・資源選別エンジニアリング 北九州市
離脱済み PT Gerbang Daya Mandiri 持分法除外 2012/07     インドネシア石炭の生産・販売 インドネシア・東カリマンタン州
離脱済み SQUARE RESOURCES HOLDING(NO. 2) PTY LTD 2023/6/15売却 2020/06/01     天然資源マーケティング・トレーディング 豪州クイーンズランド州
離脱済み MMライフサポート㈱ 2022/12売却 —     介護事業 —
離脱済み 松島港湾運輸㈱ 2024/3売却 —     港湾運送等 長崎県西海市

 だが、企業そのものの性格を見ると一定の共通点もうかがえる。CST(株)は国内初のマスクブランクス専業メーカーとして国内外の有力企業を顧客にもち、三生電子(株)は水晶デバイスの組立から検査までをカバーするインラインシステムを構築できる装置メーカーだ。また、日本カタン(株)は高圧送電線用架線金具、(株)ジャパン・チェーン・ホールディングス傘下企業は産業用チェーンで高い市場シェアをもつ。これらの企業は業界としては関連性がないものの、それぞれ特定市場で高い競争力をもち、安定的な利益を生み出している。

石炭撤退後に変わった
損益と財務の構造

 事業分野別の業績を見ると、26年3月期の売上高は生活消費財271億2,400万円、産業用製品332億5,500万円、金融その他51億5,100万円、セグメント利益はそれぞれ24億5,900万円、50億6,100万円、20億5,200万円となっている。石炭価格の上昇によって利益が大幅に膨らんだ23年3月期~24年3月期には届かないものの、それ以前の業績はすでに上回っている。

要約貸借対照表/既往の業績

 また、事業転換は貸借対照表にも大きな変化として表れている。石炭事業最終年度だった24年3月末から26年3月末までを見ると、総資産は997億4,000万円から1,279億2,100万円へ増加する一方、純資産は640億2,300万円から558億円へ減少した。現金および預金は24年3月末の343億4,100万円から57億100万円へ減少した一方、投資有価証券は約32億円から213億9,700万円へ増加した。短期借入金と長期借入金の合計も75億5,400万円から502億3,700万円へ増え、自己資本比率は63.6%から43.5%へ低下した。

 短期借入金には24年7月に子会社化した金融会社である(株)エム・アール・エフの営業貸付金に対応する資金調達が含まれる。また、26年3月期には長期借入れによって175億円を調達する一方、自己株式の取得に180億5,600万円を投じた。

 M&Aの動きはのれんにも表れている。26年3月末ののれん残高は152億1,400万円に達しているが、26年3月期に(株)システックキョーワについて当初想定していた収益が見込めなくなったとして、のれん6億8,700万円を減損している。

M&Aを進めた三井松島は
何の会社になったのか?

 先述の通り、三井松島HDがM&Aで取得した企業群は、かつての石炭事業と技術的、事業的な連続性がほとんどない。このような事業転換の特徴を他社との比較から見てみる。【表2】は大きな事業転換を経験した他企業との比較表だ。

【表2】代表的な業態転換企業の類型比較

企業 転換類型 旧事業との技術・能力連続性 出発点 転換の契機 転換の主手段 M&A対象の関連性 現在・転換後の中核 企業をつなぐ共通軸 三井松島との対比
富士フイルム 技術転用型 強い 写真フィルム デジタル化で写真フィルム需要が急減 既存技術の棚卸し・転用+M&A 比較的高い ヘルスケア、エレクトロニクス、イメージングなど 化学・材料・画像などの技術基盤 本業の商品は変わっても、祖業で蓄積した技術の幹が残る
TDK 技術連続・製品更新型+M&A 強い フェライトなど磁性材料 記録媒体など既存市場の変化と電子機器の進化 材料・プロセス技術の展開+M&A 中~高。既存事業から派生する領域を重視 受動部品、センサー、磁気応用、エナジー応用 材料技術・プロセス技術・電子部品技術 製品ポートフォリオは大きく変わるが、材料・加工技術の連続性が強い
ニデック 関連領域M&A拡張型 強い モーター 成長領域の拡大、製品・市場の変化 関連領域M&Aで『時間を買う』 高い 精密小型~車載・産業用などモーターと周辺領域 『回るもの、動くもの』とモーター技術 M&Aを成長装置とする点は似るが、投資対象に明確な技術的境界がある
オリックス 能力隣接型・多角化型 中~強 リース リース市場の成熟・競争激化、顧客ニーズの変化 リースで培った金融・モノの専門性から隣接分野へ拡張+M&A 中。業種は広いが能力の隣接性がある 法人金融、投資、不動産、環境エネルギー、事業運営など 金融・与信、モノの専門性、投資判断 多業種を抱える点は似るが、リースから派生した能力の連鎖を追いやすい
ソニーグループ 共通軸再構成・ポートフォリオ収斂型 中 エレクトロニクス/音響・映像機器 エレクトロニクスの収益変動と事業ポートフォリオ再構築 事業再編、コンテンツ・IP投資、M&A、金融事業のパーシャル・スピンオフ 中。クリエイション・IPとの戦略適合性を重視 ゲーム、音楽、映画などエンタテインメント+イメージセンサー クリエイション、IP、技術 事業を広げるだけでなく、近年は『クリエイション』へ共通軸を絞り込む方向
バークシャー・ハサウェイ 永久資本・資本配分型 弱い 繊維 繊維事業の構造的低収益 事業買収・株式投資・資本配分 低い/多業種 保険、鉄道、エネルギー、製造・サービス、小売、株式投資など 資本配分、経営者選定、長期保有 構造は最も近いが、保険フロート、規模、分権度など前提条件が大きく異なる
三井松島HD ニッチ企業集積型/産業持株会社への移行 弱い 石炭 国内炭鉱閉山、豪州リデル終掘、石炭事業終了 異業種M&A+上場株式投資+資本配分 低いが、近年は製造業のニッチトップへ収斂 生活消費財、産業用製品、金融その他+上場株式投資 資本配分、ニッチ分野で高い技術をもつ企業  

 富士フイルムやTDKは、主力商品を大きく変えながらも、祖業で培った技術を次の事業へ引き継いだ企業だ。富士フイルムは写真フィルム需要の急減に対し、写真感光材料で蓄積した化学、材料、画像などの技術を医療や高機能材料へ展開した。TDKも、フェライト(磁性材料)を起点に磁気テープ、磁気ヘッド、電子部品へ事業を広げ、その後は電池やセンサーなどへ進出した。扱う製品は大きく変わったものの、材料、磁性、プロセスなどの技術の系列はつながっている。つまり両社は、「本業の商品」は変わっても、本業を生み出す技術の幹を残しながら業態を転換したといえる。

 一方、ニデックやオリックスは、既存の企業能力を周辺領域へ広げることで事業を拡大した企業だ。ニデックはM&Aを、技術や販路を自前で育成する「時間を買う」手段と位置づけてきたが、対象は「回るもの、動くもの」を中心とするモーターとその周辺分野だ。M&Aを積極的に行っても、投資対象には明確な技術的境界がある。

 オリックスは1964年の創業以来、リースから法人金融、自動車、不動産、環境エネルギー、事業投資、生命保険などへ事業を広げた。一見すると関連性の薄い事業群に見えるが、その起点には、顧客の信用力を判断する「金融」と、機械や不動産などの資産価値を見極める「モノ」の専門性がある。ニデックが技術領域を、オリックスが金融と資産評価の能力を周辺分野へ広げるかたちで、現在の事業構造を形成してきたと理解することができる。

 また、ソニーグループは、多角化した後に改めて事業の共通軸をつくろうとしている例だ。エレクトロニクスからゲーム、音楽、映画、金融などへ事業を広げたが、近年はゲーム、音楽、映画のエンタテインメント3事業とイメージセンサーなどを「クリエイション」という観点で結び直している。25年には金融事業をパーシャル・スピンオフし、資本配分もこの共通軸へ集中する方向を明確にした。

 こうして比較すると、三井松島HDの業態転換はかなり異質だ。富士フイルムやTDKのように祖業の技術を転用したわけではなく、ニデックのように既存技術の周辺へM&Aを広げたわけでもない。オリックスのように祖業で培った能力を隣接分野へ展開した経路も見えにくく、現時点ではソニーのように異なる事業を結ぶ共通の製品・技術領域が形成されているわけでもない。

ファンドとは違う
資本配分がグループの軸

 その代わりに同社が自社に蓄積してきたノウハウとして示すのが、企業を選び、評価し、買収する能力だ。同社は26年5月に発表した中期経営計画2030において、M&A経験をもつ経営陣の下に社内FA(ファイナンシャル・アドバイザー)チームを構築し、買収候補の開拓、目利き、投資判断、買収後の経営改善までを担う体制を示した。26年4~6月の3カ月だけでも60件超の案件を検討したという。

 では、三井松島HDは事業会社というより投資ファンドになったのか。企業を探し、価値を評価し、買収し、買収後の価値向上を図るという機能だけを見れば、PE(プライベート・エクイティ)ファンドとの共通点は大きい。事業承継案件、ファンドのEXIT案件、事業会社のカーブアウトなど、さまざまな案件に対応するという同社の説明からも、企業買収そのものが専門機能として社内に内製化されていることがうかがわれる。

 一方で、買収後の考え方は多くのPEファンドとは異なる。同社は事業承継先に対し、「経営の自主性尊重」「承継後の売却は原則なし」「長期的かつ安定的な利益貢献を期待」と明示している。グループ入り後も経営は基本的に各社のプロパーに委ね、本社は会計、法務、設備投資などを支援する。短期間で企業価値を高めて売却することを前提とするのではなく、取得企業そのものを長期的な収益源として保有する考え方だ。

 もちろん、実際にはすべての企業を永久に保有しているわけではない。15年に100%子会社化した(株)花菱については、24年4月に株式の66%を他社へ譲渡し、現在は34%保有の持分法適用会社にした。それでも、売却益を得るために企業を取得することを基本モデルとするファンドとは性格が違う。三井松島HDは、相互に関連性が薄い企業を買収先にしながらも、事業会社として長期保有する持株会社という位置づけに近い。

日本版バークシャー型か
三井松島はニッチ専門

 この構造に最も近い企業モデルとして思いつくのが、米バークシャー・ハサウェイだ。バークシャーは繊維会社として出発したが、ウォーレン・バフェットのもとで1967年に保険会社National Indemnityを取得し、その後、資本を収益性の高い事業へ振り向けていった。構造的な低収益に陥った繊維事業は85年に閉鎖。現在は保険、鉄道、エネルギー、製造、サービス、小売など幅広い企業を傘下にもち、上場株式にも巨額を投資している。特定の製品や技術ではなく、事業買収、既存事業への投資、上場株式投資、自社株買いなどから資本の投入先を選択することなどを、持株会社バークシャーの重要な機能としている。

 一方の三井松島HDも、M&Aによる企業買収に加え、既存グループ会社への投資と、MM Investments(株)を通じた上場株式投資を成長戦略に組む。どの事業や企業へ資本を振り向ければグループ全体の価値を高められるかを判断する機能を重視する点では、バークシャーと共通する資本配分型の持株会社に近い構造へ変化しているとみることができる。

 もちろん、両社を単純に同じ類型とみることはできない。まず規模が圧倒的に違う。バークシャーの2025年12月期の総収益は3,714億4,400万ドル(1ドル=157円で約58兆3,200億円)、純利益は669億6,800万ドル(同約10兆5,100億円)だった。資金調達の構造にも違いがあり、バークシャーでは保険事業が巨大な「フロート(他人資金・未決済資金)」を生み、企業買収や株式投資に振り向ける長期的な資金源の1つになっている。

 もう1つ重要なのが、投資対象の背景となる産業基盤の違いだ。バークシャーは主たる事業基盤を米国に置き、保険、鉄道、エネルギーから製造、小売まで幅広い業種を対象としてきた。それに対し三井松島HDが現在、M&Aの中心に据えるのは、確かな技術力をもつ日本のニッチトップ企業だ。

 日本には、素材、部材、加工、製造装置など特定の工程や製品分野で高い技術力を培った中堅・中小企業が数多く存在する。三井松島HDは、こうした企業群のなかから、ニッチ市場で競争力をもち、安定した収益を生む企業を見つけ出し、M&Aによってグループ化しようとしている。つまり、米国の巨大な企業・資本市場を背景に多業種へ資本を配分してきたバークシャーに対し、三井松島HDは、日本の企業風土のなかで培われた細分化された高いものづくり技術そのものを、M&Aの投資機会として取り込もうとしているとみることができる。

 このため、三井松島HDは資本配分を本社機能の中核に置く点ではバークシャー型に近いが、投資対象を日本のニッチなものづくり企業へ寄せ、その技術や事業を長期保有しながら企業群として育てようとしているところに独自の性格がある。資本配分型持株会社という仕組みに、日本の製造業が培ってきた技術集積を組み合わせたモデルと捉えたほうが実態に近い。

M&A型経営はどこまで続くか
2030年に純利益100億円

 三井松島HDは26年5月に「中期経営計画2030」を策定した。30年3月期に当期純利益100億円以上を目標とし、そのための成長戦略として、①M&Aによる連続的成長、②上場株式投資による収益源の多角化、③グループ会社による収益拡大の3つを掲げた。これらに総額400億円程度を投じる計画だ。

 1つ目のM&Aでは、これまでの「ニッチ・安定・わかりやすい」という投資方針を維持しつつ、製造業、とくにたしかな技術力をもつニッチトップ企業への投資を重視する。同社は中経計2030で「日本のものづくりを100年先まで守り育てるプロ企業の集合体」を目指すと明示した。石炭撤退後の収益基盤をつくるために異業種企業を取得してきた段階から、「日本のものづくり」という方向性をより明確にした企業取得へ重心を移そうとしている。

 2つ目が上場株式投資だ。24年8月に設立したMM Investmentsを通じ、割安と判断した上場株式へ長期純投資する。M&Aとは別に上場株式も資本配分先とすることで、投資機会を広げる。

 3つ目は、すでに傘下に入ったグループ会社の成長だ。同社は、経営改善などによる有機的な成長に加え、既存子会社を核として同一または周辺業界の企業を追加取得する「ロールアップM&A」を成長手段として掲げる。

「集めるM&A」から
「束ねるM&A」へ

 この方向性を考えるうえで注目されるのが、直近のM&Aだ。26年7月には綿棒メーカーの(株)山洋、8月には感熱レジロールを手がける(株)コウナンの買収を発表した。なかでもコウナンは、既存子会社MOS(株)と同じ感熱レジロールを主力とする企業だ。三井松島HDは、両社の生産拠点の地域的な補完関係や製造ノウハウの共有によって競争力を高める考えを示している。

 これまでのM&Aは、ストロー、シュレッダー、ペットフード、送電線用金具、計量機、産業用チェーンなど、それぞれ異なるニッチ市場の企業を取得するものが中心だった。その意味でコウナンの案件は、既存子会社と同一業界の企業を追加取得するという、従来とは異なるM&Aの使い方を示しており、既存企業を核に同一・周辺業界を束ねるM&Aへ踏み出そうとしているように見える。

 この仕組みが定着すれば、今後さらに三井松島HDの企業像が変わっていく可能性がある。異なる優良企業を保有して資本を配分するだけなら、バークシャー型の持株会社に近い。一方、ニッチ製造業を複数の企業群として形成し、傘下企業で蓄積したコスト管理や生産工程管理などのノウハウを横展開するなら、より「産業持株会社」に近い性格が強まることになる。

 三井松島HDは、現時点で、石炭に代わる1つの新しい本業を獲得したとはいえない。しかし、石炭後の事業を模索するなかで、M&Aの案件発掘、企業評価、投資判断、PMI、資本配分という機能を本社に蓄積し、傘下にはニッチトップの企業群で独自の事業構造を構築しつつある。投資会社と産業持株会社の双方の性格をもちながら、今後どのような方向へ企業群を拡大していくのか。石炭事業を終えた三井松島HDは、なお業態転換の途中にある。

【寺村朋輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉岡泰士
所在地:福岡市中央区大手門1-1-12
設 立:1913年1月
資本金:85億7,179万5,866円
売上高:(26/3連結)654億6,800万円

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