2024年04月19日( 金 )

障がい者雇用の常識に挑む

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

一般社団法人 障害者自立支援協会 理事長 荒牧 功一

障害者雇用の現状を知り、協会を設立

一般社団法人 障害者自立支援協会 荒牧 功一 理事長<

一般社団法人 障害者自立支援協会 荒牧 功一 理事長

 当協会は障がいの程度に合わせ、仕事を提供し、自立を支援しています。障がい者が困っていることは仕事がないことと、賃金が低いこと。これでは自立した生活は難しい。これらを改善する仕組みを本格的につくろうと考えました。日本全国に障がい者を支援する団体がありますが、運営は国からの給付ありきになっています。高齢化、そして人口減少にともない、国からの給付が減少していくのは目に見えています。やはり外部からの収入を増やしていかねばなりません。ビジネス感覚を取り入れて運営していかねば、2つの目的は達成できないと思っています。

 本格的に事業を始めて3年が経過しますが、まだまだ満足した結果には至っていません。当協会では、これまで複数の会社を立ち上げました。そのなかでも、ITを活用した事業展開を行う、(同)あんしん生活が徐々に成果を出し始めたことは1つの成果だと感じています。現在、障がいを持つ方を含め、90名ほどの職員がいます。4時間パートで採用した方を正規職員に登用できたこと、アプリ開発を手がける方の賃金をアップさせることができたこともあり、少しずつですが目的に向かって進み始めています。

企業、社会、行政に求めたい意識変革

 まずは企業が障がい者の自立をどう応援しているのか、はっきりと見えてきません。企業には法律で障がい者を雇用する義務がありますが、本当に入社を歓迎しているでしょうか。仕方なく雇っているなら、それは双方が不幸だと思うのです。雇用する企業側の意識を変えてほしい。
 また社会全体でも健常者と障がい者の間に大きな垣根があって、お互いを知る機会が少ないのです。たとえば、幼い頃から、同じ集団のなかで双方がコミュニケーションを取っていれば、障がいの有無を意識しなくなります。今はあまりにも接点が少ないと思います。
 さらに障がい者に関する行政の担当課が複数にわたっています。たとえば障がい者手帳の申請や年金についても、担当が異なりますし、ワンストップで対応できる環境が整っていません。就労したいが、できないので、起業したいという障がい者もいます。

 では、それを誰が支援するのかなど、障がいを持つうえに、不公平な状況がいくつもみられます。ただし、行政がすべてやっていくのは困難であることもわかっています。だからこそ、民間の力が必要なのです。税収の減り続けるなかで、障がい者が自立できるようになれば、生活保護も必要ではなくなるかもしれません。支援団体、民間企業、そして行政とすべてが関わっていかないと、この問題の根本的な解決にはなりません。

新事業で共助社会を実現したい

 昨春より「あんしんでんわ」事業を立ち上げました。1人暮らしの高齢者を対象に、低額で会員を募ります。入会した方から、電話で相談を受け付け、パートナー企業を紹介し、お困りごとを解決する仕組みです。そのコールセンターで障がい者を雇用します。買い物代行や家電の修理、リフォーム、遺産相続など、すべてワンストップで対応していく取り組みです。民間企業に参画してもらい、地域で共助社会を築き上げたいのです。生活上の悩みを持つ高齢者は日本全国にいます。すでに福岡市外からも同事業の参画に興味を持つ団体があり、同事業が軌道に乗れば、全国的な展開も可能だと思います。事業に関わるすべての方に、喜んでいただけるよう、展開していきたいと考えています。(談)

<INFORMATION>
一般社団法人 障害者自立支援協会
理事長:荒牧 功一
所在地:福岡市博多区千代4-29-7
    第3ファイブビル201
設 立:2010年12月
TEL:092-643-6631
URL:http://shogaisha.org/

<プロフィール>
aramaki_pr荒牧 功一(あらまき こういち)
視覚障がい者の支援をきっかけに、障がい者の雇用創出・賃金アップを目的とする同協会を設立。福祉とビジネスを結びつけるアイデアを日々模索している。同協会では、IT事業、貸し会議室事業などを積極的に展開中。

 

関連キーワード

関連記事