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2016年03月29日 07:05

血液検査のパラダイムシフト(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 そのような状況のなかで、筆者は富士の麓に、この血液検査に用いる採血用具を開発・製造する企業を訪ねる機会があった。会社名は雅精工で、社長は山川勇氏という方である。最初、この会社を訪問するとき、富士山の麓の森林の中の道を進んで行ったので、「森林浴をしに行くのか」と冗談を言ってしまうほどの場所であった。

midori 同社は元々、カシオのG-SHOCKを作っていた工場で、山川社長は印象からも「実直な職人さん」という感じの方だった。山川社長は、8年ほど前に仕事の関係で微量血液の世界にご縁ができ、その後、今の採血用具を開発するのに5年の歳月をかけたと言っていた。
 何よりも感動を受けたのは、「夜中に急にアイデアが閃き、それを朝まで我慢することができず、夜中に工場に何回駆けつけたかわからない」という話である。このような方が日本の製造の底力になっているので、日本にはまだ希望があると思えた。だが、夜中に工場に駆けつけては、それでもうまく行かずの繰り返しで、実に開発が成功するまでには、5年がかりだったという話だった。
 雅精工は採血用具を製造し、それを検査センターや前回のマイテックのような会社に納めているという。採血用具の話を具体的にお聞きして、今後、雅精工の採血用具は、微量血液検査ビジネスにはなくてはならないコア要素であることも同時にわかってきた。

 それでは、今までの採血用具はどうなっているかを、まず説明した方がいいだろう。
 従来の採血用具では、微量と言っても150μℓの血液を必要とした。専門家でない限り、この量の多寡は判断しづらいところだろう。そして、この量を指先から採ることは、至難の業である。とくに高齢者の場合、採れる血液はさらに微量である。ということは、今までの採血量は、まず現実的に無理があったことになる。それに採血をする方法も、採血した血液をそのまま容器に流す方法を取っている。
 雅精工の採血用具は採血量も少なく、小さい豆1粒くらいの量があれば十分である。また、同社の採血用具は、採血部に当てると自動的に血液を採ってくれる。これは世界特許出願中で、世界初の技術である。それだけではない。採血量が一定しないと、検査精度に影響が出るのだが、雅精工の採血用具はストッパーを設けて、採血量が常に一定になるようにできている。これは血液検査の精度の確保のうえで、かなり重要な要素である。それ以外にも、これからも他社が追随できないようなノウハウを追加していくとのことだ。

 定期的な血液検査でのデータ蓄積は、ヘルスケアにおける重要な情報となる。血液検査で蓄積されたデータは、ヘルスケアの入口として用途がさまざまである。
 現在、日本政府は高齢化社会の到来で医療費の高騰を見込んでおり、対策に苦心している。医療費抑制のためにも、治療よりは予防に医療政策を転換する必要がある。
 そのような意味で、微量血液検査は、これからいろいろな分野で徐々に採用されていくことだろう。生命保険加入前の健康診断、介護などのへ適用、小児科への適用、対面を避けたい患者への適応などいろいろある。

 何よりも、微量血液検査は検査する血液の量が少なく、試薬の量も減るので、普及すればするほどコスト的に競争力を増し、医療費抑制につながる。今後の高齢化社会でのメディカルの役割は、とても大事である。この技術は米国、中国、韓国などにも展開を予定しているとのことだ。

(了)

 
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